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トヨタ、日産が部品共通化へ
新設計思想


 トヨタ自動車と日産自動車が製品設計の見直しに取り組む。日産は2月に「日産CFM(コモンモジュールファミリー)」、トヨタは4月に「TNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)」と称して新たな設計思想を発表した。いわゆる部品共通化を通じて開発コストを削減するとともに、スケールメリットを追及するというものだ。背景には、欧米、韓国メーカーとの競争激化、世界的な小型車シフトによる収益力低下という問題がある。
 部品共通化が進んでいるのは欧州メーカーだ。特に独フォルクスワーゲン(VW)の部品共用化率は高く、最も効率的に開発を行っているメーカーと言われている。共通部品を使いながらも、ブランド、モデルごとの違いが出せる設計ノウハウをVWは持っていると言われている。トヨタは車種ごと、モデルチェンジごとの専用部品を設計することに重点を置いてきた。新しい技術、品質の向上を追い求めてきた結果だが、その分、部品の種類も増え、開発コストが膨大だった。
 トヨタでは2008年9月のリーマンショック前までは北米市場で飛ぶように車が売れ、円安によって利益が膨らんでいたため、開発費や設備投資をいくらかけてもあまり問題にならなかった。ところがリーマンショックにより、いわゆる“ドル箱”だった北米市場が急減すると、売上高の減少以上に営業利益が低下。収益は赤字に転落し、強固に見えた収益基盤の脆さを露呈した。レクサスや大型のSUVなど、利益率の高い車で儲けてきたトヨタのビジネスモデルは、米国を中心に自動車需要が急減したリーマンショックで、より大きな打撃を受けたということだ。
 リーマンショックから4年が経つ今、世界の自動車需要は中国をはじめとした新興国市場の成長に支えられている。震災やタイの洪水という天災に見舞われた日本メーカーだが、2012年の世界生産は日本メーカー合計で2600万台と過去最高になる見通しだ。北米市場の回復以上に中国、アジアでの需要拡大による押し上げ効果が大きい。
だが、一時国有化を経て復活した米ゼネラルモーターズ(GM)、品質、デザインなど商品力を急速に高めた韓国・現代自動車、そしてVWといったライバルメーカーが、急速にシェアを伸ばしている。利益率が低い小型車でも利益を出す体質を早く造り、GM、VW、現代自に負けない競争力を確保することが日本メーカーの最大の課題になっている。
原価の8割を占めると言われる部品の購入費を下げることは、コスト競争力向上に大きなインパクトがある。多くの車種で同じ部品を使い、モデルチェンジをしても同じ部品を使い続けることで、部品のコストは下がる。新規に部品を設計するための開発費も削減できる。VWは戦略的、組織的に部品共通化を推進してきたのに対し、日本メーカー、中でもトヨタはこれまで新規で部品を立ち上げることに注力し部品共通化を進めてこなかった。
 トヨタのTNGAは車種間の基本部品、ユニットを共通化するというもので、トヨタの生産台数の5割に当たる3種類のFF系プラットホームから取り組むという。2015年頃発売の新車から適用していく見通しだ。
日産は仏ルノーとの部品共通化を進めているが、基本的にはモデル設計し部品の発注先を決めている。CFMでは車の構造をエンジン、コックピット、フロントアンダーボディ、リヤアンダーボディの4つのコンパートメントに分けてモジュール化し、これらモジュールにいくつかバリエーションを用意し、車種ごとに組み合わせで製品を開発していくという。日産は部品群を示すモジュールという思想を取り入れている点でトヨタと異なるが、部品共通化という目的は同じだ。日産は13年にも新設計思想を取り入れたモデルを市場に投入するという。
 日本メーカーはこれまで、新型車の開発やモデルチェンジの度に、部品を新規で設計してきた。だが、欧米、韓国メーカー、あるいは今後は中国メーカーとの競争も予想される中で、これまでの開発手法はコスト競争力を低下させる要因になりかねない。同じ部品を使いながら製品を差別化して市場のニーズに応えていけるのか、知恵と技術力が試される。