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  第三回こんな会社にISOはピッタリ!

〜ISOマネジメントの取組事例の紹介(その1)〜

 今回はISOマネジメントの導入に取り組んで、組織の活性化や業績向上を果たした会社の事例をいくつか紹介します。皆さんのカーアフター業界ではありませんが、工業系から商業・サービス業まで幅広く取り上げたいと思います。ISOマネジネントはいかなる業種にも当てはめて活用できる柔軟性があります。一方で、あえて違う業界の取組事例を聞いてもらうことには、実は意味があるのです。

 斬新な商品の開発やサービスの実現によって飛躍した企業にはおおむね共通点があります。他の業種・業界での「上手なやり方」を知って、それを何とか自分の会社に当てはめられないかと必死に考えたことです。

 むかしスーパーマーケットが日本で広まってきた頃の話です。スーパーは顧客が店内を回って自分の欲しいものを取ってくるセルフ販売方式です。これは従来の小売店舗での対面販売方式に対して、まったく新しい営業スタイルでした。これに目をつけたのがお寿司屋さん。スーパーのスタイルを真似ることはできないかと考えた結果が「回転寿司」。これもセルフ販売方式ですね。お寿司屋さんの業界が、スーパーの業界のやり方は自分達とは無関係と思っていたら、回転寿司も誕生しなかったかもしれません。

 アメリカの航空業界において「サウスウエスト航空」は大手の航空会社が運行をためらうローカル線に特化しながら、特徴あるサービスで存在感を示しています。利用人数の少ない航空路線において、小型機で収益をあげるための鍵は飛行機の稼働率にあり、飛行機が到着してから次の出発までの機体整備を含めた地上滞在時間を最小限にしなければなりません。そのために、世界最速の自動車レース「インディ500」のピット作業の段取りを研究し応用したのは有名な話です。

 皆さんの業界でも同業者のやり方を真似ると、二番煎じと思われてしまうとうまくいかない場合があるでしょう。そんな時、他業界の上手なサービスを何とか自社にも当てはめられないかと考えると、意外と自分の業界にとっては斬新なアイディアが生まれるかも知れませんね。


金属加工業 T社(大阪市)

 高周波焼き入れや摩擦圧接といった特殊な金属加工業を営むT社は、従業員18名の典型的な大阪の町工場です。納入先の顧客企業からは、短納期注文が多くなり納期対応と品質不良の面でしばしば工程が混乱する事態が発生していました。また受注品の種類も多く、加工の進み具合が把握できておらず納期回答にも困窮していました。さらにT社の社長が悩みを語っていました。「日頃の加工の忙しさにとらわれて、誰からも仕事を良くしようとする発想や行動がみられません。私にはアイディアがいくつかありますが、社員からは社長の思い上がりと思われて社内での仕事の見直しがまったく進まないのです。みんなに仕事を改善する意欲をつける方法はないものかと・・・」

 こんなT社でも、ISO9001とISO14001の両方に挑戦して見事に成功しました。最初にISO9001で得られた成果の一つとして、それぞれの加工工程の状態を経営者が手に取るようにわかるようにしたことです。考えた方法は決して難しいことではなく、単純に生産実績の記録リストを作業担当者が毎日つけるようにしたことです。この生産実績のなかの必要な項目を分析することによって、各工程の負荷と余力の状況、製品の加工進度、作業者の処理能力、品質不良の発生状況などが目で見てわかるようになりました。

 これらの日々の記録作成によって、同時に加工不良、作業ミスなどの問題の発生が、作業者から自発的に報告されるようになりました。当初は問題の多さに驚いていたわけですが、問題をうまく顕在化させたことが、より容易な解決へ道筋を作ったようです。その他にも、社内で必要な多くの技能習得のための教育訓練プログラムによって、現場で働く人たちの経営参加意識が変革したことが、大きなメリットと感じられています。

 また、その後のISO14001の導入をきっかけに、職場のクリーン化推進によって工場の環境負荷の低減と、従業員のための職場環境の改善に取り組んでいます。数年後の目標は、「日本一きれいな熱処理工場」にする事です。

 これからのチャレンジとして、現在の生産管理を更に高度にするために、コンピュータによる生産情報システムを導入して、顧客からの注文データの合理的な処理と工場の生産情報をリアルタイムで管理することを目指しています。


建設防水工事業 K社(金沢市)

 金沢市に本社のあるK社は、建築防水工事の専門業者であり、おもに北陸地方と関西地方での事業展開を行っています。

 まずISO9001の推進メンバーには、将来の経営幹部候補である中間管理職の精鋭が選ばれました。ISO9001で取り組まなければならないテーマは、会社の方針・目標の策定、人材育成計画、営業や受注処理の方法、工事を施工する計画や現場管理など、とても広範囲です。しかしこれらすべてが、経営幹部にとっては必須の身につけなければならない知識や能力です。K社では、まずISO9001の推進活動がそのまま経営幹部養成のための「マネジメント教育」として役立ちました。

 ISO9001の活動は金沢の本社から始まり、T社として理想的な業務管理の手順がいくつも完成しました。ゼネコンなどの顧客との長期的な信頼関係を築くために、顧客の満足度を把握することもその手順に含まれています。他県にある支店も営業地域は異なっても、同様の営業や施工業務を行っているため、本社で作った仕組みを今後は全社に展開してゆくことができます。

 現在は環境マネジメント規格ISO14001の国内版であるエコアクション21にチャレンジしています。ISO9001の取組のなかで事業戦略を考えたところ、K社の今後の成長にとって最も大事なことが「環境に優しい建築防水工法の拡大」でした。コスト競争が厳しい建築業界において、価格競争に巻き込まれず収益を確保するには付加価値の高い施工方法の提案が必要で、そのため環境戦略が最重要なわけです。

 具体的には、有害物質が含まれない材料の使用、エネルギーの消費が少ない防水工法、屋上緑化施工などを積極的に開発し顧客へ提案していいます。これらの採用割合が多くなれば、T社の利益向上と環境負荷低減が同時に果たせることになるわけです。





 いかがでしたか。ISOは取得することが目的ではく手段であって、目的は「経営合理化・効率化改善」であり「社員の育成」なのです。

 次回もISOに取り組んで成功した会社の事例をお届けしようと思います。お楽しみに!

アイエル経営診断事務所 代表
板 賀 伸 行
経営コンサルタント(中小企業診断士)
ISO/QMS 主任審査員

過去に大手自動車会社において海外各国の自動車開発・生産プロジェクトを担当。その後、コンサルティング会社等を経てアイエル経営診断事務所を設立、中小企業の経営支援を開始。国や地域の中小企業支援センターのアドバイザーも務める。
経営資源の少ない小規模事業者のビジョン実現をサポートできる今の仕事に生き甲斐を感じています!
趣味はアウトドア系なら何でも関心があり、毎年新しいチャレンジ(冒険?)をしています!