1.燃焼速度と燃焼タイミングの最適化
流れを強める吸気ポート形状や燃料と空気の混合を促進する燃焼室形状を採用して燃焼速度・燃焼タイミングを最適化しています(図1)。シリンダヘッドは、2カム4バルブで、軽量で放熱性のよいアルミ合金製としています。吸気(インテーク)バルブと排気(エキゾースト)バルブの挟み角は36°から37.5°に変更され、クロスフロー式吸排気レイアウトを採用し、吸気バルブの傘部径は24.6から25.7㎜に拡大させて吸気効率を向上させています。なお燃焼室形状はペントルーフ型を採用し、バルブの駆動には直打式を採用しています。
2.ロングストローク化による低中速トルクの向上
従来のエンジンの最高出力40kW/6500rpm、最大トルク63Nm/4000rpm(NA)に比べて、その差はないのですが、低中速域のトルクを向上させて、さらに燃費も向上させています。ボア(内径)×ストローク(行程)が68.0×60.4㎜だったものを64.0×68.2㎜にロングストローク化しています。これによってボア―ストローク比は、0.89から1.07に変更されています。
3.ロングリーチ点火プラグによる高圧縮比化
細径のM10ロングリーチ点火プラグを軽自動車用エンジンとして、初めて採用しています(図2)。これによって燃焼室周辺の冷却液の通路を効率よく確保できるようになったので、耐ノッキング性能が向上し、自然吸気(NA)エンジンで11.0の高圧縮比を達成しています。
4.ロングノズル・インジェクタによる燃焼効率向上
燃料の微粒化や噴射位置・角度を最適化するロングノズル・インジェクタを採用して高い燃焼効率を実現して、燃費と低速トルクを向上させています。
5.シリンダブロックの高剛性化による低騒音化
アルミ製のディープスカート構造のシリンダブロックや鋳鉄製ベアリングキャップ、高剛性アルミオイルパンを採用し、CVTや補機類との締結剛性も向上させています(図3)。また締結部のねじれによって発生する音などを大幅に低減したうえ、随所に対策を施して全回転域でエンジン騒音を低減しています。
6.吸排気VVT(可変バルブタイミング)機構の採用によるポンピングロス低減化 。
ガソリン車は、一般に低中速域では吸気行程時のポンピングロス(ピストン下降時の吸気抵抗)が大きくなりますが、軽自動車では初めて吸排気VVT機構を採用したことで、ポンピングロスを低減でき、燃費向上に貢献しています(図4,5)。
⑦ピストンのフリクション低減処理化
燃費とトルクをできるだけ高めるためにフリクションの低減を追求しています。ピストンまわりでは、低張力ピストンリングを採用し、トップリングとオイルリングに摩擦の少ない表面処理を施しています。またピストンスカートにも、軽量樹脂コーティングを採用しています(図6)。エンジン全体としては、従来型に比べてフリクションを約10%低減しています。
⑧細径クランクシャフト採用などによる軽量化
クランクシャフトは、高剛性の鍛造スチールとすることで細径化できたため、ピン、ジャーナルともに従来型に対して16%小径化することができました。その結果、軽量化とフリクション低減を同時に達成しています(図7)。さらに高速で往復運動するバルブシステムなど、細部にわたり構造やレイアウトを見直し、クラス最軽量の51.9㎏(NA)、55.7㎏(ターボ)を達成しています。
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