日本自動車販売協会連合会は2020年度の国内新車需要予測をまとめた「ディーラービジョン」を8月1日公表した。このなかで、登録車の市場は07年度の342万台から291万台へ約15%減少すると予想。保有の頭打ちと自動車が不要な都市部などへの人口集中が進み、需要が縮小するとしている。ディーラー経営も現状のままのコスト構造だと9割の販社が赤字になると予想している。
自販連の需要予測は昨年度までは三菱総研に委託していたが、今回はトヨタ自動車系の現代文化研究所が行った。都道府県別の保有台数予想から新車需要を割り出した。保有台数は2010年度をピークに減少に転じ、20年度は06年度並みとなる。
保有台数予測から割り出した20年度の新車需要は、登録車が291万2000台、軽自動車が184万7000台の合計475万9000台。登録車が15%減となる一方、軽は2.4%減と登録車に比べ小幅にとどまる。新車市場における軽自動車比率は07年度の35.5%から38.8%へ高まる計算になる。総市場は07年度の531万9000台から10.5%減と予想している。
軽自動車と登録車を合計した新車総市場は07年が534万台で、3年連続で減少した。今年上半期の実績も3年連続のマイナスで需要の縮小傾向が続いている。7月は登録車が前年同月比5.4%増、軽自動車が0.1%減といずれも増加したが、これは特殊要因によるもの。昨年7月は新潟県中越沖地震の影響でメーカー各社の生産が停止。販売も大幅に落ち込んだため、今年はその反動が出た。国内市場は依然として厳しい状況が続いていることに変わりない。
トヨタ自動車は7月28日に今年の世界生産・販売計画(ダイハツ工業、日野自動車を含む)を下方修正すると発表。世界販売は985万台から950万台に、生産計画は995万台から950万台へ大幅修正となった。主にガソリン高と景気減速による北米販売の不振を反映したものだが、国内販売もトヨタ単体の数字を年初計画の160万台から155万台へと5万台減らした。今年は新型「クラウン」「クラウンハイブリッド」、「アルファード/ヴェルファイア」といった新車を投入したが、1−7月は前年同期比0.7%減という状況。特にレクサスブランドは、昨年「LS600h/hL」を投入した反動もあり、23.3%減と大幅に落ち込んでいる。
国内新車需要は人口の減少や若者の車離れ、所得の伸び悩みなどを背景に厳しい状況が続くと予想されている。自販連の需要予測はそれを裏付けたものといえる。縮小の要因としてビジョンが挙げているのは少子高齢化・労働力人口の減少・国民負担の増加・大都市圏への人口集中といった構造的問題。さらにエネルギー価格の高止まりや環境問題の深刻化といった要因を掲げる。
新車需要の縮小で、ディーラー経営は厳しくなり、赤字販社の割合は現在の29%から90%に急増する。人件費・販売費・一般管理費・施設管理費といった経費を10〜20%削減すれば現在並みの利益を確保できるという。ディーラーはこれまで推進してきた車検・サービスなど、保有客を対象にした非新車ビジネスを一段と重視していく必要がある。
多くの国内メーカーの収益源である米国市場は今年、昨年の1610万台から100万台以上減少し、1430万台程度に落ち込むとの予想もある。原油高で大型ピックアップトラックの需要が大幅に減少し、米ビッグスリーの経営を圧迫し始めている。景気減速で、どのセグメントも販売は総じて不振だ。だが、米国は移民の流入などにより人口はこれからも増加する。売れ筋車種は大型車から小型車へと変わるかもしれないが、先々、市場はまた回復すると見られている。
一方、足元の日本では、人口が減り続けることが、需要減少の最大要因になる。外国人労働者や移民でも受け入れない限り、先行きは厳しい。だが、日本で起きている現象は、いずれ海外の市場でも起こりうる可能性のある現象だ。国内メーカー各社は、国内の状況を真正面から受け止め、手を打っていくことが必要になる。
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