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  第4回こんな会社にISOはピッタリ!

〜〜ISOマネジメントの取組事例の紹介(その2)〜

前回の事例紹介では、皆さんにとっては異業種である製造業と建築業での取組事例を紹介しました。今回も異業種ではありますが、より身近な小さなサービス業から話題をおとどけします。

4人だけの家族経営 K造園

K造園は、石川県加賀地方の片田舎にある家族経営の個人事業者です(法人組織ではありません)。メンバーは代表の親父さんに息子さん2人、それに親族の1人を入れて、たった四人です。実は筆者がISOを支援した中では最も小さい組織なのです。ISO9001の認証は今年10月に取得したばかりです。

筆者が支援を決心したのは、親父さんの「すてきな動機」でした。その動機とは、剪定作業などの造園職人としての技能は伝承できても、これからの不安定な世の中で生き抜くための別の無形財産を息子さんに贈りたいと願っていました。その無形財産が「マネジメント」と考えた訳です。これから息子さんの世代に造園経営をバトンタッチするための親の責務と感じておられました。

ISO9001についての予備知識はほとんどありませんでしたが、息子さんが中心になって小さな造園業にあった仕事の仕組みをコツコツと作ってゆきました。作成した業務手順の文書類はとってもコンパクトで、品質保証の仕組みも効果的な必要最小限のものを考えました。たとえば、造園の施工や作業が完了した際には、出来栄えをデジタル写真撮影によって品質検査の証拠とし、またこれらのデータを施工実績として営業活動にも利用するようにしています。

K造園の顧客獲得はいい仕事をしたことによって得られる「顧客の評判」が基本になっています。しかし個人顧客の市場規模が低下する中では、事業所や工場をもつ法人顧客にも目を向けなければなりません。ISOがきっかけで始めた顧客満足調査などの新たな活動は、中堅企業や有名企業に比べればとっても初歩的なものであることは確かです。しかし、これが顧客流出防止や新たな顧客開拓のために、きっと実を結ぶことでしょう。なぜなら、零細業者が多い業種においては、同業他社がほとんど取り組んでいないことですから。

生粋のサービス・社会福祉事業 R保育園

社会福祉の分野にISOとは意外と思われるかもしれません。しかし医療や福祉の業界では、ISOマネジメント導入を含め、マネジメントやサービスの質の向上にもっとも関心を持っている業種といっても過言ではありません。

社会福祉法人のR保育園の園長さんの見解です。「施設の管理のあり方やサービスの質の高さを証明することは、保護者や地域の人たちへ信頼感を与え、選ばれる施設になるために大切なことです。」

児童保育や老人介護などの社会事業はその公共性から、利用者のみならず地域社会や自治体などのすべての利害関係者と良い信頼関係を築くことが極めて大事です。また福祉施設でのサービスは、従来の行政が仲介していた措置制度から、利用者自らが選択して契約する制度へと変わりつつあります。このため、ISOとは別に、第三者機関が福祉事業者のサービスの質を評価してそれを公開する業界独自の制度も始まっています。

R保育園がISO9001に取り組んだきっかけは、このような厳しくなる周囲の目を逆に機会としてとらえ、他の事業者との明確な差別化をはかることでした。これは、一人ひとりが自分たちのサービスに自信と誇りを持っているからこそ生まれる発想です。ISO9001の内容は、これまで企業のマネジメントを経験したことのない保育士さんたちにとっては、解釈が難解だったことは事実です。しかし安全管理などの施設の大事な側面で、ISOの改善の思想が役立ち浸透しています。また外部機関による適合審査の評価結果を、自らの理念と一緒に上手に外部に公開して情報発信をしています。

後継者育成の場面で多く活用されるISO

今回のテーマを質問にして「どんな会社にISOはピッタリ?」と尋ねられれば、その答えのひとつは、後継者育成を考えている会社です。筆者がこれまで支援してきた会社の実に多くがこれに該当します。ちょうど若手の次世代経営者に事業を承継するときに、先代経営者は自分以上の経営能力を身につけてやりたいと願っています。

特にISO9000には、会社の経営に必要なマネジメントのほとんどの要素が含まれているため、学習意欲や目的意志のある若手後継者は取組姿勢がとても積極的です。

幼虫が蝶になるために必要なマネジメント

皆さんの会社でも創業から現在に至る過程を振り返ってください。創業期はとにかくがむしゃらに働き、景気や市場の拡大にも乗じて成長カーブを描いた時期もあったはずです。しかし同業者が多くなったり顧客の関心が薄れてくると、市場が低迷し売上げも横ばい。この時期には組織崩壊の危機を向かえ、有能な社員が退職したり社内クーデターが起こることさえあります。それは「マネジメント」が欠如しているために起こる危機です。

会社の成長過程には大きな壁があります。売上げ規模で言うなら、小売業・製造業では10億円、サービス業では5億円のラインが壁として立ちはだかるでしょう。この時期は、会社を蝶に例えるなら、幼虫からサナギに変化した時期といえます。ここを脱出して「成虫」になるには、「マネジメント」が必要です。
しかし、残念ながらほとんどの会社が「幼虫」の状態、いわば「家業」で留まってしまうのです。「マネジメント」を身につけた会社だけが、「成虫」つまり「企業」に変身できるのです。

次回からは、いよいよISO9000にテーマを絞って、そのエッセンスをひとつずつ紹介してゆきます。

アイエル経営診断事務所 代表
板 賀 伸 行
経営コンサルタント(中小企業診断士)
ISO/QMS 主任審査員

過去に大手自動車会社において海外各国の自動車開発・生産プロジェクトを担当。その後、コンサルティング会社等を経てアイエル経営診断事務所を設立、中小企業の経営支援を開始。国や地域の中小企業支援センターのアドバイザーも務める。
経営資源の少ない小規模事業者のビジョン実現をサポートできる今の仕事に生き甲斐を感じています!
趣味はアウトドア系なら何でも関心があり、毎年新しいチャレンジ(冒険?)をしています!