ホンダは、1998年にクルマとの衝突事故における歩行者の頭部傷害軽減と車体側の加害部位の特定を目的に衝突時の人体の挙動を再現する歩行者ダミーを世界で初めて開発しました。
また2000年には、歩行者傷害軽減の取組み範囲を広げ、より人体に近い挙動や傷害を再現するシミュレーション解析とともに、頭部、頚部など8カ所で、内蔵した計測器によって傷害値が計測できる第二世代歩行者ダミー「POLARⅡ」を開発しました。
さらに今回SUVやミニバンとの歩行者衝突事故に多い腰部や大腿部の傷害提言を目指して第三世代の歩行者ダミー「POLARⅢ」を開発しました(写真5)。これによって、従来の膝部靭帯損傷や脛部骨折に加え、腰部、大腿部の人体忠実度を向上させたので、腰部、大腿部の骨折の評価もできるようになりました。
新型歩行者ダミーと旧型歩行者ダミーとの構造的な相違は、次のとおりです。
- 腰部:骨盤と恥骨結合部にフレキシブル構造を採用して骨盤のたわみ量と荷重を計測して骨折の有無を評価する(図5)。
- 膝部:より人体に近い脚部構造を実現するために靭帯のスプリングを小型化して各靭帯の荷重を計測して靭帯損傷の有無を評価する(図6)。
- 大腿部/腰部:大腿部にフレキシブルシャフトを採用しながら脛骨のフレキシブルシャフトを延長して各部の曲げモーメントで骨折の有無を評価する(図7)。
ホンダでは、この第三世代歩行者ダミーを用いた歩行者衝突実験を年内から実施する予定となっています。さらなる歩行者に対する安全ボディの開発が進むことが期待されています。 |