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@GS350と同じ3.5リッターV6の2GR-FSEエンジンを搭載し,専用にチューニングしています(技術トレンド第5回参照)。つまり吸入時や圧縮時の抵抗を抑えるように吸入バルブの開閉タイミングの最適化で,始動・停止時の振動を低減しています。このエンジンの最高出力は218kW/6400rpm,最大トルクは368Nm
/ 4800rpm です。
Aハイブリッド用トランスミッションは,モーター,ジェネレータ(発電機),2段変速式リダクション機構,動力分配機構などの独自のメカニズムで構成されていますが,コンパクト化を実現したため6速ATなみの大きさを達成しています。
a.動力分割機構:エンジンからの動力を走行とジェネレータの発電(モーター駆動)とに効率よく振り分けるものです。モーターによる走行やエンジンの始動・停止およびエンジンの最適制御を実現し,常にもっとも高いエネルギー効率での走行を引き出します。またジェネレータの回転を自在に変化させることでギア比を無段階にコントロールし,滑らかな走りを実現しています(図2)。
b.モーター&ジェネレータ:モーターは,エンジンとは異なり回転を始めると,すぐにトルクを最大にまで発生できることと静粛性が最大の魅力です(最高出力147kW、最大トルク275Nm)。この特性を活かして発進時では力強く静かな走り出しができ,全開加速時にはエンジンの動力をアシストして伸びのある加速ができます。また減速・制動時にはタイヤから伝わる運動エネルギーを利用して発電し,電気エネルギーとしてバッテリに蓄えます。モーターと同じ永久磁石式の交流同期型を採用したジェネレータは,高回転化によって高出力モーターに十分な電力を供給します(図3)。
c.2段変速式リダクション機構:モーターの回転を車軸に伝える前に減速させ,大きなトルクを発生させる減速機として機能します。低速域をカバーするLoギア(減速比3.900)と高速域をカバーするHiギア(減速比1.900)の二つの減速比を備えることによりモーターの効率のよい領域を使用します。そのため発進・加速での力強いトルクの発生と高速クルージングへの対応を両立しています。なおギアの切換えは,電子制御で自動的に行われます(図4)。
Bパワーコントロールユニット(可変電圧システム)は,内蔵された可変電圧システム(昇圧コンバータ)によってバッテリの288Vの直流電圧を最大650Vまで昇圧します。さらにインバータで交流に変換してモーターとジェネレータ(発電機)に供給します。そのためモーターとジェネレータの駆動電圧をバッテリの電圧に依存することなく高圧にできます。そのためモーターの高出力化,およびより少ない電流で電源系への大きな電力供給ができ高効率化を実現しています。ユニット本体は,構成部品の小型化や新規構造の採用などで従来の約3分の1の小型化に成功しています(図5)。
Cニッケル水素(Ni-MH)バッテリは,充放電を繰り返すハイブリッドシステムの特性を考慮し,高い信頼性と長寿命を特徴としています(定格電圧288V)。高出力化を図りながら,小型・軽量化を達成したので,リアシート後方へのコンパクトな配置ができ,ラゲージスペースへの影響を,できるかぎり抑えています(図6)。
D回生協調ブレーキは,制動時・減速時にモーターを発電機として作動させて走行する車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリに回収するものです。
ECB(Electronically Controlled Brake system)と組み合わせて,より低い車速までエネルギーの回収を行い,さらに高効率のエネルギー回生を実現しています。またドライバーが必要とする制動力の一部をモーターで分担して,エネルギー回生を最大化するようにモーターによる制動を最大限に活用しながら制動力変化に応じてモーターによる制動力と油圧ブレーキによる制動力を最適に協調制御しています(図7)。
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図2.動力分割機構断面図。エンジンからの動力を車輪とジェネレータに分割し、機械動力伝達系と電気動力伝達系の2経路を通じて伝達する。 |
図3.モーターおよびジェネレータの構成図。650Vの高圧でモーターを駆動するので高出力を実現している。 |
図4.2段変速式リダクション機構の構成と作動トルクイメージ。ラビニオ式プラネタリギアを使用し、フロントサンギア、リアサンギア、ロングピニオンギア、ショートピニオンギアおよびリングギアで構成されている。 |
図5.パワーコントロールユニット。インバータ部、昇圧コンバータ部およびモータージェネレータECUで構成されている。 |
図6.HVバッテリパックの構成。HVバッテリモジュール、電池監視ユニット、ジャンクションボックス、サービスプラグ、DC−DCコンバータおよびクーリングファンを1ケースに格納している。 |
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