Motown21トップ > 話題を追って > 業界@info |
|
菅政権がガソリン車販売禁止へ
菅義偉首相が所信表明演説で打ち上げた2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ宣言で、自動車がいきなり矢面に立たされている。30年代半ばまでにガソリン車販売を事実上、禁止するという政府方針が報道されたからだ。車の電動化によって世界に狠γ坐猫瓩了兩をアピールしたい政府の狙いが透けて見える。 日本は15年の 地球温暖化防止パリ協定 に沿って、30年までに温室効果ガス排出を13年度比で26%削減する目標を掲げている。その一方、排出ゼロの目標時期を明言せず、「温暖化対策に後ろ向きだ」と NGO などから批判されてきた。 ところが、安倍晋三政権を引き継いで9月16日に発足した菅首相は10月26日の所信表明演説で、新型コロナウイルス対策と経済の両立、デジタル社会の実現などと並び、「 グリーン社会の実現 」を掲げ、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするいわゆるカーボンニュートラルを50年までに達成すると突然、表明した。原子力発電所の再稼働が困難な日本でカーボンニュートラルを達成することは極めて難しい。しかし、菅首相は再エネの拡大を成長戦略の柱と位置付け取り組む方針を示した。
東日本大震災によって 東京電力福島第一原子力発電所 が事故を起こして以来、日本の電源構成は火力が中心だ。経済産業省によると18年度の電源構成は77%が火力で、再エネが17%、原子力が6%となっている。一方、全国地 球温暖化防止活動推進センター によると、発電部門からの二酸化炭素(CO2)排出量は日本全体(11億3800万邸18年度)の40.1%と部門別第1位で、カーボンニュートラルの実現は発電部門の脱炭素なくして語れない。 そこへ、突然、降って湧いたように報道されたのが、30年代半ばまでのガソリン車販売禁止という政府方針だ。毎日新聞とNHKが報道し、通信社や日経、読売、朝日の各紙が後追いした。日経は経済産業省が自動車に温暖化ガスの排出枠取引制度を導入すると続報も打った。梶山弘志経産大臣は一連の報道について、「50年のカーボンニュートラルのためには車の電動化が不可欠。年内に具体的な計画案を策定する」と会見で述べ、ガソリン車禁止の報道を否定しなかった。菅首相も会見で「自動車から排出されるCO2のゼロを目指す」と明言。ガソリン車販売禁止が規制事実化しそうな勢いだ。 ハイブリッド車(HV)は認められると報道されており、ガソリンエンジンが完全になくなるわけではないが、ガソリン車が全面禁止になれば、特に軽自動車の存続は難しくなる。日本ではハイブリッド車が普及しているとはいえ、ガソリン車も燃費性能が向上しており、価格がリーズナブルなガソリン車はいまだに登録・軽合わせた新車販売台数の6割超を占めている(19年度)。特に軽では7割がガソリン車であり、ガソリン車全面禁止になれば、軽を中心に新車販売台数が落ち込むことも予想される。 全国地球温暖化防止活動推進センターによると、 自動車など運輸部門のCO2排出量は日本全体の17.8% で、発電、産業(25.0%)に次ぐ3位の排出量がある。運輸部門にはトラックやバスなどのディーゼル車や天然ガス車が含まれているが、政府の方針は、稼働率の高い事業用の車には一切触れず、乗用車中心のガソリン車だけをターゲットにしている。いかにもアンバランスであり、国際的なアピールを狙ったものとしか見えない。 もっとおかしいのは、50年までのカーボンニュートラルに向けて一番重要なはずの発電段階でCO2削減をどうするのか、議論が進んでいない段階で、いきなり自動車だけを吊るし上げるかのごとく報道されていることだ。政府方針ではHVのほか、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を増やす方針というが、発電でCO2を減らさなければ、車をEVやPHVにしたところで意味がない。 自動車の温室効果ガス排出をめぐっては今年、 30年の乗用車燃費基準 が決まったがばかリだ。新燃費基準ではEV、PHVのエネルギー効率を燃料の採掘・発電段階から走行段階までのトータルで比較する、いわゆる 「ウェル・トゥ・ホイール」(油井から車輪まで) の考え方を導入する。走行中の排ガスがゼロであるEVでも、石炭を燃やして発電した電気で走るのでは ゼロエミッション と言えないからだ。ガソリン車、ディーゼル車、HV、PHV、そして 燃料電池車(FCV) と、さまざまな動力のバランスの良い活用を促し、多様な車の役割に配慮していく考え方がある。 欧州はEVを推進する一方で、大気中のCO2を使って合成燃料「 eフューエル 」を造る技術も同時に盛んになっているという。既存のエンジンを継続使用できるうえ、カーボンニュートラルを達成できるため欧州では注目度が高いという。 EVは電池材料に稀少金属を使う上、リチウムなど採掘でCO2を排出する。電池のコストが高く、地球上の車両を全てEV化するのは不可能と言われている。日本でもeフューエルの開発にもっと力を注ぐべきだという意見も専門家から挙がっている。 もっとも、日本の自動車メーカーはハイブリッド技術に頼りすぎる面もある。特にフォルクスワーゲンのディーゼル排ガス不正事件後は、欧州や米カリフォルニア州、中国といった国や地域のEV化推進に対し、日本勢は完全に後塵を拝している。トヨタは「ハイブリッド車も電動車であり、EVでも遅れていない」と強弁する。しかし、 テスラ の勢いをみれば、いつまでもハイブリッドに頼るわけにはいかないこともまた事実だ。HVで世界の電動化を先導してきたと言うのなら、EVにもそろそろ本気でキャッチアップする必要がある。 |
|
||
236-0046 罔羌絽羃√咲莪決タ5-4-21 TEL:045-790-3037FAX:045-790-3038 |
Copyright(C) 2005-2006 Tio corporation Ltd., All rights reserved. |