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自動車産業にも広がる新型コロナウイルスの影響
自動車産業にも広がる新型コロナウイルスの影響
中国湖北省武漢市を発生源とする新型コロナウイルスの感染が世界に広がっている。日本では安倍晋三首相が2月26日、全国的なイベントについて「今後2週間は中止・延期・規模縮小などの対応をとるよう要請する」と表明。さらに翌27日には、全国の小中学校と高校、特別支援学校を臨時休校するよう求めた。企業は相次いでイベントや発表会、講演会、セミナーを中止または延期し、自動車業界でも影響が広がっている。いつ収束するか分からない新型ウイルスの影響がじわじわと広がっている。
中国・武漢発の新型コロナウイルスへの感染はブラジルでも確認され、南極を除く全ての大陸に感染が広がった。世界保健機関(WHO)は感染の広がりが「パンデミック」(爆発的感染拡大)と呼ばれる状態に至る可能性も示唆。不安の広がりによって各国の証券取引所では株価が軒並み大幅に下落。世界景気への不安から石油価格も大幅に落ち込んでいる。 政府は2月25日、対策の基本方針を示し、企業に在宅勤務や時差出勤を推奨するなどの方針を示した。さらに安倍首相は政府の専門家会議が示した「今後1〜2週間が急速な感染拡大を防ぐ瀬戸際になる」との見解を重視し、26日になって「今後2週間の大規模イベントの中止や延期をするよう要請する」と発表。企業や団体は予定していた展示会や講演会、セミナーなど、人が多く集まるイベントを相次いで中止・延期している。 自動車業界でも「東北モーターショー」が早々に中止となったほか、「大阪モーターサイクルショー」「東京モーターサイクルショー」の中止が決まった。また、アフターマーケット向けの総合展示会「インターナショナル・オートアフターマーケットエキスポ」(IAAE)も来年3月に延期する。さらに特定整備制度の4月1日の開始を前に、各地で予定されていた説明会も軒並み中止となるなど、あらゆる面に影響が広がっている。海外では3月に開催予定だったジュネーブモーターショーも中止になった。 自動車メーカーでは在宅勤務や混雑時を避けた時差通勤を推奨する対応に出ている。ホンダは都内で働く従業員を原則的に在宅勤務とした。マツダは在宅勤務制度の利用制限を一時的に撤廃した。トヨタ自動車や日産自動車、三菱自動車も在宅勤務制度の利用を社員に推奨している。 メーカー各社の施設も休館が相次いでいる。トヨタのメガウェブ(東京都江東区)では3月2〜15日、ホンダは東京・青山の 本社ウェルカムプラザを2月29日〜3月13日まで休館。日産自動車は横浜市西区の日産グローバル本社ギャラリーでのイベントを3月末まで自粛すると発表した、このほかにもメーカー各社が自社の展示施設や自動車博物館を一時的に休館したり、大勢の人を集めて行うイベントを行わないなどの措置をとる。 自動車メーカーの生産にも影響が出始めている。中国からの部品供給が滞り、生産できない機種が出てきている。メーカーでは該当車種の生産を遅らせるなどの措置を取っている。さらに国土交通省は車検有効期間の延長を決めた。2月28日〜3月末に期限を迎える車検有効期間を4月末まで延長する。年度末のこの時期は例年、不特定多数の申請者が陸運支局の窓口などに訪れる。人が多く集まる場所では感染リスクが増大するとして対策するという。 2月27日に発表された乗用車メーカー8社の生産・販売・輸出実績によると、世界販売は全社がマイナス、世界生産は完成検査問題の影響で前年同月の水準が低かったスバルを除きマイナスだった。ただし、1月の実績には新型コロナウイルスの影響はほとんど出ていない。影響が本格的に表れる2月以降は、世界生産、世界販売ともに、さらに減少幅が拡大するとみられる。 市場への影響も懸念される。日本自動車販売協会連合会が参考値としてディーラー8社に聞いた2月の受注台数は前年同月比17.1%減と2割近く落ち込んだ。同月の新車販売台数(登録車・軽自動車合計)は前年同月比10.3%減の43万185台と1月の11.7%減に比べマイナス幅はやや縮小したが、感染拡大への不安感から購買意欲が落ちていることも考えられ、3月の販売動向が注視される。 米ゴールドマン・サックスは2020年の新車販売台数を従来予想の前年比0.3%減から3.5%減に下方修正した。減少幅は08〜09年の世界金融危機並みという。さらにトヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダ、三菱自動車の5社の1〜4月の生産台数は合計58万台の減産になり、中国での5社の利益は合計1700億円の減少になると試算した。中国での2月の販売はトヨタが前年同月比7割減、ホンダは85%減だった。新型ウイルスの発生源である中国を中心に自動車産業が打撃を受ける。 米国立衛生研究所とテキサス大の分析によると、新型コロナウイルスの感染力は02〜03年に広がったSARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスの10〜20倍という。いつ収束するのか分からない新型ウイルス禍。各国による入国制限など人の移動にも制約が出始めており、世界経済全体に深刻な影響が及ぶ恐れが出てきた。 |
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