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           「hamawaza」って知ってますか?
おそらく日本で始めての、官主導型・民間他異業種協同新製品開発のユニットが
 「hamawaza」だ。

横浜市経済局が横浜の民間会社で協力し合い、何か横浜らしいものが作れないか、新しいビジネスモデルができないか、ということで、市内の製造業・商業者・デザイナー・消費者と、まったく異なる業種に従事する人をメンバーとして平成16年に設立された。

設立から2年。2006年2月、hamawazaから第一弾商品が発売された。それは中古車をベースにした横浜ならではのコンセプトを盛り込んだ改造車「ムエット」だ。

今回は主にムエット製造に携わった高田工業株式会社の鎌倉顧問に話を聞いた。鎌倉顧問はhamawazaの副代表も務めている。

高田工業株式会社は過去に日産の「Be-1」「パオ」「フィガロ」などを製造したり、特殊車両や福祉車輌を製造する車体製造業社。


        「ムエット」ができるまで
●>まず、なぜhamawaza第一弾商品が「車」だったんでしょう?

鎌>設立当初、何かhamawazaを象徴するようなモノを作りたいという気持ちは皆にありました。ディスカッションを重ねるうちに、やはり夢のあるもの、ライフスタイルを反映できるものがいいと考え、「車」を造ろう、という話になったんです。

●>最初から結構「ハード」なものつくりだと思いますが

鎌>もちろんです。車を1台つくるということが、どれくらい大変なことなのかは良くわかっています。マーケットリサーチ、デザイン、法律関係、売り物である以上は値段設定、そして宣伝など車と言うのは、通常のメーカーでは数10億かけて造るものです。

しかし、高田工業は特装車や限定車を造ってきたので、お金(固定費)をかけずに製作するノウハウがありました。中古車をベースにする、という発想も、お金をかけずに製作するには、というところから生まれています。受注生産方式(ムエットは限定200台)とし、また成形型費を抑えれば投資リスクが減るわけです。

何より、hamawazaでいろいろな業種の方が集まっているおかげで、マーケットリサーチやデザイン、宣伝から販売まで、hamawazaのメンバーで分業し、コスト的にはなんとか一般に販売できるまでに抑えることができました。

     


●>「ムエット」とはカモメのフランス語『mouette』(ムエット)を語源としているんですね。色も海を思わせるディープブルーで、デザインもステキですね。

鎌>そうですね、車を造るにあたって、苦労した点の1つがデザインです。もちろん当社にも設計者はいますが、今回のムエットは横浜のデザイナーさんが手がけています。
車のデザインと言うのは通常のデザインと違い、法令もありますし、特にムエットは日産『キューブ』の中古車がベースとなっているので、ライトの位置などの変更はできないわけです。
そうした制限のなかで、横浜らしさやコンセプトをデザインで表現したデザイナーさんは大変だったと思いますが、すばらしい仕上がりにさすがだなと感じました。

●>キューブはもともと5名乗りですよね。それを2人乗りにしたのはどうしてでしょうか?

鎌>はい、事前にhamawazaのメンバーでマーケットリサーチを行ったところ、こういったところが横浜らしいといいますか、車は用途別に使う、数台所有、外国車を持っているという回答が結構あり、車に対しての考え方が、新車・中古車ではなく、自分のライフスタイルにどう取り入れるかという意識が高い方が多かったのです。

ですので、コンセプトとしては『こだわりの生活スタイルを持ち、自分の生活を大切にする人に贈る、2人乗りのキュートなスペシャリティーカー』ということにしました。

●>なるほど。しかし、中古車をベースにする、しかも限定で200台とはいえ、同じ状態の車両を200台そろえるというのは、物理的に可能なんでしょうか?

鎌>はい、実はムエットは当初500台の予定でした。今回販売を担当している神奈川日産からは2万〜2万5千キロ走行のキューブなら、500台なら大丈夫と言うお話もいただいていました。日本の中古車は状態の良いものが多いですし、キューブは人気車種で販売台数も多い。もちろんオークション会場にも実際に足を運び、現在の中古車はどうなっているのか確認もしました。

その上の200台ですので、車輌をそろえる問題はありませんが、製造は1台1台が手作りですので、いっぺんにはできません。
販売予定は4月からでしたが、先日のテクニカルショウやPRの効果が出ているのか、問い合わせも多くいただいているので、急遽予約は2月から受け、4月からは順次お渡しできるようにしたいとがんばっているところです。

  


●>販売後のアフターサービスというのはどうなんでしょうか?ムエットを気に入って関東近郊ではない、たとえば北海道の方が購入された場合・・・。

鎌>(笑)そうですね、そういったことも想定しています。
hamawazaのメンバーに三井住友銀オートリースさんもいて、オートリースをしています。その関係で全国ネットの整備工場がありますので、安心いただけると思います。また、車両保証責任はすべて高田工業株式会社がもちます。陸事への改造申請も出しますし、今回は5名乗りを2名乗りにしているわけですから、車輌重量のことなども、すべて当社の技術できちんとクリアーしています。


●>そんなムエットのお値段は車両価格プラス119万8,000円ですが、この設定は率直にいかがでしょう?

鎌>車好きの方に内容をみていただければ、これがどんなに抑えた価格であるか分かると思います。
ブリジストンさんからは発売前のホイールを提供してもらったり、元町の有名ブランドがカーアクセサリーを製作したりと、細部までこだわったつくりになっているので、これを個人でやろうとしたら、とてもこんな金額ではできないでしょうね。

しかし、作り手の自己満足で終わっては意味がありません。ムエットは乗っていただきたい車ですから、適正な販売金額だと思っています。


●>それにしても、横浜市の会社だけで車ができるとは、すばらしい産業集積地ですよね。しかし、この日本初と言っていい試みに、ご苦労はありませんでしたか?

鎌>それはもう!まず、会議の開催ひとつとってみても、全員がそろうなんて、難しいわけです。
しかも、それを粘り強く調整してくれた横浜市職員の方の姿勢を見て、官がここまでやるんだ、と驚きました。
そして集まれば、それぞれにその業種での一家言があるわけですから、まぁ色々と(笑)。
本当に2年前に設立してムエットを発表するまでに何度会議をしたかわかりません。
しかし、それだけの苦労をした甲斐が、これから出るんだと信じています。

●>なるほど!では、hamawaza第2弾は何が飛び出すんでしょう?

そうですね、私たちも横浜の企業が集まればこんなにすばらしいことができるんだ、そしてそれが今回「ムエット」という形になったということは、大きな財産だと思っています。
しかし、hamawazaは企業の集まりでもあるわけです。消費者に受け入れてもらえなければ意味がありません。
今回のムエットの販売状況を見て、第2弾を考えていきたいと思っています。


           地域コラボの優位性
ムエットの特徴として、面白いと感じたのは、ハード面だけでなく、横浜市内のサービス利用も可能という点だ。
ETCの搭載により、横浜市内の駐車場やSSのキャッシュレスや、サービス特典として、横浜の老舗ホテルである、ホテルニューグランドの飲食割引や特定駐車場の料金割引が受けられる。まさにコラボレーション事業ならではの特典といえるだろう。


今回取材をして、改めて「車」というのは企画から製造、そして販売まで、多種多様な職種の協力がないと成り立たないということ、そしてそんな車造りのベースにあるものは「夢」であることを強く感じた。

ちなみに、鎌倉顧問のご趣味をうかがったところ、「ドライブですね!」と即答が。運転は何時間していても苦にならないとか。
お住まいは東京都だそうだが、仕事でもプライベートでも横浜にはしょっちゅうきていて、なまじな地元民より詳しい。「車」と「横浜」に対する熱い思いが、今回のムエットにこめられている。

ご承知のとおり、中古車販売は5年連続して前年を下回っている厳しい状況だ。
低年式車(5年落ち以上)が70%も占める中で、消費者の購買意欲を刺激していくには、仕入れた車に多少の化粧を施して並べて売るのではなく、消費者ニーズに応える形で商品を創っていくことが望まれる。つまり、新しい市場を創造していくことが必要ということだ。
そうした意味でも、ムエットは中古車業界に新しい方向を示したものとして、注目したい。




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