【有給休暇の目的取得状況】
会社所定の休日以外に、労働者が自分の休みたい日に有給で休める制度が「年次有給休暇」です。労働基準法第39条では、労働者の健康確保やゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、所定休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与えることを規定しています。
有給休暇は、正社員、パート、アルバイト等にかかわらず、その所定労働日数に比例して与えなくてはならないものとされております。
では、実際の有給休暇の付与日数や取得率はどうなっているのでしょうか。厚生労働省が行った「平成20年就労条件総合調査結果の概況」によると、労働者一人平均の有給休暇付与日数(繰越日数を含まない)は、17.6日、取得日数は8.2日、取得率は46.7%となっています。産業別には、右図の通りです。
エクスペディアの調査によると、日本の取得率は53.3%(付与日
数15日、取得日数8日)で、調査国で最低の取得率となっています。ちなみに、付与日数の最高はフランスで
37日、取得日数もフランスで34日、取得率では、アメリカの92.9%となっています。この調査は、日本では20〜59歳の男女有職者516人を対象に2008年7〜8月に行ったものです。
【有給休暇運用のポイント】
1 年次有給休暇の付与要件
社員が入社して最初の付与は、6か月間継続勤務し、その8割以上出勤したときに、10日間(7か月目から)の有給休暇の取得権利が発生します。さらに、継続勤務して同じく8割以上出勤すると1年単位で増加し、最高で20日間の有給休暇が与えられます。
また、パートなどの短時間労働者については、別の日数規定があり労働日に応じた有給休暇が比例付与されます。
付与要件の1つである継続勤務には、定年後嘱託として再雇用したとき、パートから正社員に切替わったとき、有期雇用契約が更新されたときなども該当します。
もう1つの要件である8割以上の出勤率は、次の式で計算されます。
出勤率 = 出勤日数 ÷ 全労働日(全労働日=期間の総暦日数−所定休日)
出勤日数には、早退した日や遅刻の日も含まれます。なお、次の日は、出勤日として扱わなければなりません。
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◆^藥または介護休業期間 |
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産前産後の休業期間 |
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ぁ’次有給休暇の取得期間 |
また、全労働日から次のものは除外されます。
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〇藩兌圓寮佞傍△垢戮事由による休業の日 |
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◆〆匈嘉不可抗力による休業の日 |
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慶弔休暇をとった日 |
週所定労働時間が30時間以上の者の年次有給休暇の付与日数 |
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表1 |
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なお、パート労働者で週の所定労働日数が4日以下の場合であっても、週の所定労働時間が30時間以上の者には、通常の労働者と同様に表1の日数の年次有給休暇を与えなければなりません。
週所定労働時間が30時間未満の者の年次有給休暇の比例付与日数 |
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表2 |
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週の所定労働時間が30時間未満のパート労働者などのうち、週の所定労働日数が4日以下もしくは年間の所定労働日数が216日以下である者については、週の所定労働日数に比例した日数の年次有給休暇が表2のとおり与えられます。
2 年次有給休暇の与え方
年次有給休暇は、労働者の請求する時季に与えるのが原則となっております。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に変更してこれを与えることができます。(時季変更権)
退職時に未消化の有給休暇を一括して請求された場合は、変更の可能性がないので時期変更権の行使はできないとされています。また、年度途中の退職者の年休を月割りにすることは許されません。
年次有給休暇のうち5日分までは労働者の指定する時季に与える必要がありますが、5日を超える日数については、あらかじめ労使協定により与える時季を決めて、それに基づき計画的に付与することができます。誕生日に付与するなんてことも計画付与の一環です。
計画的付与の方法として
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〇業場全体の休業による一斉付与 |
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◆“品未筌哀襦璽彿未砲茲觚鯊慇付与 |
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年休計画表による個人別付与 |
3 年次有給休暇の賃金
年次有給休暇を取得した期間については、就業規則等の定めにより、通常の賃金を支払うかまたは平均賃金を支払わなければなりません。また、労使協定により、健康保険法に定める標準報酬日額に相当する額を支払う旨定めた場合には、この方法によることもできます。
4 年次有給休暇の繰り越しと時効等
その年に取得した有給休暇の使われなかった日数については、翌年にのみ繰り越すことができます。有給休暇の時効は2年です。また、有給休暇は休むこと自体に意義がありますので、予め買い上げたり休暇を与えないことは違法となります。しかし、法定日数を超える日数や退職・解雇により消滅した日数など、結果として消化できなかった年休について、その日数に応じた対価を支給することは、必ずしも違法ではないとされています。
5 年次有給休暇の管理
年次有給休暇は、社員の採用日がまちまちで、年休の基準日や付与日数がバラバラなど、個別管理では付与日数のムダはありませんが、社員数が多くなるほど管理に手間がかかります。
会社によっては、全社員一律の基準日による取り扱いをするとか、4月と10月の年2回の基準日を設けて管理をしている会社もあります。この場合、社員が不利にならないよう法律の基準より多い日数の付与が必要になることもあります。
いずれにしても、各人別の年次有給休暇の日数や取得日数・残日数などが分かるように管理することが望ましく、個人別の年休管理表や年度ごとに複数社員をまとめて記載する年休管理簿などを作成するほか、賃金台帳に記入して管理する方法などがあります。
6 年次有給休暇の付与単位
現行では、年次有給休暇の付与単位は1日とされています。ただし、近年、有給休暇の取得促進の観点から、半日単位の取得については、労働者が希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合には与えても差し支えないとされています。
また、労働基準法の一部改正法が成立し、平成22年4月1日から、企業規模にかかわらず、労使協定を締結し1年に5日分を限度として、年次有給休暇を時間単位で取得できるようになります。
なお、年次有給休暇を日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、労働者に自由選択権があるほか、詳細は、改正法の施行までに厚生労働省令で定められることになっています。
日本の有給休暇の取得率が欧米に比べて低いのは、上司によるところが大きいとされています。取得を申し出ると「嫌味を言われる」など申請を歓迎する社風になっていないのです。社員満足度の観点においても、伸び伸びと申請ができ、大手を振って休暇できる社風を作りたいものです。 |