Vol.16 『割増賃金の算定基礎となる 賃金・除外できる賃金』
平成22年4月1日に労働基準法の一部改正法が施行され、「時間外労働の割増賃金率の引き上げ等」が行われました。改正された割増賃金率のポイントは2つあります。一つは、1か月の時間外労働が60時間を超える時間外の割増率が25%から50%に引き上げられました。もう一つは、下図の通りその部分を有給の休暇(代替休暇)として付与する制度が導入されたことです。 また、1か月の時間外労働が、45時間を超え60時間以下の場合は、25%の法定割増率を超える率とするよう努力義務も新たに加わりました。
これは、長時間労働を抑制し、労働者の健康を確保するとともに仕事と生活の調和がとれた社会を実現することを、目的として改正されたものです。 中小企業では、時間外労働が月60時間以上に対する50%以上の割増率は、当分の間、適用免除され努力義務とされているものの、いずれ、適用範囲の拡大が行われるものと予想されています。 また、今後、中小企業においてもこの一部改正法の施行を受けて、さらなる時間外労働の短縮やワーク・ライフ・バランスの導入など、適正な人件費コストをふまえた生産性の向上を図りつつ効率的な経営を進めて行かざるを得ないものと考えられます。 こうした経営労働環境の中、あらためて割増賃金の算定基礎に算入される賃金、算入しない賃金(除外賃金)について確認しておきましょう。
私たちが一般に「残業」と呼んでいるのは、例えば、会社の就業規則などで決められた所定労働時間が9時〜17時までだった場合、表に示すオレンジ色に塗った部分です。 この表に出てくる言葉の定義は以下のとおりです。
会社(使用者)の指揮・監督下にあって、労働を提供している時間です。休憩時間・通勤時間は含みません。
労働基準法で定められた労働時間の上限のことで、1日8時間、1週間40時間です。
会社が定めた所定労働時間を超えて働くこと。所定労働時間というのは、会社が法定労働時間内で決める労働時間のことです。
1日8時間以内の法定労働時間内で行われる残業です。残業代として、通常賃金の支払はしなければなりませんが、割増賃金を支払うかどうかは、会社が決めます。割増は義務ではありません。
法定労働時間を超える残業。割増賃金を支払う必要があります。 ※満18歳未満の人の時間外労働は認められていません
割増賃金は、次の式で求めます。
1時間当たりの通常賃金は、「1か月の賃金÷1か月の所定労働時間」で求めます。1か月の賃金については、2以降となります。
割増賃金算定の基礎となる1か月の賃金は、原則として「通常の労働時間または労働日の賃金」をいいます。これは、基本給だけでなく諸手当を含むもので、次項で述べるように諸手当については、労基法で列挙されている7種類に該当しないものすべてが割増賃金の対象となり、割増賃金算定の基礎となる賃金に算入することになります。例えば、役職手当、資格手当、業務手当、皆勤手当、定額で支払う生産手当など割増賃金の計算に含めなければなりません。
労働基準法37条5項および同施行規則21条で、「次に掲げる賃金は、割増賃金の基礎となる賃金には算入しない」と定めています。 1.家族手当 2.通勤手当 3.別居手当 4.子女教育手当 5.住宅手当 6.臨時に支払われる賃金 7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金、この7種類の賃金については、時間外労働に対する割増賃金の基礎に算入しない賃金(除外賃金)として制限列挙されています。 したがって、これら7種類の手当、賃金に該当しない賃金は、すべて割増賃金の算定基礎に算入しなければならないことになります。
割増賃金の基礎となる賃金に算入しないと列挙されている賃金について、通達で「除外賃金に該当するか否かは、名称のいかんを問わず実質的に判断しなければなりません」と判断基準がしめされています。(S22.9.13基発17号)
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