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  タイの洪水で日本車が
再び部品不足に
 

タイが50年ぶりの大洪水に見舞われ被害が広がっている。5月中旬から10月が雨季のタイだが、今年は7月から大量の雨が降り続き、10月に入りダムの放流を始めたところ、下流にある工業地帯などに河川の水が溢れ出し、大洪水を引き起こした。日系の部品メーカーや電子部品メーカーが数多く浸水被害を受けており、自動車メーカーの生産への影響がタイ以外にも広がり始めた。
 自動車メーカーの中で、洪水で最も大きな被害を被っているのはホンダだ。同社のタイ四輪工場は、バンコクの北方、アユタヤ県のロジャーナ工業団地にある。氾濫したチャオプラヤ川の近くにあり、今回、最も大きな浸水被害を受けた地域の一つだ。工場の1階部分は完全に水没。10月4日から生産を停止しているが、11月になっても水が引かない中で復旧作業に取り掛かることもできない。生産再開には少なくとも半年はかかる見通しだ。
 ホンダ以外の日系メーカーのタイ工場も生産を停止したままだ。いずれもバンコクの東側に工場があり、今回、直接の浸水被害は受けていないものの、部品メーカーが浸水被害を受け、部品の供給がストップしたからだ。トヨタ自動車は全3工場が操業を停止し、日産自動車、三菱自動車、マツダ、いすゞ自動車、日野自動車、三菱ふそうトラック・バスの工場も停止を余儀無くされた。
 浸水被害を受けた部品メーカーは直接、自動車メーカーの工場に部品を納める一次部品メーカーだけでも数十社に上ると見られ、半導体など電子部品も含めれば、その数はさらに膨らむ。11月に入ってもバンコク北部の水没した工業地帯では、工場内の水位が2〜3メートルあり、いつになったら水が引くのか見通しがつかない状況だ。浸水被害を受けた企業では、潜水夫を使い、水没した金型を回収したり、新たに金型を起こすなどして、日本を含む他国での代替生産の準備を急いでいる。部品供給の再開により日産では11月14日から一部車種で生産を再開する見通しなったものの、日本自動車工業会によると、タイで1日生産が止まれば日系メーカー合計で6000台の影響が出るという。1カ月間の停止により、タイだけで12万台以上の生産遅れが発生している計算になる。
 タイは日本メーカーにとって、完成車や部品の重要な輸出拠点だ。タイ製部品の供給ストップは、震災の時と同じようにメーカーの世界の工場に影響を及ぼし始めている。トヨタでは国内工場でラインごとに稼働調整に入り、ミニバンの「ノア/ヴォクシー」「アルファード/ヴェルファイア」の生産を一時停止。その他の車種にも影響が広がっている模様だ。また米国、カナダ、南アフリカ、インドネシア、フィリピン、ベトナムでも稼働調整を余儀無くされた。
 ホンダはマレーシアの工場を停止するなどアジアの工場で生産調整を行っているほか、日本でも生産調整を始めた。影響がどこまで広がるか分からないとして、2012年3月期の通期見通しを未定にした。日産では、日本の生産にも2万台程度の影響が出るとしている。またタイから輸入している「マーチ」に2週間程度の供給遅れが出るという。
 タイの洪水は大雨という天災によるものだが、積極的な工業化を進めてきた割には、タイ政府の治水対策が遅れていたという問題があったことも指摘されている。長年、タイに投資してきた日系メーカーだが、大洪水がタイへの投資を見直すきっかけにならないとも限らない。