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2015年春闘、自動車・部品とも2年連続ベア 2015年の春闘は、安倍晋三政権の「デフレ脱却、経済の好循環」の掛け声に応える形で、大企業が2年連続のベースアップ(ベア)に踏み切った。自動車産業でもトヨタ自動車、日産自動車などが昨年を上回るベアを回答し、賃上げムードを作った。景気回復のためにはこの流れを中小、零細にまで広げる必要があるが、輸出型の大企業にとってプラスの円安が、内需依存型の中小企業にとってはエネルギー費や素材費の上昇を招いているだけに見通しは厳しそうだ。春闘は3月18日に集中回答日を迎え、大企業で賃金引き上げの回答が相次いだ。定期昇給とは別に、給与全体の底上げを意味するベアはこれで2年連続。経団連の榊原会長が安倍政権の経済政策に賛同する形でベアを容認したこともあり、自動車・電機の大手製造業、サービス、金融といった分野にも広がった。 春闘相場をリードすると言われる自動車産業では、メーカー労組が揃って6000円のベアを要求した。 これに対し、トヨタ自動車が昨年の実績を1300円上回る4000円を回答したほか、日産自動車はトヨタを上回る5000円を回答した。このほかのメーカーも全社が2年連続のベアに踏み切った。ダイハツ工業、スズキの軽自動車2社は1600円、大型車メーカーもいすゞ自動車が3800円、日野自動車が3000円を回答した。自動車メーカーはリーマンショック以降、固定費の増加につながるベアには慎重だったが、円安で今期最高益を上げるトヨタが先陣を切る形で賃上げの流れが広がった。 自動車メーカーでは、第二次安倍政権発足からの円安によって業績の改善が続いている。リーマンショック後の超円高で海外への生産シフトを急速に進めたが、技術力を維持するため、トヨタは年間300万台、日産は100万台の国内生産維持を維持する方針だ。この台数を維持しようと、工場の合理化、原価低減の努力を進めてきた成果が、円安によって大きく出ている。2年連続でのベア実施には、円安による業績改善が続いていることが背景にある。 部品メーカーでもデンソー、アイシン精機、豊田自動織機といったトヨタグループの大手が3000円、日本精工やNOKも3000円台と2年連続のベア回答が相次いでいる。トヨタによる相場引き上げにより、1次、2次の部品メーカーでも、昨年以上の回答を引き出せている状況だ。 ただ、この先、3次、4次の中小にまで賃上げが波及するかは不透明だ。トヨタは円安で得た利益を中小にも還元する狙いで2014年度下期の部品価格改定を見送ったが、他の自動車メーカーがトヨタと同様の動きをしている形跡は見られない。大手・中堅でもトヨタ系以外は、厳しいコストダウンにさらされていることに変わりはない。 海外に拠点がなく、内需に依存する中小製造業の経営環境は益々厳しい。国内市場の縮小、輸出の減少による自動車生産の減少が止まらないためだ。一部の自動車メーカーでは、円安にともなって、中国から調達していた部品を国内調達に戻す動きが見られるものの、自動車生産そのものは減少傾向にある。仕事量の減少に加え、円安によって材料価格や電気代の上昇が利益を圧迫している状況にあり、中小は賃上げできる環境にはないのが実情だ。 昨年・今年と、円安で利益を得た大企業が政府主導のもとで実施した賃上げだが、逆に円安で利益を圧迫される中小の厳しい環境を考えると、大企業の動きがそのまま波及することは考えにくい。中小製造業が健全であることが日本のものづくり、ひいては経済を支えている。需要の先行きを占う意味でも、"官製ベア"の行き着く先が注視される。 |
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