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  トヨタの軽市場参入、本気度は?

 トヨタ自動車が軽自動車市場に参入する。トヨタブランドとして初めての軽乗用車を9月に発売し、年内にバン/トラック、来年には乗用車をもう1車種投入し、需要の軽自動車シフトに対応する。ただ、軽を扱うチャンネルや地域は限定され、販売台数も年間6万台が上限。トヨタの販売店にとってどれだけプラスになるかは不透明だ。
 トヨタが軽市場参入を発表したのは2010年9月。グループのダイハツ工業からOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けて、今月26日に「ムーヴコンテ」をベースにした新型車を発売する。名称も「ピクシス」シリーズと決定した模様だ。軽を展示する店舗は「ピクシスステーション」と呼び、登録車のショールームとは差別化する。女性客を意識し、女性の軽専門スタッフを店舗に配置するという。
 大手メーカーで軽に注目しているのはトヨタだけではない。日産自動車やホンダも国内販売台数の引き上げに向けて軽の強化策を打ち出している。スズキと三菱自動車から軽の乗用車や商用車をOEM調達する日産は、三菱自と軽の企画・開発会社「NMKV」を6月に三菱自との折半出資で設立し、第1弾の新型軽を13年に発売する。一方、ホンダは12年から自社での軽自動車生産を再開する計画だ。いずれも国内の新車需要が軽にシフトしていることに対応する措置だ。
 ホンダが自社で軽を生産する理由ははっきりしている。円高や国内需要の縮小で、登録車を生産する埼玉製作所や鈴鹿製作所の生産能力が余り気味だからだ。軽は出資先の車体メーカー、八千代工業に委託して生産しており、円安が続いていたリーマンショック前は、八千代工業にエンジンから車体組み立てまで一貫して生産する新工場を建設する計画だった。しかしリーマン後の10年に同計画を撤回し、自社の鈴鹿製作所で軽を生産すると発表。12年に「タント」や「パレット」に対抗するスペース系の新型の軽乗用車を鈴鹿製作所で生産し発売する。
 日産は国内市場シェア拡大のアイテムとして軽を重視している。日産は10年度で登録車と軽自動車を合わせ13%の国内市場シェアを13年度に15%とし、さらに13年度以降は、トヨタに次ぐ「明確な2位」の獲得を目指すことを中期経営計画で表明した。さらに軽市場でのシェア目標についてNMKVの遠藤淳一社長は「日産と三菱自合わせた軽のシェアを15%から最低でも20%にしたい」と述べている。軽自動車の市場規模を中期的にざっと150万台とすると20%のシェアは30万台に相当する。
 この30万台という規模はホンダも当面の目標に掲げる数字だ。ホンダは国内で最低でも70万台を販売し、輸出分を合わせた国内生産台数100万台を維持したい目論見がある。70万台のうち30万台は軽でまかないたい計算だ。日産は自社の生産拠点で軽を生産する計画は表明していない。ホンダは軽の販売が即、自社の工場の稼働率に直結するため、同じ30万台といっても重みは異なりホンダにとっての軽の重要性は日産以上だ。軽市場はダイハツとスズキがシェア1位、2位を分け合うが、今後は日産・三菱連合とホンダの市場シェア争いが来年から激しくなりそうだ。
 大手メーカーのうちの2社が軽を強化しようという中で、トヨタも軽市場に参入するのだが、その規模は年間6万台といかにも小さい。この台数はダイハツの販売店に配慮して、トヨタとダイハツの間で取り決めた台数だが、系列ディーラーには本来、「パッソ」「ヴィッツ」といった自社の小型車を売らせたいのがトヨタの本音とも言える。
 トヨタは軽を大々的にはPRしない方針で、扱いチャンネルもネッツ店とカローラ店に限定する。トヨタ店、トヨペット店でも扱える地域はあるが、軽の販売比率が50%を超える県(四国全県、福岡を除く九州全県、島根、鳥取、秋田、青森)に限定される。トヨタにとって軽市場参入はダイハツとの関係やダイハツ販売店への影響からも難しい判断だった。トヨタの軽市場参入は自動車業界の話題の一つだが、実際にどれだけ売れるのかは販売店の売り方次第だろう。