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V8型4.6リッターのこのエンジンは、4.3リッターの3UZ-FEエンジン(旧セルシオなどに搭載)に対し、最高出力を約37%向上させ、トルクをエンジン回転数全域にわたって10〜30%向上させながら燃費を改善しています(図3)。さらに排出ガスは国内最高の水準である国土交通省の「平成17年基準排出ガス75%低減レベル」の認定を取得しています。
これらを実現するためには、Dual VVT-i(デュアル連続可変バルブタイミング機構)を進化させ、吸気側にVVT-iE(電動可変バルブタイミング機構)を採用したうえ、さらに各気筒に二つの燃料噴射系を有するD-4S(筒内直接燃料噴射装置)を採用しています(図4)。
@吸気側にVVT-iEを採用したDual VVT-i
このエンジンは、動力性能を向上させ低燃費・低エミッションに寄与する吸・排気連続可変バルブタイミング機構(Dual VVT-i)を採用しています(写真1)。さらに吸気側には電気モーターで制御を行う新開発の電動連続可変バルブタイミング機構(VVT-iE)を採用しています(図5)。そのため油圧制御よりもバルブタイミングの可変範囲が大きくなったほか、油圧制御では作動しないエンジン回転数1000rpm未満の領域およびエンジン油温の低い条件でも、いち早く吸気側のバルブタイミングを制御します。
この電動可変バルブタイミング機構を支えるモーターは、コイルの巻き方や直径、形状から磁石の最適配置など、モーターコンポーネントのすべての部位を徹底的にチューニングして高性能化と小型化を実現しています。またモーターの回転軸を支えるベアリングの精密加工で、振動も微小なレベルに抑えています。
エンジンを停止する際は、モーター制御でエンジンの再始動に備えた最適な位置にカムシャフトを停止させるため摩擦抵抗と減速ギアを利用しています。このためバルブタイミングの可変範囲が拡大でき、燃費や出力性能が向上しました。なお進角時は、モーターがカムシャフトより速く回転するので減速機構を介して、図6のようにスパイラルプレートが回転してスパイラル溝に嵌合したリンク制御ピンを内側に動かしてカムプレートに固定された吸気(インテーク)カムシャフトを進角側に回転させます。遅角時は逆にモーターがカムシャフトより遅く回転するので、スパイラルプレートも逆に回転してスパイラル溝に嵌合したリンク制御ピンを外側に動かして吸気カムシャフトを遅角側へ回転させます。
A筒内直接燃料噴射システムD-4S
シリンダごとに2系統の燃料噴射系を有するD-4Sは、高圧燃料を燃焼室内に直接噴射する「筒内噴射インジェクタ」と吸気ポート内に燃料を噴射する「ポート噴射インジェクタ」を運転状況に応じて最適に制御しています(写真2)。
エンジン低・中負荷時は、筒内直接噴射インジェクタとポート噴射インジェクタの両方を最適に制御して燃費の向上・燃焼の安定化を図ります。
エンジン高負荷時は、筒内直接噴射インジェクタだけが作動し、吸気冷却効果による充填効率の向上およびノッキング改善による高圧縮比化で高性能を実現しています。
この筒内直接噴射インジェクタには、噴霧の空間分散性を向上させた高圧ダブルスリットノズルインジェクタが採用され、高微粒化された燃料を2個所の噴孔から燃焼室に噴射します。これにより極めて均質な燃焼が実現され、動力性能や燃費の向上に貢献します。
実際の燃焼状態を示したのが図7です。このD-4Sについては、このシリーズの第5回(トヨタ2GR-FSE型エンジン)でも紹介しましたので参照してください。
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図3.レクサス460に搭載された1UR-FSEエンジンの性能曲線図。 |
図4.1UR-FSEエンジンのエンジンコントロール構成部品図。 |
図5.運転状態に応じて最適なバルブタイミングに制御するため、吸・排気連続可変バルブタイミング機構(Dual VVT-i)を採用。吸気側に電動モーター駆動のVVT-iEを排気側に従来型油圧駆動のVVT-iを採用。 |
図6.吸気側電動モーター駆動VVT-iEの進角時の作動状態。 |
図7.直接燃料噴射システムD-4Sの運転状態における燃焼状況比較 |
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