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日産 無資格者による完成検査、1979年から 国交省はタスクフォース立ち上げ
無資格者による完成検査問題で日産自動車が国土交通省に提出した調査報告書によると、従業員の証言から無資格検査が遅くとも1979年から行われていたことが分かった。内部監査や国の監査の際には隠ぺいも行われていたことや、法令違反であるだけでなく、日産という企業の体質に根深い問題が潜んでいることをうかがわせる。一方、国土交通省は今回の事態を受け、完成検査を確実に行ってもらうための検討会を11月28日に立ち上げた。検査制度の存在意義に切り込むか注目される。
日産での無資格試験が発覚したのは、9月18日に日産車体湘南工場で国土交通省が臨時で行った立ち入り検査がきっかけだった。ここで国交省は定期監査では見つけることができなかった無資格検査を発見。続いて追浜、日産自動車九州、日産車体九州での立ち入りでも無資格者による検査を確認した。国交省の指摘により、日産が行った調査では、4工場に加え、栃木工場と日産車体子会社であるオートワークス京都でも無資格検査を行っていた(日産は、その後、京都では無資格検査がなかったことを確認)ことが分かった。 日産は、各工場に完成検査員以外は完成検査をしないよう徹底したことで対策を取ったとし、不正な完成検査が行われていた車両のうち初回車検を受けていない116万台をリコールした。だが、製造現場ではその後も無資格検査が続いていたことが内部通報で発覚。10月19日には、2度目のリコール約3万4000台を発表するとともに、再発防止策の練り直しを余儀なくされた。 第三者による調査チームの報告書で明らかになったのは、日産の無資格検査がかなりの長期間にわたって行われてきたという実態だ。追浜では遅くとも1989年から、さらに栃木では従業員の証言から1979年には無資格者が検査を行っていたことが分かった。完成検査票に押印する完成検査員の判子の貸し借りが行われていたほか、監査の当日は無資格者に完成検査を行わせないといった隠ぺいも行われていた。多くの完成検査員が、無資格者による完成検査が社内基準や法令に違反することを認識していたという。 日産の問題発覚を受けて、国交省は全てのメーカー、インポーターに調査報告を要請。この中で、スバルでも30年以上にわたり無資格検査が行われてきたことが分かった。同省は実態を重く見て、「適切な完成検査を確保するためのタスクフォース」を立ち上げ、28日に初会合を開く。メーカーによる完成検査の確実な実施や不正防止、国交省によるチェックの実効性を高める方策を有識者や弁護士を交えて議論し年度内に方向性をまとめるという。 日産・スバルの件では、完成検査が日本の型式指定制度に基づくもので、この検査で欠陥が発見されることはほとんどなく、また輸出車もなんら問題ないという事実が話題になった。自動車メーカーの技術が向上し、社内で認定した完成検査員が検査していなくても、何の問題もないのが実態だ。国際競争力の観点からも、時代の変化に照らして、完成検査は必要なのかどうか。タスクフォースでは、そこまで議論が深まることへの期待もある。 翻って、日産がなぜ、このような不正を長きにわたって続けてきたのかは、企業統治という観点でより深刻だ。報告書は「大きな原因は、そもそも日産本社関係者および車両工場幹部の完成検査制度に関する意識が薄い点にあった」と指摘している。完成検査員は国土交通大臣に代わり、自動車の保安基準適合性を審査する「最後の砦」であり、「役員をはじめとする日産本社関係者および車両工場幹部の責任は極めて重い」と結論付けた。 日産は国交省に提出した報告書の中で、「過去より、本社および工場管理者層において、完成検査員の人員計画が重要視されたことはなく、一部完成検査員の確保にしわ寄せが起きやすかったことは容易に想像できる」と反省の弁を述べた。 だが、なぜ、日産の役員層でこのように完成検査を軽視する風潮が生まれたのかまでは、調査期間が1カ月半という短期間だったこともあり、報告書では踏み込んでいない。不正が少なくとも38年前から始まっていたことを考えると、ゴーン流の経営改革が直接の原因とは言えない。 報告書は工場の自立性を重んじ、一人ひとりの創意工夫を評価する文化は日産の強みとする一方、「現場が工夫して何とか目標を達成するだろう」と会社が考えることにつながるのであれば、再び同様の問題を引き起こしかねないとしている。 西川廣人社長は自身の経営責任について「現状からの挽回に尽きる」と会見で繰り返した。そして「悪しき週間を断ち切る良い機会を頂いた。もう一度チャンスを頂きたい」と訴える。経営と現場が一丸となれるのか、西川氏の統率力が試される。 |
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