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8月の軽自動車販売台数でスズキが2年9か月ぶりにシェアトップを奪還した。海外事業に経営資源を振り向けるため軽市場でのシェア1位にはこだわらない姿勢を示してきたスズキだが、ホンダの躍進を目の当たりにして再び国内強化に動き始めたようだ。
スズキの8月の軽自動車数は前年同月比1.4%増の4万4369台となり、ダイハツ工業の4万3381台を抜いて1位だった。市場シェアは29.7%となり、ダイハツ工業の29.0%を0.7ポイント上回った。スズキが単月でダイハツのシェアを上回るのは2010年11月(35.1%)以来のこと。乗用車のシェアが29.1%と、ダイハツの27.8%に1.3ポイントの差をつけた。スズキは軽トラック「キャリイ」も9月20日に全面改良して発売し、貨物車でも今後、シェアトップを奪還する可能性が高い。
スズキが国内のテコ入れに動いているのは、ホンダや日産自動車といった大手メーカーが軽自動車を強化していることへの危機感が強まっているためと考えられる。同じ軽専業メーカーのダイハツと競い合っているうちは、ライバルの後塵を拝していても、まだ余裕があったが、ブランド力や技術力に勝る登録車のメーカーと競うことは別次元の戦いになる。
特にホンダの軽への力の入れようは軽メーカーを震撼させている。「フィット」という強力なヒット車の技術を軽自動車に盛り込み、室内の広さや走行性能で高い評価を得ているからだ。しかも、従来のようにグループ会社の八千代工業に生産を委託するのではなく、フィットを生産している鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)での内製。ホンダの伊東孝紳社長は国内生産100万台の維持を方針として掲げ、このうち50万台を軽にしたいとの考えも示していて、メーカー、販売店が一体になって軽の強化に動いている。
実際、ホンダの軽市場でのシェアは、スズキ、ダイハツに続く第3位の座が定着してきた。8月のシェアは19.1%、1〜8月は19.5%と、4位の日産を大きく引き離している状況だ。今年も新型軽の発売を予定しており、車種展開の拡大でさらなる販売拡大を目指す方針だ。ホンダが急速に軽市場での存在感を増してきたことが、スズキの目を改めて国内市場に向けさせている。
軽市場でのホンダの台頭に、スズキ以上に危機感を抱いているのがダイハツだ。ダイハツは2013年も軽市場シェア1位となる可能性が高いが「技術力では、軽メーカーは登録車メーカーにはかなわない」(ダイハツ関係者)。ホンダが軽を強化することによって、ダイハツの存在感が薄まっていくとの懸念が社内でも強まっている。
海外での事業を縮小していることも、ダイハツの今後の成長性に懸念を抱かせる。インドネシアやマレーシアで生産が好調とはいえ、大部分はトヨタブランドで販売されており、海外でのダイハツブランドの存在感は高くない。ダイハツは2000年代初めにインドへの参入計画を取り下げ、欧州市場からも撤退した。トヨタの子会社になったことがじわじわとダイハツの自立性を削いでいる。
ただ、ダイハツやスズキにとって救いになりそうなのは、ホンダが9月に新型「フィット」を投入したことだ。特にフィットハイブリッドは燃費が36.4km/lと、ライバルのトヨタ「アクア」の35.4km/lを上回り、国内最高燃費を実現。価格も163万9000円からと、アクアを下回り、買い求めやす価格を設定している。「アコードハイブリッド」同様、初期受注が好調で、年内一杯は販売店の戦力がフィットに向かうことは確実だ。その分、軽は販売の勢いが弱まる可能性がある。
とはいえ、軽自動車はいまや国内新車市場の4割を占め、登録車からの乗り換えが急速に進んでいる。軽を生産するのはスズキ、ダイハツ、ホンダ、三菱自動車の4社だけとなったが、逆に乗用車メーカー全社がスズキやダイハツからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受ける形で市場に参入している。今年の軽市場も200万台という高水準になることが予想されており、顧客獲得競争がさらに激しくなりそうだ。
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