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自動車産業の業績、円高修正で急回復 自動車メーカーの業績が円安によって急回復している。乗用車メーカー8社の2013年4〜9月決算は、売上高が全社で増加、営業利益は6社、当期純利益は7社が増加した。昨年同期に比べ為替が20%以上の円安になったことによるもので、肝心な販売台数は、トヨタ、日産、ダイハツ、スズキが減少した。為替相場は10月以降も円安で推移しており、全社が増収、営業増益を見込むが、国内には来期以降、懸念材用もある。昨年まで1ドル=80円を下回る超円高に苦しんでいた自動車産業が息を吹き返している。売上高はトヨタ自動車が前年同期比14.9%増の12兆5374億円、ホンダが同21.6%増の5兆7243億円、日産自動車が同17.0%増の4兆7562億円となるなど、全社が2桁の増収だった。円安の恩恵を特に受けたのは、輸出が多いマツダや富士重工業で、売上高はマツダが前年同期比22.6%、富士重が同25.3%の大幅な増加だった。 営業利益も輸出の多いメーカーほど増加した。最も増加幅が大きかったのがマツダで、前年同期比544.5%増。次いで富士重が同248.4%増だった。トヨタも国内生産の半分を輸出しているため、営業利益は同81.0%と3番目に高い増加幅だった。 1円の変動で年間の営業利益がどれ位変動するかを示す為替感応度は、対ドルでトヨタが400億円、日産が150億円、ホンダが130億円、富士重が85億円、スズキが40億円、マツダが25億円、などとなっている。営業減益となった日産は、急速な海外展開のしわ寄せからか、リコール費用や販売費が膨らみ、円安や購買コストの削減効果を相殺してしまった。日産のカルロス・ゴーン社長は、2016年度に世界シェア8%を目指す中期経営計画「日産パワー88」を取り下げないことを強調しているが、業務の執行に問題があるとして、志賀俊之最高執行責任者(COO)を解任した。この人事には、ゴーン氏は自らの経営責任を棚に上げている、との批判がある。志賀氏は業務のすべてを監督する立場として責任を取らされた形だ。 上期決算の好調さを受け、トヨタ、マツダ、富士重、ダイハツは通期の売上高、営業利益見通しを上方修正。営業利益はスズキも上方修正した。トヨタの見通しは売上高が25兆円、営業利益が2兆2000億円、当期純利益が1兆6700億円と、過去最高だった07年度に迫る。当時は為替が1ドル=114円という超円安の環境だったことを考慮すると、リーマンショック後の円高に直面し、仕入れ先を巻き込んで、トヨタがどれだけ原価低減にまい進してきたのかが分かる。 今期は円安に押し上げられる形の自動車メーカーの業績だが、販売台数に目を転じると、楽観的になってばかりもいられない。トヨタの上期世界売上台数は、前年同期比1.1%減の446万8千台。北米や、オセアニア、中近東などが増加したが、日本、欧州、アジアで減少した。通期見通しは前年度比2.6%増の910万台(トヨタ・レクサスブランド)を据え置いたが、新車購入補助の終了で需要が落ち込んでいるタイの市場や、日中関係の悪化で日本車の販売が落ち込んだ中国でどれだけ回復するのか、など不安要素が残っている。 加えて14年度以降は日本市場の動向にも注視が必要だ。消費税率が14年4月に5%から8%に引き上げられることが決まり、かねて消費税との二重課税と自動車業界が主張している自動車取得税の取り扱い次第では、新車市場を冷え込ませかねないからだ。 自動車取得税について自動車業界は、消費税率8%への引き上げ時に、現在の5%(軽自動車は3%)から一律3%に引き下げ、さらに消費税率10%への引き上げ時点で廃止することを政府に求めている。これが確実に実行されなければ、新車販売台数を今以上に落ち込ませる可能性が高い。 一方、地方税収である取得税の代替財源として、総務省や財務省は軽自動車税の引き上げを目論んでいる。車体課税の中で帳尻を合わせよとする税務当局に対し、自動車業界は「弱い者いじめ」(スズキの鈴木修会長)などとして、一斉に反発している。車を必要とする地域では、税金が上がるからといって車を手放すわけにはいかない。軽自動車税の引き上げは、消費税率引き上げに加え、家計を圧迫する要因になり、弱い者いじめと言われても仕方がないが、議論がどう転ぶか、まったく予断を許さない状況だ。 円安に潤う自動車業界だが、国内では消費税率引き上げの決定に伴い、自動車産業は岐路に立っていることは間違いない。国内の需要を冷え込ませないよう、好業績に浮かれることなく、自動車メーカー全社が力を合わせることが必要だ。 |
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