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トヨタ、ホンダ、日産がEV投資を見直し EVの行方は?


トヨタ、ホンダ、日産がEV投資を見直し EVの行方は?

自動車メーカーが電気自動車(EV)への投資を見直している。トヨタ自動車は福岡県での電池工場の着工を延期、日産自動車は電池工場計画を白紙に戻した。ホンダは2030年のEV販売計画を下方修正する一方、ハイブリッド車(HV)の販売を2倍に増やす計画を明らかにした。EVの性能は進化しているものの、いまだにガソリン車などに比べ価格が高い。補助金によってEVに需要を誘導している中国以外は、世界的に売れ行きが失速している状態だ。EVが本命になる時代は本当に来るのか。

ホンダは5月に開催した「 2025ビジネスアップデート 」で、30年にEVの販売割合が30%になるとした目標を下方修正する一方、HVの販売台数を現在の2倍に当たる220万台に引き上げる方針を示した。世界販売台数は360万台を想定しており、6割以上が HVになる。三部敏宏社長は、「(30年時点で)EVは30%を下回り、2割程度まで減る」との見通しも示し、従来予想よりも大幅に後退していることを明らかにした。

他方、HVについては足元の需要増加を踏まえ、品揃えを大幅に強化する。27年までに世界で13車種を投入し、同年には次世代ハイブリッドシステムを投入する。20年代後半には米国向け大型SUV「パイロット」への搭載を念頭に、大型モデル向けのハイブリッドシステムも開発する。

40年に新車販売のすべてをEVか燃料電池車(FCV)にするという思い切った目標を掲げて自動車業界を驚かせた三部社長だったが、EVもFCVもほぼ実績がないに等しい状態。EV先進国の中国では厳しい販売競争にさらされ、欧米でも需要の失速し、計画の修正を迫られた格好だ。

EVの計画を見直したのはホンダだけではない。世界に先駆けて2010年に量産型EV「リーフ」を発売した日産も、今年1月に発表したばかりの福岡県での電池工場計画を白紙に戻した。従来のリチウムイオン電池に比べコストが安いことが特徴のリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)の工場を北九州市に建設し、3年後をめどに供給を開始する計画だった。同社は業績の悪化で大規模なリストラも計画している。総額1533億円を投じる予定だった同計画の中止も、リストラの一環とみられる。経済産業省は予定していた557億円の補助金交付の認定を取り消した。

トヨタも福岡県での新電池工場の計画を延期した。トヨタは子会社のトヨタバッテリー(旧プライムアースEVエナジー)などと共同で次世代電池の工場を苅田町に建設し、九州で生産するレクサス車などに搭載する計画だが、主な輸出先の米国では、トランプ政権の発足によりEVに逆風が吹いている。需要が鈍化していることを踏まえ、計画を延期したとみられる。

トヨタは新電池工場の計画自体は撤回していないが、28年としている稼働時期については、佐藤恒治社長は「需要動向をみて改めて相談させてほしい」と述べている。また5月13日の決算会見では、26年に150万台としたEVの販売見通しについても「見直しをかけていく」とした。

EVの計画見直しが相次ぐ一方、中国の 比亜迪汽車(BYD) は4月24日、 軽乗用車のEV を26年に日本で発売すると発表した。BYDは23年に日本市場に参入し、現在は 「シーライオン7」「シール」や「アット3」「ドルフィン」といった普通車や小型車を販売している。24年度は経産省のEV補助金が大幅に減額されたものの、暦年の販売台数は2383台と前年比で57.7%増加している。市場の4割を占める軽自動車にも参入することで、販売台数のさらなる拡大を図る。

ただ、軽自動車の販売は整備工場などを通したいわゆる業販が多く、小型車や普通車などと違って流通が独特だ。このため、BYDの日本法人、BYDオートジャパン(東福寺厚樹社長、横浜市神奈川区)は、軽自動車の販売やマーケティングの知識が豊富な人材を募集することも同時に発表した。外国勢では以前、ドイツのスマート社が軽自動車規格の「スマートK」を発売したことがあったがすでに撤退している。BYDは軽自動車の伝統的な流通形態に乗せて軽を販売することで、本格的に軽市場への参入を図ろうとしているとみられる。

軽のEVをめぐっては、2000年代前半に三菱自動車が「アイミーブ」を発売。一昨年には日産が三菱自と共同開発した「サクラ」を発売し注目された。しかしサクラの販売は25年5月で858台と前年同月に比べ43.4%の減少、1~5月累計も1万578台と前年同期比で27.8%減少と失速している。三菱自が販売する「ekクロスEV」も同様の傾向で、いずれも苦戦している。BYDが風穴を開けられるのか微妙なところだ。

EVは電池の進化によって、最大の課題だった航続距離の問題は改善している。しかし、希少金属を大量に使う電池のコストは依然として高く、EVの価格が下がらないことが、普及の最大のネックとされている

その一方で、自動車のカーボンニュートラル(炭素中立)化を目指す方向性であることは変わらず、トヨタ、日産、ホンダは、次世代電池として期待されている全固体電池の研究開発は止めていない。eフューエルや水素化バイオ燃料といったカーボンニュートラル燃料の研究や実用化への取り組みも行われているところだ。一方で、BYDが水平対向エンジンを開発するなど中国勢がエンジン開発にも力を入れ始めている。EVがいまだ脱炭素の本命とならない中、日本勢はあらゆる技術を追求し、中国メーカーに対抗していく必要がありそうだ。





 




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