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このような2ペダルにパドルシフトを組み合わせたシステムは、近年のモータースポーツのカテゴリーでも常識的な装備になっており、その有用性も証明されています。このツインクラッチSSTは、その名のとおり二つのクラッチを制御し、変速ショックの少ない素早い変速動作ができるようになっています。
以下にシステムの構造と変速概念について、簡単に説明します。
このトランスミッションの変速機構は、奇数段軸(後退、1速、3速、5速)と偶数段軸(2速、4速、6速)の2系統に分かれ、それぞれ独立したクラッチに結合しており、3速のマニュアルトランスミッションを二つ組み合わせたような構造をしています(図2)。
発進時は、P→D、N→Dの操作によって、シフトフォーク(1速―後退用)を後退(リバース)ギアから1速ギアに移動させて1速ギアを噛み合わせて変速段側クラッチをつなぐことで1速発進します(図3)。1速走行時は、偶数段側のクラッチを解放したまま2速ギアを、あらかじめ噛み合わせています(図4)。なお偶数段での走行中は、奇数段のギアをあらかじめ噛み合わせています。2速走行時は、シフトマップに応じた変速タイミングでクラッチ(奇数段用)を切り離し、クラッチ(偶数段用)を接続することで2速ギアでの走行となります(図5)。
クラッチには、湿式多板クラッチ並列に配置し、クラッチ径を大きく同径のものを採用して、422Nmという高出力ターボエンジンの大きなトルクに耐え得るものにしています。
TC−SSTのバルブボディは、ソレノイドバルブの作動によって、クラッチおよび各変速部の操作に必要な油圧を送ります。ソレノイドバルブは、ECUによって制御され、油圧ポンプはエンジンの動力を使用して油圧を発生させています(図6)。なおオイル性能の低下を防止するためオイルクーラーおよびフィルターを装備しています。 |
図2.TC−SSTの変速機構構成図。2系統に分かれた変速段軸に、それぞれ独立したクラッチを結合している。 |
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図3.TC−SSTの発進時の変速ギアの状態。シフトフォークをリバースギアから1速ギアに移動させて1速ギアを噛み合わせ、奇数段側のクラッチをつなぐことで1速発進する。 |
図4.TC−SSTの1速走行時の変速ギアの状態。偶数段側のクラッチを解放したまま2速ギアをあらかじめ噛み合わせている。 |
図5.TC−SSTの2速走行時の変速ギアの状態。シフトマップに応じた変速タイミングで奇数段側クラッチを切り離し、偶数段側のクラッチを接続することで2速ギアでの走行になる。 |
図6.−SSTの油圧機構。ECUで制御され各部へ必要な油圧を送る。 |
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