【雇用情勢は悪化の一途】
金融危機に始まった昨秋からの世界同時不況による影響は、100年に一度と言われるほど深刻な経済状況にあり、企業収益の悪化は大企業・中小企業を問わず多くの産業におよび、雇用調整は正社員にも広がるなど雇用危機が深刻の度を増してきています。
国ではこれら雇用情勢の急速な悪化に対応するため、様々な緊急雇用対策が精力的に進められています。特に、各種助成制度の中でも減産や売上の減少などで余剰人員を抱えた企業を対象に、解雇するのではなく休業などで雇用維持を図ることを目的として、国が休業手当などを助成する「中小企業緊急雇用安定助成金」の利用申請が急増しておりますので、この助成金制度の内容や受給手続き等のポイントを紹介します。
1 中小企業緊急雇用安定助成金とは
従来の雇用調整助成金制度を見直し、当面の間の措置として、中小企業緊急雇用安定助成金制度が創設されました。
これは、世界的な金融危機や景気の変動などの経済上の理由による企業収益の悪化から、生産量や売上高が減少し、事業活動の縮小を余儀なくされた中小企業事業主が、その雇用する労働者を一時的に休業、教育訓練又は出向をさせた場合に、休業、教育訓練又は出向に係る手当若しくは賃金等の一部を助成する制度で、平成21年2月6日より要件緩和の見直しが行われました。
この助成金を受給するための前提となる「事業活動の縮小」とは、次の要件を満たしていることが必要です。
- 最近3か月の売上高又は生産量等がその直前3か月又は前年同期と比較して減少していること。
- 前期決算等の経常利益が赤字であること。(,稜箴綛睨瑤論源採未5%以上減少している場合は不要)
対象となる中小企業とは、
・小売業(飲食業を含む):資本金5,000万円以下または従業員50人以下
・卸売業:資本金1億円以下または従業員100人以下
・サービス業:資本金5,000万円以下または従業員100人以下
・その他の業種:資本金3億円以下または従業員300人以下
となっています。
2 受給対象とする休業、教育訓練及び出向の主な要件
(1)休業の要件
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対象期間内(1年間)に行われるものであること。 |
◆ |
所定労働日における従業員の全1日にわたる休業または事業所全員一斉の1時間
以上の短時間休業を行うこと。(当面の期間、当該事業所における対象被保険者
等毎に1時間以上行われる休業についても助成の対象となります。) |
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休業に係る手当の支払いが労働基準法第26条の規定(休業手当について平均賃金の60/100以上の支払い)に違反していないこと。 |
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労使間の協定による休業であること。(休業協定) |
(2)教育訓練の要件
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対象期間内(1年間)に行われるものであること。 |
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◆ |
所定労働日の所定労働時間に全1日にわたり行われるものであること。 |
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就業規則等に基づいて通常行われる教育訓練ではないこと。 |
ぁ |
労使間の協定による教育訓練であること。(教育訓 練協定) |
ァ |
教育訓練実施日に支払われた賃金の額が、労働日に通常支払われる賃金の額に0.6を乗じて得た額以上であること。 |
Α |
訓練の種類は、事業所内訓練・外部研修・委託訓練のいずれでも良しとされておりますが、それぞれに定められた要件を満たしていること。 |
(3)出向の要件
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対象期間内(1年間)に開始されるものであること。 |
◆ |
出向期間が3か月以上1年以内であって、出向元に復帰するものであること。 |
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出向労働者に出向前に支払っていた賃金とおおむね同じ額の賃金を支払うものであること。 |
ぁ |
労使間の協定によるものであること。 |
ァ |
出向労働者の同意を得たものであること。 |
Α |
出向元事業主と出向先事業主との間で締結された契約によるものであること。 |
А |
その他の定められた要件を満たしていること。 |
3 助成金の受給額
(1)休業及び教育訓練の場合
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休業手当又は賃金に相当する額として厚生労働大臣の定める方法により算定した額の5分の4。ただし、1人1日あたり雇用保険基本手当日額の最高額(7,780円)が限度となります。
教育訓練を実施した場合は、これにプラスして訓練費として1人1日あたり、6,000円を加算。 |
(2)出向の場合
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出向元事業主の負担額(出向元事業主の負担額が、出向前の通常賃金の2分の1を超える時は2分の1が限度となります。)の5分の4。ただし、1人1日あたり雇用保険基本手当日額の最高額が限度となります。 |
(3)支給限度日数
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休業及び教育訓練を実施する場合は、対象期間内に実施した休業及び教育訓練が、出向を実施する場合は、対象期間内に開始した出向が支給対象となり、上記(1)又は(2)の額の支給を受けることができます。
ただし、休業及び教育訓練を実施する場合、3年間で300日(最初の1年間は対象被保険者×200日分)が限度となりますので、これを超える休業及び教育訓練については支給の対象とはなりません。
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4 助成金受給のための手続き
(1)都道府県労働局又はハローワークへの事前届出
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受給しようとする事業主は、支給の対象となる休業、教育訓練及び出向の実施について、事前に都道府県労働局又はハローワークに届け出ることが必要です。
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休業及び教育訓練を実施する場合には、「休業等実施計画(変更)届」及び「雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書」を、
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出向を実施する場合には、「出向実施計画(変更)届」及び「雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書」を、開始する日の前日までに提出し、支給対象となる事業主に該当することの確認を受け、支給の対象となる休業、教育訓練又は出向の内容について届け出ることとなります。
(事前の届出の行われなかった休業、教育訓練及び出向については、中小企業緊急雇用安定助成金の支給対象となりません。) |
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◆ |
初回の「休業等実施計画(変更)届」又は「出向実施計画(変更)届」については、雇用調整の初日又は出向労働者の出向を開始する日の2週間前をめどに提出することをお願いしています。 |
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「雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書」は、初回の「休業等実施計画(変更)届」又は「出向実施計画(変更)届」を提出する際に併せて提出します。 |
ぁ |
「休業等実施計画(変更)届」は、判定基礎期間ごとに記載します。提出に当たっては、1判定基礎期間(1か月分)、2判定基礎期間(2か月分)、又は3判定基礎期間〈3か月分〉の中から選択して提出することができます。 |
ァ |
「休業等実施計画(変更)届」又は「出向実施計画(変更)届」を提出する際には、届出の内容により休業協定書(写)、教育訓練協定書(写)又は出向協定書(写)を併せて提出することが必要です。また、教育訓練を他の施設に委託して行う場合は、教育訓練委託契約書(写)についても提出する必要があります。 |
Α |
提出した「休業等実施計画(変更)届」又は「出向実施計画(変更)届」の届出事項に変更を生じた場合には、変更に係る実施日前までに、「休業等実施計画(変更)届」又は「出向実施計画(変更)届」を変更届として提出することが必要です。 |
А |
その他の添付書類
就業規則・給与規程・年間休日カレンダー等、会社案内・商業登記簿謄本・会社組織図・役員及び社員名簿、月次損益計算書・生産月報・決算報告書等 |
(2)助成金の支給申請
〈休業及び教育訓練の場合〉
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・中小企業緊急雇用安定助成金(休業等)支給申請書
・中小企業緊急雇用安定助成金(休業・教育訓練)助成額算定書
・休業・教育訓練確認書 他
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・各対象被保険者等の出勤状況及び休業状況が日ごと又は時間ごとに明らかにされた出勤簿等の書類
・労働日に支払われた基本賃金、扶養手当等と休業日に支払われた休業手当とが明確に区分され記載
された賃金台帳及び休業手当の額が明らかにされた書類
・休業実績一覧表(対象被保険者個人別の休業実施状況を示す表)
・労働保険の確定保険料申告書事業主控(写)(初回のみ提出)
(教育訓練の場合、訓練の種類によって添付する書類が異なります。)
・教育訓練実績一覧表(対象被保険者個人別の教育訓練実施状況表)
・教育訓練の実施状況が確認できる書類(外部委託の場合は不要)
・教育訓練受講料の支払いを確認できる書類(外部委託の場合)
※ 上記書類の他にも別途資料の提出をする場合があります。
※ 出向の場合の申請書類及び添付書類は割愛しております。
(3)その他
実施計画(変更)届、支給申請書提出の際に、以下の資料についても整理保管をしておくことが必要です。
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「事業活動の縮小」を判定する際の基礎資料 |
◆ |
「時間外労働等」に関する資料 |
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「教育訓練実施内容」に関する資料 等 |
5 不支給要件
中小企業緊急雇用安定助成金の支給が行われる際に、次のいずれにも該当しないことが必要です。
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休業、教育訓練及び出向の実施に係る事業所において成立する保険関係に基づく前々年度より前の年度に係る労働保険料を滞納している場合 |
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偽りその他の不正行為により本来受けることのできない各種助成金等を受け又は受けようとしたことにより3年間にわたる助成金の不支給措置が執られている場合 |
なお、詳細は、最寄りの都道府県労働局又はハローワークにおたずねください。 |