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  第8回 ISO9001(その4) -  「人材は人財なり」

 今回からは、ISO9001規格の第6章に規定されている「資源の運用管理」です。経営資源という言葉は皆さんも一度は耳にしたことがあるでしょう。一般的には「人」、「物」、「金」の3つのことをさします。
ISO9001では、「人」と「物」についてはどう管理すべきかを規定しています。しかし、お金についての規定は書かれていません。もちろん財務管理(お金)なしでは会社経営は成り立ちませんので、これはISO9001を拠り所にするのではなく、皆さんの会社自身で管理のあり方を決める必要があります。
今回は、まず「人」について以下に解説をします。

人的資源

 経営資源の中で最も大事なのが「人」です。最近は、物やお金といった物的資源から、知的財産や信用・イメージといった「ソフトな経営資源」のほうが、他社との差別化や競争優位にとって大切になってきました。そんなソフトな経営資源を支えているのは、働く人の「力量」です。
 働く人の力量の管理について、次のようなことが要求されています。

   それぞれの業務に必要な力量を明確にする
   その必要な力量がもてるように教育・訓練などをする
   行った教育・訓練などが身についたかを評価する
   それぞれの人が自分の仕事の目的を理解する

 当たり前のことに聞こえるかも知れませんが、これらができている会社は極めて少ないものです。

 まず,砲弔い董⇔磴┐弌△客様と接している営業の人たちにはどんな力量が必要でしょうか。接遇マナーから見積や契約書作成まで、仕事をするための様々な力量を身につけなければなりません。ベテランや能力の高い人は多くの力量を持っているでしょう。しかし、ほとんどの人は不足している力量がいくつかはあるはずです。図4に示したような一覧表を作っただけでも、これらが明確になりますね。

 その不足している力量を補い向上させるために、△龍軌蕁Ψ盈を実施するわけです。いつ・誰に・どのような教育を実施するかの計画書を作り、あらかじめ意識付けをするといいでしょう。

 そして教育・訓練を行った後はにあるように、ちゃんとそれが身について仕事への成果があるか評価しなければなりません。

 では、どのような評価をしたらいいでしょうか。外部の講習会などへ参加したときは、受講報告書で講習の内容が自分の仕事にどう生かせるかを必ず書いてもらうといいでしょう。社内で行った実務教育などは、指導者が技能向上レベルを評価してあげる配慮も必要です。

 そして、なかなか難しいのが、い亮分の仕事の目的を理解することです。

 「三人の石工」の話を聞いたことがありますか。昔、ある建築現場で作業をしている三人の石工に、旅人がなぜその仕事をしているかを尋ねました。すると、一人目は「生計を立てるため」と答え、二人目は「技術を磨いて腕のたつ石工になるため」と答えました。そして三人目は「ここにすばらしい教会を建てているのです。その教会は多くの人の心の拠り所になるでしょから、この仕事に携われることがこの上ない喜びです。」と、目を輝かせて答えたそうです。

 もちろん仕事の目的を最も理解しているのは、三人目の石工です。従業員に目的意識を持ってもらうことは、経営トップの責任です。例えば、前号で紹介した会社の品質方針・品質目標を、すべての人たちに何度もメッセージとして発信して、十分な理解と納得をしてもらわなければなりません。品質目標を一人ひとりが自ら作るようになれば、おのずと仕事の意識も向上します。そして、自分の仕事が会社の目標の達成にどう貢献しているかを理解してもらいましょう。





 ところで、図4の様な力量を示した一覧を作成することには二つの大きな意義があります。

 まず、それぞれの人たちに保有されている力量と保有されていない力量を明確にすることにより、会社としての効果的な教育・訓練の計画が立てやすくなることです。

 特に経験の浅い人に対しては、これからどんな教育・訓練が必要かも明示することができます。製造現場をもつ会社では、このような一覧を「星取表」などと呼んで大きく掲示しているところもあり、働く人のやる気を引き出す道具にしています。意欲的な社員が、「自分はこの力量を持ちたいから教育を受けたい」と申し出てきたら、しめたものですね。

 さらに進んだ考え方をすれば、この力量評価の方法や体制をより厳密にしていくことにより、働く意欲を醸成するための人事考課制度や成果配分型の賃金制度へと、発展させることも可能なのです。

 もう一つの意義は、長期的に「マルチ力量」をもつ従業員を養成して、業務の平準化による合理的な経営を目指すことです。

 ちょっと考えてみてください。ある事業をしている会社で、A社は一人一人にきちんと分業がされていますが、その人たちは自分の担当する仕事以外はできません。しかしB社の場合は、分業はされているものの、ほとんどの人が他人の担当業務もできる能力をもっているとします。

 では、このような会社で仕事量が急に半分になってしまったとします。A社の場合は、半日で仕事が終わってしまい、午後はみんな時間をもてあましているしかありませんね。ところがB社の場合は、個人が多彩な力量持っているため全員がそろわなくても業務の実行が可能です。つまり、仕事量が減った場合、1日の仕事を半分の人数で行うことができるのです。そして残りの半分の人員は、別の事業所や新しい事業に振り当てることも可能です。

 本当の経営の合理化とは、少ない時間で仕事をすることではなく、少ない人数でも仕事をできるようにすることです。人々のマルチ力量化によって、それを実現することができるのです。
アイエル経営診断事務所 代表
板 賀 伸 行
経営コンサルタント(中小企業診断士)
ISO/QMS 主任審査員

過去に大手自動車会社において海外各国の自動車開発・生産プロジェクトを担当。その後、コンサルティング会社等を経てアイエル経営診断事務所を設立、中小企業の経営支援を開始。国や地域の中小企業支援センターのアドバイザーも務める。
経営資源の少ない小規模事業者のビジョン実現をサポートできる今の仕事に生き甲斐を感じています!
趣味はアウトドア系なら何でも関心があり、毎年新しいチャレンジ(冒険?)をしています!