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  第一回:ナゼISOが必要なの

  ちまたでよく耳にするISO(International Organization for Standardization)。もう聞き慣れてしまった方も、おられるかも知れませんね?
でもISOって何?会社にとって何が役に立つの?と聞かれたら、はたして正しく答えられる人は何人いるでしょうか? 
カーアフター業界でも中小規模の会社の方々にとっては、大手企業や他の業界の話題だと思っていたり、自分たちには無縁と感じてはいないでしょうか。
ISOについて良くない噂を聞かれた人もいるかと思います。「認証を取る準備が大変なだけで役に立たなかった」、「文書づくりが増えて仕事が大変になった」などなど。
専門家の立場からいえば、これらの組織は誤ったISOをやってしまったからです。実は日本ではおそらく80%以上もの組織がISOを誤解して取り組んだため、こんな弊害が起こったのも事実です。
本来ISOの管理の仕組み(マネジメント)とは、組織の中に『国際的にも通用する』業務運営の仕組みをつくるものです。それは、それぞれの組織の経営目的を達成することや、顧客や社会との関係性を発展させるためのものなのです。
これから少しでも経営と仕事のやり方を見直したい、しかし何から手を付けたらいいものか?と感じられている経営者の方がおられましたら、まずISOに着目してはいかがでしょうか。
このシリーズでは、経営体質の変革をめざしている方々にとって、ISOとは何であるか、その全貌を明らかにしてゆきます。さらにISOマネジメントの意味を理解することによって、自社に必要な改善点を発見してもらうことができます。

なぜISOが必要になってきたか?

 自社を取り巻く外の環境に目を向けてみましょう。皆さんも周囲の様子が変化していることに気づいていますね。市場や顧客のニーズ、業界の動向、競争相手の動向、法律や制度の変更、地域的な立地環境における変化、これらの変化によって会社の経営は影響を受けます。
さらに近年は、企業の社会的責任ということがよく話題になります。これまで利益や経済性を優先してきた時代から、社会貢献、環境貢献についての姿勢が問われるようになり、これらが顧客との取引条件、あるいは消費者の購買判断基準にまで及ぶようになりました。
 
 こんな時代においては、自分達の会社はどんな会社なのか、内部事情をわかってもらうための会社からの自発的な情報発信が必要になってきています。
 
 つまり、昔と比べて経営に求められる領域がたいへん拡大したと言えますね。ISOはこの様な環境変化をとらえて時代の要求に会社が順応するための手段です。また適切な経営をしていることを、社会や外部の人たちに証明するためのものです。
そこでISOの歴史をちょっと見てみましょう。

 ISOとは本来は「国際標準化機構」の略称。これは世界で共通の決め事を作る機関の名前です。もともとは工業製品の国際規格を作っていましたが、1980年代の後半から企業の経営や業務運営のやり方(英語でマネジメント)についての国際規格も作るようになりました。これらの代表的な

 ものが、ISO9000(通称、品質ISO)、ISO14000(通称、環境ISO)です。最近はこれらを単にISOを呼んでいますが、正しくは「ISOが制定したマネジメントシステムの規格」と解釈するのがふさわしいですね。(本シリーズでは、必要な場面ではISOマネジメントと呼ぶことにします)
ISOマネジメントの規格は最初に海外との取引において用いられるようになりました。企業間の取引を行うためには製品の品質や価格だけではなく、取引先の経営の善し悪しまで評価しなければなりません。

 特に海外の取引先とビジネスを始めようとしても、その企業に対しての情報を十分に得ることができません。そのため発注側としては、仕入先企業が国際的な標準であるISOマネジメントの規格に適合していることを、ひとつの目安としたのです。

 日本においても1990年代半ばころに、輸出型企業(特に対欧州向け)からISOマネジメントの取組と認証取得が多く行われるようになりました。その当時の企業にとっては、自発的というよりは、海外市場や販売先に求められたから行ったというケースが多かったのでしょう。
 
日本で普及に弾みがかかったのは、建設業界における影響が大きいといえます。官庁が公共工事を発注する建設業者を評価するシステムに、ISO認証があるとポイントが加わる仕掛けになっています。しかし、これが本来の意義を失った機会にもなったようですね。入札で優位になることだけを期待して、単に認証取得だけを目的した企業が急増したことです。(もちろんそうでない立派な建設事業者もたくさんありますが)

ISOの本当の目的は?

 先にも述べたように、ISOマネジメントは顧客や社会との関係性を発展させ、最終的には企業のビジョンを実現させる手段になるべきです。認証取得は一つの到達地点としての目標ですが、最終的な「目的」ではないはずです。

 目的意識を間違えた企業では、せっかく認証をとってもマネジメントがうまく機能せず、弊害や形骸化が発生していることを筆者も多く目にしています。ISO業界自体も利益主義に走り、認証取得を乱発させたような残念な傾向が一部でみられ、それが一時期のISOの評判を低下させた理由となってしまったようです。

 でもISOの本質は何でしょうか。筆者の知っている新潟県の会計事務所が過去にISOの活動をして認証取得をしまいた(この業界では珍しい例です)。 そこの所長さんはISOのために、外部コンサルタント費、認証取得費、所員の教育訓練費などに何と合計1,400万円を使ったそうです(聞いてビックリ!の金額です)。 しかし、その所長さんいわく、「得られた効果を考えれば、何と安い出費だったか。」と。さらに自ら勉強されたISO9001の国際規格の原文を顧客企業の経営者に読むように奨めています。その所長さんにすれば、ISOの国際規格は経営のバイブルとなっているからです。・・・なぜそう感じているのでしょうか?


 このシリーズでは、経営に役に立つISOを、実践事例を通して皆様にお伝えしてゆきます。ISOによって、新たな販路開拓につながった組織、従業員の仕事意識とモチベーションが変化した組織、経営者自らがビジョンと経営計画を策定するようになった組織、多くの改善提案により日々の業務活動を進化させている組織などです。

 そこには、カーアフター業界以外の様々な業種の中小企業の事例が登場します。 経営改革をしようと考えた場合、同業界に目を向けるのではなく、実は異業種に目を向けると多くのヒントがあるのです。

 異業種の会社の優れた仕組みやサービスの工夫を知ったとき、「これを何とか自分の会社で応用できないか?」と考えることから、抜本的な経営改革を果たした企業が多くあります。

 さらに皆さんに知って頂きたいのは、「経営課題」とは、経営者や管理者の問題意識によるということです。顧客離れが起きたり、外部の人が誰も評価していない会社でも、そこの経営者に問題意識がなければ経営課題も存在しないのです。 

 逆に、誰もが認める優れた会社でも、現状に満足せず常に向上心を持っている会社では、経営者はたくさんの課題(チャレンジすべき事)を語るでしょう。それは問題意識の差ですね。

 ISOを始めてうまくいっている会社も当然後者の方です。このシリーズでは、ISOの国際規格が要求しているマネジネントのあり方をひとつひとつ解説することにより、皆さんの会社のどこに課題があるのかを自己認識していただける機会になると思います。 次回以降をどうぞお楽しみに・・・
以 上
アイエル経営診断事務所 代表
板 賀 伸 行
経営コンサルタント(中小企業診断士)
ISO/QMS 主任審査員

過去に大手自動車会社において海外各国の自動車開発・生産プロジェクトを担当。その後、コンサルティング会社等を経てアイエル経営診断事務所を設立、中小企業の経営支援を開始。国や地域の中小企業支援センターのアドバイザーも務める。
経営資源の少ない小規模事業者のビジョン実現をサポートできる今の仕事に生き甲斐を感じています!
趣味はアウトドア系なら何でも関心があり、毎年新しいチャレンジ(冒険?)をしています!