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自動車減税が決定。ユーザーの負担は軽くなったのか?


自動車減税が決定。ユーザーの負担は軽くなったのか?

 2019年度税制改正大綱で自動車税の恒久減税が決まった。自動車業界にとって悲願達成といったところだが、対象は19年10月1日以降の新規登録車に限定され、使用中の車は対象外という想定外の結果になった。しかも、税収減を補うため、代わりにエコカー減税を縮小して財源を確保するという。これで需要は活性化するのか。
 自動車業界は消費税が8%から10%に引き上げられる19年10月をターゲットに据え、19年度税制改正を車体課税の軽減・簡素化を実現するための正念場としてきた。 自動車税の引き下げとともに、自動車取得税の着実な廃止、自動車重量税の「当分の間税率」の廃止などを求めた。
 自動車税は自治体の収入減となる地方税の一つだ。減税を要望すると、税収中立の観点から必ず代替財源を求められるという繰り返しだった。日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は、 「国内需要を活性化することによる自動車産業の競争力向上も大事だし、地方も大事。もう車対地方という対立軸で見ることはやめてほしい」と当局に苦言を呈してきた。そして、「日本の自動車ユーザーの税負担は世界一高いことを認識してほしい」と訴えてきた。
一方、政府にとって19年度税制改正は、消費増税前の駆け込み需要と反動減を抑え、なるべく需要を平準化することが最重要課題だった。このため、決定した大綱は、自動車に限らず、全般的に需要平準化策の色合いが濃いものになった。
 車体課税の改正は、自動車税を年間で最大4500円軽減することが柱になっている。排気量別に、1000cc以下は年間で現行の2万9500円から2万5千円に、1000cc超1500cc以下は3万4500円から3万500円に、1500cc超2000cc以下は3万9500円から3万6千円に、2000cc超2500cc以下は4万5千円から4万3500円に、これ以上の排気量の車は一律1000円の軽減になる。ただし、対象は19年10月1日以降の新規登録車で、業界が求めてきたユーザー負担の軽減、というより、需要平準化策と言えるものだ。
 しかも、減税分の穴埋めとして、重量税や取得税に適用されているエコカー減税が縮小される。取得税は10月の消費増税とともに廃止されることが決まっているが、4〜9月までの期間、20年燃費基準+30%達成以下の燃費の車は軽減税率を縮小され増税になる。重量税の免税・減税も電気自動車や極めて燃費の良いハイブリッド車に限ることにし、20年燃費基準を80%過達している車両でも増税になる。
 一方で消費増税前の駆け込み需要を抑えるため、取得税廃止の代わりに導入されることがすでに決まっている「環境性能割」の税率を20年9月までの1年間に限り、本来の税率(0〜3%)から1%軽減する。ユーザーの負担軽減と消費増税対策を両立しようとしたことで、分かりにくさに拍車をかけたような税制となってしまった。
 駆け込み需要による景気の腰折れを何としても防ぎたい政府だが、実際にはすでに駆け込み需要が始まっているという見方がある。12月の販売は登録車が3カ月ぶりに前年同月比で減少したが、軽自動車は6カ月連続で増加した。業界では「足元の販売好調は駆け込み需要によるものだ」(メーカー幹部)とみている。
 19年の市場見通しは消費増税がどう影響するかが最大のポイントになる。税率が5%から8%に上がった14年は、需要期である年度末に引き上げ時期がぶつかったため、大きな駆け込みが発生した。今回は引き上げ幅が2%と前回よりも小さいことに加え、増税のタイミングも10月であるため、前回ほど需要が集中することはないとみられている。自動車業界にとっては増税による需要の急激な増加や減少は避けたいところで、その意味では、今回の税制改正は一定の効果があるとみられている。
 その一方で、自動車業界や日本自動車連盟(JAF)が求めてきた自動車ユーザーの負担軽減は実現したのかというと疑問だ。JAFは「自動車税減税が10月1日の消費増税後に購入される車に限られ、現在保有している車に適用されず残念だ」というコメントを発表した。さらに、取得税の付け替えとも言える環境性能割の課税が始まり、重量税のエコカー減税は縮小する。これでユーザーの負担は軽減されるのか。
 昨年の新車販売台数は軽自動車が牽引して前年比0.7%増の527万2067台と、2年連続で前年を上回った。10月に消費増税が控えていることを踏まえれば、19年は9月までは比較的高水準の需要が見込まれることになる。しかし、自動車産業にとって肝心なのはその先だ。
 複雑かつ世界的に見て重いままの車体課税が需要にどう影響するのか。それ次第では日本の自動車産業が国際競争力を失っていく恐れもある。さらに注視すべきは政府が将来の税収対策として、走行距離に課税するという新たな案も模索し始めていることだ。これには業界も警戒感を示している。自動車業界は自動車ユーザーの負担軽減を引き続き求めていく必要がありそうだ。




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