|
このエンジンは、自然吸気エンジンとほぼ共通の基本構造に加え、燃料を直接気筒内に噴射する直噴式(ダイレクトインジェクション)を採用し、1.6Lクラスのエンジンとしては、世界初のツインスクロールターボチャージャーを採用しています(写真4,5)。そのため自然吸気の2.0Lエンジンに匹敵するほどのパワーと低回転域での高いトルク特性による優れたドライバビリティを発揮します(図2)。また同時に低燃費と排出ガスのクリーン化も実現しています。
特に1000rpm時からターボチャージャーが効きはじめて1400rpm時には最大値に達するトルク特性は、このクラスでは味わえなかった動力性能を生み出します。このエンジンは、5速MTと組み合わされ、GTタイプにのみ搭載されます。主なエンジンスペックは、総排気量1598t、最高出力110kW(150PS)/5800rpm、最大トルク240Nm(24.5sm)/1400〜3500rpmです。
@直噴式(ダイレクトインジェクション)のメリット:このエンジンの最大のメリットは、各気筒の1回の燃焼に必要な燃料の量を正確に制御できることです。高圧燃料ポンプで最大120気圧に加圧された燃料は、シリンダー(気筒)内に直接噴射され、速やかに空気と混じりあって理想的な混合気になります(図3)。また通常の燃料噴射のように吸気ポートの壁面に付着した燃料の燃え残りもなくなるので燃焼効率が高くなって、高出力化と燃費の低減に優れた効果を発揮します。さらにガソリンの気化熱のよるシリンダー内の冷却効果が異常燃焼(ノッキング)を防ぐので、ターボチャージャー付きエンジンにもかかわらず10.5:1という高い圧縮比を達成したことも高出力化を推進しています。
Aツインスクロールターボチャージャー:排気エネルギー圧力を利用してタービンを回して吸入空気を加圧することで出力を向上させるのがターボチャージャー付きエンジンです。そのターボチャージャーにツインスクロールタービンを採用しています。システム図を図4に示します。これは4気筒の第1とだい4気筒の排気経路を1本に、第2と第3気筒の排気経路を1本まとめて2本の経路を通じて排気をタービンに導きます。そして、それぞれからの等間隔の排気パルス(脈動)がタービンのブレード(羽根)を回して効率的に高過給圧を実現しています。このシステムは、わずか1000rpmから過給効果が立ち上がり、ターボチャージャー付きエンジンの欠点といわれるターボラグをほとんど解消しています。これらに加えて電子スロットルも採用しているので、スポーツカーを思わせるアクセルレスポンスを味わえます。
|
写真4.ツインスクロールターボチャージャー付き1.6Lエンジンの単体。 |
写真5.ツインスクロールターボチャージャーの分解図。 |
図2.ツインスクロールターボチャージャー付き1.6L直噴式エンジンの性能曲線図。非常に速いトルクの立ち上がりが見て取れる。 |
図3.直噴(ダイレクトインジェクション)式エンジンの構造図。 |
図4.ツインスクロールターボチャージャーシステムの構成図。 |
|