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米NHTSA、タカタに
硝酸アンモニウムの使用禁止を命令


米NHTSA、硝酸アンモニウムの使用禁止をタカタに命令

インフレーター  米運輸省道路交通安全局(NHTSA)がタカタに対し、エアバッグ用インフレーター(ガス発生装置)への硝酸アンモニウムの使用を禁止する同意指令を発令した。これを受けて、タカタのエアバッグを採用してきた自動車メーカー各社がタカタ製インフレーターを使わない方針を表明した。世界で5千万台以上のリコールに至ったタカタ製エアバッグ問題だが、原因と疑われている物質の使用をタカタがやめることにより、新たなリコールを生む芽は摘み取られることになりそうだ。
 硝酸アンモニウムは火薬の一種で、タカタが自社のエアバッグに採用してきた。他のエアバッグメーカーは別の火薬(硝酸グアニジン)を使用したインフレーターを使っているが、タカタはインフレーターを小型化できるという理由でこの物質をガス発生剤として使用してきた。硝酸アンモニウムは唯一の欠点は吸湿性であり、インフレーターの設計や製造では湿度管理をしっかり行うことが求められる物質でもある。
 同社は硝酸グアニジンを使ったインフレーターも他社から購入しているものの、ほとんどが自社製インフレーターを使ってきた。添加剤によって相安定化した硝酸アンモニウムを使っており安全だと主張してきた。
 だが、米国やマレーシアで死者を出すほどの騒ぎになったエアバッグの異常破裂は、すべてタカタ製エアバッグであり、硝酸アンモニウムを使ったインフレーターを搭載したもの。異常破裂の真因はまだわかっていないが、硝酸アンモニウムが原因と疑われているのはこのためだ。
 NHTSAの命令内容は「2018年末までに、乾燥剤を含まない相安定化硝酸アンモニウムを使用したタカタ製インフレーターの製造・販売を一定の計画に従って段階的に中止すること、同インフレーターの供給について新規の契約を行わないこと」としている。タカタはこの命令を受け入れるとして11月4日に都内で高田重久社長らが出席する記者会見を開催し、今後は硝酸グアニジンに切り替えると表明した。
記者会見写真米NHTSAはまた、米国民を不安に陥れたとして、タカタに対し7千万ドル(約85億円)の民事制裁金を課すことを発表。タカタは20年10月末までに6回に分けて支払うことで合意した。さらに、命令に違反した行為が発覚した場合は、別途最大1億3千万ドル(約156億円)の民事制裁金を課すことも発表した。
 硝酸アンモニウムの使用禁止命令が出たことで、今後、焦点になるのは、タカタのエアバッグ事業の行方と、世界で5千万台以上に膨らんだリコール費用を誰がどれだけ支払うのかという責任分担の問題だ。
 国内初のエアバッグをタカタと共同開発したホンダは、原因調査でのタカタの情報提供姿勢について、「インフレーターのテストデータを誤って伝える、または不適切な報告を行っていたと思われる情報を認識した」とし、「タカタによるこのような行為に大変困惑している」と不信感をあらわにしている。自動車メーカーとサプライヤーとの間がこのような状態になっている背景には、リコール費用の分担の問題があるためだと見られる。メーカーとサプライヤーとの間では、リコールの責任の所在をめぐって裁判になっている事例もあり、巨大化するリコールが経営上の大きなリスクになりつつある。
 ユーザーの安全を考えれば、まずはリコール対象エアバッグの改修率を上げることが必要だ。しかし、交換用インフレーターの生産が間に合っておらず、国内でも日産「エクストレイル」の助手席エアバッグが事故の際に異常破裂し、飛び散った金属片で女性がけがを負うという初めての事故が発生した。エアバッグは女性の命を救ったかもしれないが、金属片の当たりどころによっては失明など、より深刻なけがに至った可能性もある。国内の改修率は対象の978万7572台のうち、10月末時点で48.4%と半分以下にとどまっており、まずは早急に改修率を高めることが必要だ。





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