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エコカー補助終了、今度は
円高で空洞化懸念


 

エコカー補助金は9月末の制度の期限を待たず、9月7日の申請受理分を持って終了した。予算総額5837億円に対し、7日時点で申請受理総額が5827億円に達し、期限より3週間早く打ち止めになった。一方、政府は、円高による輸出産業の空洞化は景気の腰折れを防ぐための経済対策を9月10日に閣議決定。雇用促進、デフレ・円高対策に加え、エコカー関連の投資促進やものづくり中小企業に対する支援が盛り込まれた。

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 エコカー補助金の突然の打ち止め宣言で、自動車販売業界では混乱も起きている。販売店では当面、補助金を貰えない人への対応を余儀なくされそうだ。だが、そもそもエコカー補助金は2008年9月15日の「リーマンショック」に伴う国内の景気悪化に歯止めをかけるため、経済波及効果の大きい自動車に手厚く税金が投入されたものだ。自動車業界としては補助金終了後の販売の落ち込みから、できるだけ迅速に、自律的にリカバリーし、リーマンショック前の平常に戻すことが重要だ。
だが、国内自動車産業の自律的リカバリーを阻害しそうな懸案材料として浮上しているのが、急激な円高だ。欧米の景気先行き不透明感から来る円高ドル安・ユーロ安が加速。8月24日には1ドル=83円60銭台と1995年以来15年2カ月ぶりの円高水準に突入、さらに9月8日には1ドル=83円30銭台と95年5月以来、15年3カ月ぶりの円高水準になった。
円はドルだけでなく、ユーロに対しても上昇しており、9月10日時点の対ユーロ円相場は1ユーロ=106円60銭台まで上昇。半年前の120円台から12%も円高ユーロ安が進行した。
円高の進行でマイナス影響を受けるのは当然ながら自動車などの輸出企業だ。円高により、輸出製品の採算は悪化する。日本車の主な輸出先である欧米の通貨の下落で、自動車メーカーの2010年度業績は大きなマイナス影響を受けることは間違いない。自動車メーカーはエコカー補助金が終了することによる減産分を輸出の回復で補う算段だったが、円高でこのシナリオが崩れる。例えばトヨタ自動車ではリーマンショック後、1ドル=90円で輸出の採算が取れるコスト体質を目指し2009年度はコストダウンを加速した。2010年度にようやくこの努力が実りつつあるにも関わらず、さらなる円高が追い討ちをかける。
 自動車メーカーは為替変動の収益への影響を抑えるため、生産の現地化を一段と進めることになる。自動車メーカーや大手の部品メーカーは海外にすでに十分な生産能力があり、輸出から現地生産に切り替える動きは円高の進行や長期化で加速すると見られる。こうした輸出産業の動きで懸念されるのが、国内でのものづくりの空洞化だ。日本の自動車需要の先行きは縮小均衡となるなかで、輸出の減少による国内自動車生産の規模縮小が下請け部品メーカーから成る日本のものづくり基盤の衰退につながるとの懸念が強まっている。日本自動車工業会の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)はこの点を強く訴え、8月9日には政府に円高阻止を訴える異例の声明を発表している。
政府が9月10日に閣議決定した「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策〜円高、デフレへの緊急対策」では、緊急的な雇用拡大を大きな軸に据えながら、中長期的な経済立て直しのため、円高の進行、長期化による工場や本社の海外移転、国内空洞化を食い止めるための具体策が打ち出された。
具体的には「低炭素型雇用創出産業立地支援」とし、エコカー、リチウムイオン電池、LED(発光ダイオード)などの国内工場立地支援を打ち出した。経済対策の予算総額9150億円のうち1100億円が投入される。また、ものづくりを行う中小企業支援として100億円を投入し、基盤技術の研究開発や展示品製作、販路開拓を支援することで、商品の高付加価値化や新規事業への展開を後押しする。
円高への緊急対策としては「円高の急激な進行・長期化は経済・金融の安定への悪影響から看過できない問題であり政府は必要な時には為替介入を含めた断固たる措置をとる」と明記した。円高の遠因であるデフレ対策についても「日本銀行に対しては政府と緊密な連携を図りつつデフレ脱却の実現へさらなる必要な政策対応をとることを期待する」としている。自動車メーカーの最大の懸念である円高に一応の対策が打たれた格好だ。
だがここ数カ月で進行した急激な円高に対する与党・民主党、政府、日銀の対応はあまりに遅かった。自動車業界では「誰が代表になるかなんてことをやっている場合ではない」(鈴木修スズキ会長兼社長)という恨み節も聞かれた。政府・与党には、工業・技術立国である日本の実態を踏まえ、グローバルな経済の変化に対し、より迅速に対策を打ち続ける姿勢が求められる。