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スズキが8年ぶりに首位を奪還 ダイハツ工業が2007年から7年間にわたって首位を独占してきた軽自動車市場に異変が起きた。14年の販売ではスズキが06年以来、8年ぶりにシェア1位に返り咲いたからだ。2社のシェア争いの激しさは、暦年で227万台と過去最高に達した軽自動車の新車販売台数にも表れた。全国軽自動車協会連合会が5日発表した14年の軽自動車新車販売台数は、スズキが前年比13.9%増の70万9083台、ダイハツが同7.0%増の70万6288台と2795台差でスズキが上回った。市場シェアはスズキが31.2%、ダイハツが31.1%とわずか0.1ポイント差だった。 スズキとダイハツは、言わずと知れた軽自動車の2大メーカーだが、このところ、シェアではダイハツが安定的に首位を獲得してきた。スズキは、インド、東南アジアといった海外事業に目を向け、国内では「ワゴンR」で車名別販売台数での1位にはこだわり続けたが、市場シェア1位と死守するという姿勢は見せなくなっていた。 スズキの目の色が変わり始めたのは、ホンダが、軽自動車強化を明確に打ち出してからだ。ホンダは軽自動車の新シリーズ「Nシリーズ」を11年に打ち出すと同時に、それまで八千代工業に委託していた軽乗用車の生産を、鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)での内製に切り替えた。自社生産となった以上、販売政策にも力が入るのは当然のことで、あっという間に年間40万台以上の軽を売るメーカーになってしまった。 ホンダの本気度に、より脅威を感じたのは、スズキよりもダイハツだったかもしれない。整備工場での販売が8割と、全国に強い販売基盤があるスズキに対し、ダイハツはディーラー主体の販売戦略をとっており、どちらかと言えば、商品性でユーザーの支持を勝ち取ってきた。「ブランド力で勝るホンダがついに本気になってしまった」(ダイハツ関係者)というのがダイハツの本音だ。 ホンダは「国内市場の半分は軽になるかもしれない」という伊東孝紳社長の陣頭指揮の下、国内事業の存続を賭けて、軽に大幅にシフトした。それまで生産は八千代に任せていたとはいえ、商品の企画・開発は自社で行ってきており、生産技術のノウハウもある。軽を開発したことも作ったこともない日産自動車が軽市場に参入するのとは訳が違う。 スズキが再び、軽市場シェア1位をめざし、巻き返しを本格化させたのは、14年4月以降だ。同月にダイハツを抜いてシェア1位に返り咲き、以後、2社のデッドヒートが繰り広げられた。スズキは単月で4月から11月まで1位を獲得。1月からの累計では、10月に同率に並び、11月に逆転した。12月はダイハツが単月で前年同月比39.6%増という猛烈な追い上げでスズキを上回ったが、間に合わず、年間の首位を明け渡した。 2社の激烈なシェア争いは、市場全体に影響した。14年の新車販売台数は登録車が前年比0.8%増の329万98台となった一方で、軽自動車は同7.6%増の227万2789台と、前年を16万台上回った。消費増税前の駆け込み需要に伴う反動減と、景気回復の遅れで客足が鈍っているという中での大幅増は、激しい販売競争の結果だ。軽が牽引し、総市場は前年比3.5%増の556万2887台と3年連続で増加。軽の割合は40.8%と、初めて4割を超えた。 ただ、軽自動車の場合、メーカーから割り当てられる販売目標を達成するため、販売会社は、自社名義で新車を登録する「自社登録」という手法が常態化している。この点は登録車との売れ行きの差の要因として考慮しなければならない。とはいえ、軽の需要が高い現状では、この手法もあまり問題視されていない。 軽はドライバーの高齢化に伴うダウンサイジングや、地方の生活の足として、これからも一定の需要が見込まれる。最近の新型車では、自動ブレーキや電動化など、安全性や燃費性能にも小型車並みの技術が投入されるようになっている。取り回しのしやすさと、安全性・経済性のバランスの良さで、移動手段としての価値はますます高まると見られ、今後も2社のシェア争いに注目が集まる。 盛り上がる軽市場に対し、停滞感が否めないのは登録車。ハイブリッド車のみに人気が集中し、特定のメーカーに売れ行きが集中している。ハイブリッド車を全面的に打ち出しているのはトヨタ自動車とホンダのみで、戦略的に、ハイブリッドに力を入れていない日産自動車などのメーカーの落ち込みが、じりじりと進んでいる。ただ、マツダがクリーンディーゼルを国内に投入するなど、新しい動きも見えており、登録車が巻き返すかどうか15年の市場動向が注目される。 |
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