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  トヨタの大量リコールが残したもの
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 トヨタ自動車のリコール問題は、2月24日(現時時間)に豊田章男社長が米議会の公聴会に出席し、自ら陳謝したことで米国内の報道は鎮静化しつつある。2009年の秋のフロアマット問題から始まった大量リコールだが、リコールの内容よりも、トヨタの一連の対応が遅かったことが事態を悪化させた。一時の“トヨタ叩き”の様相からは変化しつつあるが、米議会は、急加速の原因が明らかになっていないとして引き続き追求する方針を示している。アクセルとブレーキが同時に踏み込まれたときにブレーキを優先する「ブレーキオーバーライドシステム」の装着義務付けを求める声も米議員から出ている。リコール制度そのものを見直す方針を日米の運輸当局が明らかにしており業界全体に問題が波及しつつある。
 トヨタの大量リコールの発端になったのは2009年8月にカリフォルニア州サンディエゴで起きた死亡事故だった。「レクサスES」が時速190劼泙撚誕し暴走し、乗っていた一家4人が亡くなった。事故直前の生々しい緊急電話の様子が全米で繰り返し放映され、トヨタ車の安全への不安が広がった。
 サンディエゴの事故は、アクセルペダルがフロアマットに引っ掛かり戻らなかった可能性が高いとして、11月になってトヨタは米国で販売する8車種426万台を対象にアクセルペダルの改修と一部車種でフロアを改修すると発表。安全対策としてアクセルとブレーキが同時に踏み込まれた場合にブレーキを優先するブレーキオーバーライドシステムを搭載することも発表した。
 問題が完全に終わっていなかったことが判明したのは年が明けてからだ。トヨタは2010年1月26日、8車種230万台についてアクセルペダルの形状や材質が不適切でペダルが戻らなくなるとしてリコールをNHTSA(米高速道路安全局)に届け出た。
 問題のアクセルペダルは米CTS社製のものだ。同社は幅広い自動車メーカーにアクセルペダルを納入している。同社製を採用するメーカーの中には、ペダルが戻りにくいことが事前にわかっていたため、材質を変えてもらい採用したところもある。トヨタは「部品の品質チェックはしていたが、車に組み込んだ場合の試験が不足していた」(佐々木眞一副社長)と説明した。
 リコールに続き、27日にはフロアマットがアクセルペダルに引っ掛かるとして、11月に発表した8車種とは別に「ハイランダー」「カローラ」「マトリックス」「ヴェンツァ」、GM「ポンティアック バイブ」の5車種109万台の自主改修を発表した。自主改修とリコールの台数はこの時点で合計765万台にも上り、品質への信頼の高かったトヨタ車に対する不安が一気に広がったといえる。
米国でトヨタ車の品質に関する報道が再び過熱し始めると、さまざまな不具合情報が次々に明るみに出た。日本でも問題になったのは新型「プリウス」のブレーキだった。
 ブレーキが一瞬利かなくなることがあるというユーザーからのクレーム情報は国土交通省にもトヨタにも挙がっていた。トヨタが原因を調べた結果、ABS(アンチロックブレーキシステム)の制御プログラムに原因があることが分かり1月末の生産分からプログラムを変更していた。これをマスコミは、トヨタが意図的にリコール隠しを行い、勝手に直していたのではないかと問題視した。
プリウスのブレーキは道路運送車両法の保安基準に抵触する不具合ではないので本来はリコール対象にはならない。しかし国内メディアまでがトヨタ叩きを過熱。「お客様の不安の解消を優先して」(豊田章男社長)、2月9日に異例のリコールを届け出た。改善対策やサービスキャンペーンといった自主的な市場措置ではマスコミが収まらないという判断もあったと見られる。
 09年6月に新体制になってから、豊田社長の方針でトヨタのマスコミ取材への対応は一変していた。日本のマスコミにはその不満も高まっていたといえる。今回のことでトヨタも豊田社長もマスコミの怖さを知ったはずだ。