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Vol.5 現場の点検基準


 こんにちは。検査員ヒデです。
 皆さん4月、5月の入庫はどうでしたか?当社は、少し悪かったですね。4月の入庫率は少し上がったのですが、5月は悪くなりました。GWの関係ですかね・・・自社の周りに、各ディーラーがありますが、各ディーラーも入庫率が5月は格段に減ったようです。ディーラーの顧客囲い込みの影響などで、自社の入庫率も減っているようにも思います。

 さて、今回のテーマに上げさせて頂いた「現場の点検基準」ですが、最近過走行や低年式の車両の車検や整備を行っているケースが多く目立ってきます。お客様から「低年式で下取価格がつかないから、今回は検査を受けて2年後に乗り換えようかな?と思っている」とか、「大きく壊れていないので、今回は検査をしてほしい」と、お声を良く聞きます。
 やはり、こうした車両は、低年式、過走行(走行10万キロ以上)の車両が多いと思いますね。こう言った車両の受け入れ検査をしていると、やはり消耗品などが弱っている場合が多いと思われます。
 検査で定期的な消耗品は良く点検をしているのですが、他のあまり壊れない部品や、壊れにくい部品などの点検はどうされていますでしょうか?今回は、当社で行っている点検方法をご紹介させていただきたいと思います。

 今回の車両は、平成5年式、マツダ・スクラムトラック、走行距離113,226kmです。お客様の使用状況は仕事で使っていますが、長距離の使用はあまりなく近くの現場までの足に使われている車両です。
 入庫時に受け入れ検査を行いましたが、前回の車検でタイミングベルトやオイル漏れなどを修理、ブレーキ関係も問題ありませんでした。定期的な消耗品も交換されていますので、受け入れ検査の時点では問題ありませんでした。当社の場合、ピットで受け入れ検査を行うので下回りも同時に点検を行いました。ステアリング周りや足回りにも問題は無く、その後、リフトアップしてドラムブレーキ等の点検を行いました。
 この時は、判明しなかったのですが、ホイールを外す時にフロント・ロワアーム・ボールジョイントにガタが見られました。後に再度確認をした所、やはりガタが少し見られました。この状態で走り続けるとロワアームボールジョイントの脱落事故につながってしまう可能性が多かったと思うと冷や汗が流れてきました。
 最近、このロワアームボールジョイントの脱落事故が多くなってきているのをご存知でしょうか?国土交通省から出されているデーターは次の通りです。
 左記のデーターは、国土交通省の相談窓口、メール等で報告が合ったものです。
 皆様はこのような事故が多発しているのをご存知でしょうか?ロワアームのボールジョイントが抜け落ちる事故の場合、普通で考えますと、ロワアームの交換が必要、タイヤがフリーになり、タイヤハウスの鈑金が必要、前部足回りの部品交換など多くの出費がかさんできます。
さらに、お客様が直接整備工場に言って頂ければ何とか対処できるのですが、上記のように国土交通省(陸運局事務所)に言われたら、まず指定停止は免れないと思います。指定停止や認証停止などの行政処分になってしまうと、整備工場として経営が悪化するようになってしまいますので、お気をつけください。
 皆さんは、ロワアーム・ボールジョイントの点検方法を詳しくご存知でしょうか?「適正な指定整備業務実施要領」の中には、下記のようになっています。もちろん、検査員、検査主任さんはよく分っておられると思いますが、実際現場での作業はどうでしょうか?
 実際の作業現場では、ホイールを外す前にタイヤの上下を持って前後に振ります。
 この時点で少しでもガタがあればダメですよね。しかし、最近の車両は前後に振ってもガタが見られない車両が多くなってきています。この様な車両に対しても最も有効的な方法は、「ロワアームとナックルアームの間にバールを差し込み、上下に揺する」と言う方法が一番だと思います。
 当社で確認したところ、実際に1年間に4〜5台位、ガタが生じている車を発見しました。これは最近に始まった事とは思いません。実際には何年も前からあったとは思いますが、数年前までは、FR車が多かったために整備士がフロントベアリングの点検でタイヤを上下左右に振っていたので結構発見が多かった様な気がします。
 さらに、昨今スパイクタイヤが使用禁止になったので、冬の塩化ナトリウムの濃度が以前の倍以上の濃度になっています。これにより、ボールジョイントのブーツに水が入り錆などが多くなってきているのも原因のひとつと言われています。
 なお、上記のバールで確認をする場合の注意点は下記の通りです。

【注意点】
 1、 ストラット式の場合は、リフトアップ時に行います。
    (4柱リフト等で点検をしても荷重がかかっていますので、分からない方が多いです。)
 2、 ダブルウィッシュボーンのサスペンションは4柱リフト又はピットにてアッパーボールジョイントを点検し、リフト
    アップ時にロワアームボールジョイントを点検する。
 3、 同時に、サスペンションのブッシュ・バネ・シャックル等を目視又はメガネ等で点検する。
 4、 同時にステアリング・タイロッドエンドも確認をする。



 この度の、ボールジョイントは、ボールジョイント・ダストブーツに亀裂が入った為、水が混入してボールジョイントに錆びがきた物と思われます。スズキ系の場合、ボールジョイント・ダストブーツのひび割れは発見しにくい車両でもありますので、ダストブーツをマイナスドライバーなどで、ちょっとめくるのも必要ではないでしょうか。
 検査をして後々のクレームで対処をするより、現在のお車の状況をお客様に的確にお伝えして、お客様にご了解を頂くのが後々のトラブルとクレームの回避にもつながると思います。
検査員 ヒデ



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