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トヨタ、日産など電池に1兆円投資 経産省も補助
トヨタ自動車、日産自動車など自動車メーカー4社は、車載用電池に総額約1兆円に上る国内投資の計画を発表した。経済安保法に基づき、経済産業省は3千億円を超える補助金を出す。世界的な電気自動車(EV)シフトへの遅れを指摘されてきた日本勢が巻き返しに出る格好だが、いま、世界のEV市場は厳しい競争環境にある。各社の思惑通りにEV投資が実を結ぶのか。
政府は電池や半導体といった物資を経済安全保障上の重要物資と位置付け、これらの物資を国内で生産する企業に対する補助制度を23年度に開始した。同年度にはトヨタが25GWh、ホンダが20GWhの生産能力増強投資を経産省に申請し、それぞれ1178億円、1578億円の助成を受けている。今回の助成対象を合わせた車載電池の生産能力増強分は年間81.5GWhとなり、補助金総額は、1兆2千億円を超える。 今回の認定では、スバルやマツダといった中堅メーカーによるリチウムイオン電池への投資が明らかになった。スバルは、電池メーカーのパナソニックエナジーと連携。パナソニックエナジー住之江工場(大阪市住之江区)の生産能力をスバル向けに増強するとともに、群馬県大泉町に電池工場を新設する。住之江工場からの電池供給は27年度から開始し、大泉新工場での生産開始は28年度中を計画している。投資総額は4630億円で、生産能力は16GWhとなる。経産省は1564億円を助成する。 マツダもスバル同様、パナソニックエナジーと協力し、パナソニックエナジー住之江工場と貝塚工場(大阪府貝塚市)で合わせて6.5GWhの生産能力を確保するとともに、マツダが山口県に電池モジュール・パックの工場を新設する。同計画に対する投資総額は833億円で、283億円を経産省が助成する。 日産は中国車などで広がっているリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)の工場(年産能力5GWh)を福岡県に新設する。28年度に生産を開始し、軽自動車のEVに搭載する計画だ。総投資額は1533億円で、557億円の助成を受ける。日産は、LFP電池を使うことにより、軽EV「サクラ」に搭載している電池に対し、 3割ものコストダウンを図るとしている。電池の材料は東南アジア由来のものとし、日本企業から調達するとしている。 トヨタは「パフォーマンス版」と称する次世代電池と全固体電池の負極材の生産投資に総額2450億円を投資する計画で、856億円の助成を受ける。トヨタが補助金を受けるのは、23年度の1178億円に続く2度目となる。 パフォーマンス版電池とは、EV「bZ4X」比で、20%のコストダウンを図るとともに、急速充電時間20分への短縮を実現するという電池で、26年に生産を開始する計画だ。トヨタは同電池の搭載により、EVで1000km航続距離達成を目指すとしている。 トヨタはこれらの計画を、電池子会社のプライムアースEVエナジー(PEVE、静岡県湖西市、24年10月1日付でトヨタバッテリーに社名変更)と、パナソニックホールディングスとの共同出資会社、プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES、兵庫県加西市)と共同で実施する。PEVEは福岡県、PPESは兵庫県で生産し、生産能力は合わせて9GWhとなる。全固体電池はEV用として27~28年の実用化を目指しており、その負極材の生産を兵庫県で行う予定だ。 官民合同で巨額の投資を行う蓄電池だが、世界的にEVの販売は減速している。特に、EVのシェアが世界一高い中国では、新興EVメーカーの間で激しい販売競争が繰り広げられており、そのあおりを食った外資系は、厳しい販売状況に追い込まれている。フォルクスワーゲンでは、ドイツ国内の工場閉鎖問題に発展しているほか、日本メーカーも中国での大幅な販売減少が続いている。 中国と並んで、補助金政策でEV市場を拡大してきた欧州連合(EU)でも、24年1~7月はEVのシェアが12.5%と前年同期から0.5ポイント低下した(欧州自動車工業会=ACEA集計)。一方、ハイブリッド車のシェアは29.6%と前年同期に比べ4.5ポイント上昇している。市場環境の変化から、中国・吉利(ジーリー)傘下のスウェーデン・ボルボが、30年までに新車販売のすべてをEVにする計画を撤回した。 そもそも日本ではEVのシェアが1.6%(24年1~6月)とわずかだ。周回遅れでEVに投資したところで、今からどれだけ世界で販売を伸ばせるのかは不透明だ。とはいえ、日本でも35年には全新車販売を電動化(HVを含む)する方針が示されているほか、世界的に排ガス規制や燃費基準の強化が進むため、何らかの電動化は避けられない見通しだ。中国では、EVの競争からソフトウエア定義型自動車(SDV:Software Difined Vehicle)での競争が始まっている。日本メーカーには、こうしたデジタル領域にも目を向け、電池への投資を無駄にしない競争力の向上が求められる。 |
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