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日野と三菱ふそうの経営統合 裏にあるのは? カーボンニュートラルへの対応が急がれる自動車業界で大型提携が発表された。 トヨタ自動車と独ダイムラートラック(以下ダイムラー)は、それぞれの子会社である日野自動車、三菱ふそうトラックバスを経営統合すると発表した。2024年末までにトヨタとダイムラーが同割合を出資する持ち株会社を設立し、その傘下に日野と三菱ふそうを収める。日野とふそうという意外な組み合わせには、大型車メーカーが直面する課題とトヨタのお家事情が見える。 持ち株会社については名称、所在地、体制、協業の内容を協議したうえで24年3月期中に最終契約を締結し、24年中の統合完了を目指すという。新会社は東京証券取引所、名古屋証券取引所に上場する予定だ。日野と三菱ふそうは、新会社の完全子会社となる。それぞれのブランドは残し販売は分けるが、生産、開発、調達では協業する。両社の統合で、国内の大型車メーカーはいすゞ自動車・UDトラックス連合と日野・ふそう連合の2陣営に分かれることになる。 今回の発表でまず衝撃的だったのは、日野と三菱ふそうという組みわせだ。なぜなら、トヨタは自らが旗振り役となって、国内商用車連合、コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)を21年に立ち上げ、いすゞと日野の協業を促そうとしていたからだ。その枠組みがありながら、ダイムラーからの誘いを受ける形で日野を三菱ふそうと統合させる道を選んだのは、エンジン認証不正を起こした日野の経営悪化も背景にあると見られる。 日野は22年3月に国内向け中・大型トラックのエンジン認証不正が発覚し、生産・販売を一時停止。23年3月期の業績は3期連続の赤字となった。トヨタは01年に日野を子会社化し、以後、トヨタが歴代社長を送り込んできたが、そもそも乗用車と大型車ではビジネスモデルが異なる上、開発や調達の面でもシナジーを発揮しにくい。カーボンニュートラルへこれから多額の投資や変革が求められる中での不正発覚に、トヨタの佐藤恒治社長は「日野を支えるのは 限界」と30日の会見で話した。
ダイムラーは、旧ダイムラーが乗用車部門と商用車部門に分離して発足した大型車専業メーカーだ。販売台数は日野の2倍以上に当たる年間36万台と、中国メーカーを除くグローバルメーカーとしては世界一のシェアがある。日野を合わせれば50万台の規模になり、スケールメリットを生かした事業展開が可能だ。トヨタにしてみれば、日野をダイムラーに任せれば自らの負担は軽くなり、日野の再建の近道にもなるとの判断があったとみられる。
今や自動車業界の最大のテーマはカーボンニュートラル化だ。商用車も同じで、特に重量物を積んで長距離を走行する大型トラックはハードルが高い。乗用車や小型商用車は電気自動車(EV)化が可能だが、EVの最大のネックは電池の重さだ。距離を稼ぐために電池を積めば積むほど車体が重くなり、肝心の荷物を詰めなくなるというジレンマがある。 今のところ最も有力な手段は、燃料電池(FC)かバイオ燃料などのカーボンニュートラル燃料を使うかだとされている。燃料電池車(FCV)の欠点は、コストの高さだ。運送事業者が導入できるだけの補助金がなければ普及は難しい。さらに水素供給インフラの整備も思うように進んでいない。トヨタはミライの市販を機に、水素ステーションの整備を手掛ける企業、JHyM(ジェイハイム)を燃料メーカーなどと立ち上げたが、思うようにステーションの整備が進んでいない。乗用車はEVの方が先に普及し始める可能性が出てきたこともあり、FCVはトラック、バスといった大型車での普及を目指す方針に切り替えている。
会見でダイムラーのマーティン・ダウムCEOは「将来のカーボンニュートラルに向け、水素こそが重要なソリューションだ。水素を促進する」と、トヨタとの提携の最大の目的が水素のインフラ整備とFCVの普及であることを強調した。ダイムラーはボルボと燃料電池量産のための合弁会社を21年に設立しているが、量産モデルの生産は20年代後半になる。一方、トヨタは米国ですでに大型トラックのFCVを走らせているほか、FCバスも国内で実用化している。つまり、FCやFCVの生産ではトヨタが一歩先を行っているということだ。提携によってダイムラーがトヨタの燃料電池技術にアクセスすることができるようになるメリットは大きい。 この提携は縮小する日本市場への対応という面もあるとされるが、その一方で、日野を連結対象から外すためにトヨタが虎の子のFC技術をダイムラーに売るという構図にも見える。ダイムラーの親会社、メルセデス・ベンツグループの大株主は中国の吉利汽車、北京汽車だ。気を付けなければならないのは、ダイムラーがかつてのような純粋はドイツ企業ではなくなっているということだ。水素の普及は世界の商用車メーカーが協力して取り組むべき課題だが、トヨタのFC技術がめぐりめぐって中国に流れる危険性もはらんでいる。 |
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