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   【人を活かす人事・労務】

Vol.15
『労基法上の管理監督者とは』

 

 

 
【名ばかり管理職】
 

 まだ、記憶に新しいことと思いますが、2年ほど前、名ばかり管理職が社会的な話題となりました。大手ハンバーガーチェーン店の店長で職責上は管理職とされていながら、その勤務実態が、部下であるパート・アルバイトなど一般社員と同じ勤務に就くことが多く、過重な労働時間の中でも残業手当が支払われていないことが表面化したものです。
 この事例は、当該店長が、その職務内容や権限・責任などからみて、労務管理を含め会社の事業運営に関与しておらず、賞与および給与が、管理監督者にふさわしい待遇とされていないなど、労働基準法で定める管理監督者の判断基準に達しないとして、東京地裁が、会社に残業手当の支払を命ずる判決を行なったものです。
 その後、厚生労働省では、平成20年9月に通達「多店舗展開する小売業、飲食業の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」を出し、多店舗展開する外食産業などにおける管理監督者の判断要素を示しています。

 このような事例は、管理職を置く一般の会社企業においても例外ではありません。そこで、労働時間や休憩、休日の規定が適用除外となる管理監督者とは、その判断基準は、管理職(役付者)との違いなどについて、今回のテーマとしました。
   
<管理監督者の定義>
1 管理監督者とは
 

 労働基準法では、最低基準としての労働時間や休憩、休日などの労働条件が定められております。労働者が残業を行ったら、2割5分以上の残業手当を支払わなければならない、と定めているのもその一つです。
 ところが例外的に、法41条2号で、「監督若しくは管理の地位にある者(管理監督者)又は機密の事務を取り扱う者」は、これらの労働時間等に関する規定の適用除外をする、としています。
 つまり、管理監督者に該当する場合には、労働時間や休憩、休日に関する規定の適用を受けない労働者として扱われ、残業や休日出勤をしても、残業手当や休日出勤手当を支払う必要はないということになります。ただし、深夜割増賃金は除外されておりませんので、支払う必要があります。

 
2 管理職=管理監督者とは限らない
 

 会社組織の上で任命する部長や課長、工場長、また、最近ではカタカナ名のグループリーダーやマネージャーなど職制上の役職を担っている役付者、いわゆる管理職は法律上の言葉ではありません。
 したがって、管理職が管理監督者に該当するためにはそれなりの条件があり、管理職手当(役付手当)を支払っているからといって、すべての管理職が管理監督者「監督若しくは管理の地位にある者」であるとは限らないことになります。
 一般的に多くの企業では、管理職を管理監督者として残業手当等の対象外とするなど他の従業員の労働条件とは別の扱いをしています。このため、当該管理職が管理監督者に該当するか否かが、労使間のトラブルの要因となる場合が多く、先の事例がそれに当たります。
 今後、労使間で無用のトラブルを避けるためにも、就業規則等で管理職をして管理監督者であることを明確にしておくことが望ましく、そのためには法律や通達に定められた基準に沿うことはもちろんのこと、各企業の状況に応じた定義を定め労使が納得のもとに運用していくことが求められます。

 

 

3 管理監督者の判断基準
 

 企業一般に対する管理監督者の判断基準ついては、労基法41条2号を受けて昭和22年9月に最初の通達が出され、その後、この通達の判断方針を確認した上で再度、昭和63年3月に通達が出されています。
 これら二つの行政通達、特に63年通達前文では、「監督又は管理の地位にある者の範囲」について、「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。」としています。
 その上で管理監督者に該当するか具体的な判断をする際の考え方を、要約すると次のようになります。

1.

原則

   企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者が、すべて例外が認められる管理監督者に該当するものではないこと。
2. 労基法41条の適用除外の趣旨
 

 労働時間、休憩、休日等の法律の規制する枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って、法41条による適用の除外が認められること。

3. 実態に基づく判断
 

 企業が職務の権限等に応じた職位と経験、能力に基づく資格等によって人事管理を行っている場合、管理監督者の範囲を決めるにあたっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること。

4. 待遇に対する留意
 

 定期給与である基本給、役付手当や賞与等において、その地位にふさわしい待遇がなされているかどうかについて留意する必要があること。なお、一般労働者に比べ優遇処置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。

5. スタッフ職の取り扱い
   スタッフ職の場合で、経営上の重要事項に関する本社の企画、調査等の部門に配置され、管理監督者と同格以上に位置付けられるなど、相当程度の処遇を受けている場合、一定の範囲の者については、法41条2号該当者に含めて取り扱うことが妥当であると考えられること。

以上のような条件に該当するかどうか、個々の企業において一律に判断することは、中々むずかしいところがありますが、管理職をして管理監督者であるためには、これらの考え方を総合的に判断することが必要です。

 
4 機密の事務を取り扱う者とは
 

 管理監督者と同様に、法41条2号で労働時間等に関する規定の適用除外とされております機密の事務を取り扱う者とは、必ずしも機密書類を取り扱う者を意味しているものではなく、「秘書その他職務が経営者や監督又は管理の地位にある者の活動と一体不可分であって、出社・退社など厳格な制限を受けない者であること」としています。

 貴社の管理職は、労基法上の管理監督者に合致していますか?

かのう社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 狩野 一雄


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