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  メーカーの新中期経営計画、
新興国戦略が中心に

 自動車メーカーが相次いで中期経営計画を策定している。リーマンショックからの立ち直りを経て、次の成長への足場固め態勢に転じる。各社に共通したキーワードは「新興国戦略」だ。
 東日本大震災の影響で長期の生産停止を余儀なくされた自動車メーカーだが、部品の復旧に伴い、9月以降は上期分の減産を取り戻すための増産に入ることができる見通しが立った。震災により生産が1カ月以上止まるというかつてない事態を経験した自動車メーカーだが、最大のネックだった半導体の復旧が予想を上回るスピードで進み、自動車の生産も前倒しで回復してきている。トヨタ自動車は6月時点で45万台としていた通期の震災影響を、8月2日の2012年3月期第1四半期決算では15万台まで縮小できたと発表、11年度の世界販売台数は10年度を上回る見通しになった。最後まで各社共通のネックだったエンジンECU(エレクトリックコントロールユニット)用の半導体を生産するルネサスエレクトロニクスの那珂工場には1000人規模で自動車業界が応援を送り込み復旧支援を行ってきた。この努力が実り、同工場の生産量は9月には震災前の水準を取り戻す見通しとなった。
 各社の11年度業績は、震災影響は残るものの、部品の復旧によって回復の見通しは見えた。だが震災前からの経営課題が消えたわけではない。急速に進行する円高や諸外国に比べ高い法人税、柔軟性の低い労働法制、自由貿易協定の遅れなど、日本で自動車の生産を続ける不利な条件を指して、日本自動車工業会の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)は「自動車業界は六重苦」などと厳しい状況を訴え始めている。
 厳しい条件下でもメーカーは自ら企業存続の道を考えていかねばならない。各社が策定した中期経営計画から読み取れるのは、成長エンジンを新興国に求める動きだ。
 最もドラスティックな計画を掲げたのが日産自動車だ。「日産パワー88」と名づけた新中計は2011年度〜16年度までの6年間を対象にした。6年間という区切りはカルロス・ゴーン社長が少なくとも16年度までは日産の社長を務める意志の現れとも受け止められている。
 日産パワー88の“88”は、16年度に営業利益率8%、世界シェア8%の獲得を示している。前提となる世界市場は9000万台以上。単純計算で720万台以上を販売することになり、10年度の日産の世界販売台数に対しざっと8割の増加となる。日産の仕入れ先部品メーカーは「日産はすごい目標を出してきた。我々にとっても大きなビジネスチャンスになる」と気を引き締めている。
 日産の販売拡大戦略の柱は中国をはじめとした新興国市場だ。世界市場に占める新興国の割合が16年度に4割から6割に拡大するとし、中国、インド、アセアン(東南アジア諸国連合)などでの販売拡大を図る。中国では現地生産能力を現在の倍増の200万台に引き上げる計画を発表。新型車の積極投入と販売網の拡大を図る。ブラジル新工場の建設やアセアンの生産能力増強、ロシアでのシェア7%への向上、北米で生産能力増強も打ち出した。一方で高級ブランド「インフィニティ」は年間50万台規模への拡大を目指すなど、新興国戦略を中心に、世界シェア8%へ世界中で手を打つ。
 中堅メーカーも新興国に成長のチャンスを求める。三菱自動車(ジャンプ2013)はタイで生産する世界戦略車「グローバルスモール」を2012年春からタイのほかアセアンや日米欧など世界中に輸出する。マツダは住友商事と共同でメキシコに生産拠点を設けることを決めた。ロシア極東での完成車組み立ても検討中。中国では生産会社への50%出資へ向け当局の認可待ちだ。そして富士重工業も7月に発表した15年度までの新中期経営計画「Motion−V」で、世界一の市場になった中国での現地生産を前提に15年度に世界販売を4割増の90万台とする目標を掲げた。
 2010年で7000万台だった自動車の世界需要は、新興国市場の伸びにより当面は過去最高を更新し続けると見られている。国内では需要の縮小や円高で事業が厳しいメーカーだが、世界に目を転じると成長の機会はまだある。ただ、日本車にひけを取らない商品力を付けてきた韓国車やユーロ安で競争力を高めている独メーカーが強力なライバルとなっており、日本メーカーにとってはコスト競争力をどう高めていくかが最大の課題だ。




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