3月11日に起きた東北関東大震災で自動車産業にも大きな影響が出る可能性が出てきた。被災した東北のサプライヤーの状況を把握する必要があるだけでなく、電力不足に伴い、産業界にも節電を要請したためだ。日本自動車工業会は被災地への車両供給など支援も行っていく予定だが、生産活動自体がどうなるかの見通しを立っていない。
東北・関東を襲った国内最大の地震で東北にある東京電力の原子力発電所や火力発電所が一部稼働を停止している。これにより、東京電力管内で1日当たり1000万kwの電力不足が生じるという。このため大規模停電を避けるため東京、神奈川、埼玉、千葉、栃木、群馬、静岡東部のエリアで14日から輪番制の計画停電が実施される。
海江田万里経済産業大臣は「電力は残念だが国民生活への影響を最小限にするため止むを得ない。産業界、国民に迷惑をかけるが、このような異常事態を理解して欲しい」と会見で述べた。また「産業界については国民生活に影響がないよう万全を期して欲しい」とし、日本経団連に対して節電への協力を要請した。
自動車メーカーは11日地震発生直後からトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車などの東北や関東の工場が操業を停止した。また14日はトヨタ自動車、日野自動車、ダイハツ工業のトヨタグループが全面的に操業を停止。日産、ホンダのほか、スズキ、ダイハツ工業、三菱自動車など、ほとんどのメーカーが操業を停止し生産への影響が出始めている。いつまで生産停止が続くのか、あるいは再開したとしても、生産レベルがどれ位で推移するのか見通しが立たない。
自動車工場の操業停止といえば、2007年の新潟県中越沖地震でリケンの工場が被災し、ピストンリングの供給が滞り、トヨタ自動車などが完成車の生産停止に追い込まれたケースが記憶に新しい。しかし今回の地震や津波はあまりにも甚大で、被災した地域が広い。関東北部や東北にもサプライヤーは多く、部品の供給が複数の部品メーカーで滞る可能性がある。また節電への協力のため操業時間を短縮すれば、生産を再開したとしても昼勤のみにするなど、台数を減らさざるを得ない。
自動車産業はリーマンショックで国内生産が激減したが、2010年は国内のエコカー補助金による需要増加で1000万台をやや下回るレベルを維持した。為替の円高で輸出採算が厳しい中でも現状の国内生産台数のレベルを維持するために各社がコストダウンを急いでいる。今回のような大災害が起きたことで自動車の生産に大きな打撃となれば、海外の拠点に生産を移す動きが強まる可能性もある。
被災した東北や関東北部の自動車販売店への影響もまだ明らかになっていない。津波で壊滅的な状況となった東北沿岸地域にも多くのディーラー店舗があったと見られるが、電話やインターネットが通じず、自動車メーカーも自社系列の販売店の状況把握に時間がかかっている状況だ。整備工場なども被害を受けていると見られ、販売・整備といった各業界団体による現地への支援も求められそうだ。 |