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  広がるOEM、理由は?
 

 自動車メーカーどうしのOEM(相手先ブランドによる生産)が広がっている。乗用車メーカー8社のうち、OEM関係をどのメーカーとも結んでいないのはホンダだけだ。ライバルメーカーどうしが商品を融通しあう背景には何があるのだろうか。

 三菱自動車が10月6日、東京・田町の本社で行った新型車の発表会。益子修社長も出席し、記者会見とフォトセッションが行われた通常の新車発表会だ。ただ、この車、実は日産自動車の小型商用車「NV200」をベースにしたOEM車。バッジとバンパーなど一部を変えただけで外観も内装もNV200と同じだ。三菱はこの車を乗用車は「デリカD:3」、商用バンは「デリカバン」の名称で発売した。三菱は2月にはスズキから「ソリオ」をベースとしたOEM車「デリカD:2」を発売している。今年発売の新車が2台続けて他社からのOEMというわけだ。
 三菱と日産は他にもOEMを拡大する計画だ。2012年に日産が上級セダンの「フーガ」を三菱自に供給。三菱は年末までに発売予定の軽商用EV(電気自動車)「ミニキャブミーブ」を日産に供給する。上級セダンと小型商用車の日産から三菱への供給は2010年12月に表明されていたが、軽EVをOEM供給することが明らかになったのは初めてだ。
相互にメリットがあるなら商品を融通しあうという両社の姿勢は鮮明だ。三菱は限られた経営資源を、成長が見込める新興国とEVやPHV(プラグインハイブリッド車)といった次世代環境車に集中する姿勢をはっきりさせている。EVやPHVを今後相次ぎ予定だが、販売店にとっては今すぐ売れる車が必要。そこで他社からのOEMで販売店の品揃え増やそうという訳だ。
 国内市場が伸びていた時は国内向けの商品開発に投資することでメーカーも伸びてきた。国内でヒットした車を海外にも輸出し、国内と海外が連動して利益を拡大してきた。しかし、国内市場が縮小に転じた今、メーカーは国内向けだけの商品を開発する余力はなくなっている。投資先を今後有望な分野や市場に重点化する必要があり、三菱の戦略はその典型と言える。三菱は国内で需要が増えると見られる軽自動車でさえ、企画と開発は日産との共同会社体制に移行した。コンパクト車「コルト」も次期型は国内での生産を見送りタイからの輸入を検討しているほどだ。
新中期経営計画で海外での大幅な販売増を目指す日産も、国内向けの品揃えは他社の力を借りる。商用車でOEM関係にあったマツダから、今度は乗用車「プレマシー」をベースにしたOEM車「ラフェスタ ハイウェイスター」の供給を受け始めた。マツダの主力車が日産の販売店でも売られることになりマツダの販売店にとっては厳しいが、マツダにとっては生産台数が上乗せされるメリットがある。マツダはフォード・モーターが出資比率を大幅に下げたことで経営の独立性を強めており、経営資源を次世代技術と新興国に集中する方針。ロータリーエンジン車「RX−8」の生産終了もその一貫と言えるだろう。
 日産が中心になって三菱、マツダ、スズキのOEM関係が拡大していきた一方で、トヨタ陣営もダイハツによるトヨタへの軽自動車OEMなど、商品の融通が増えてきた。ダイハツが「ムーヴコンテ」と「ハイゼットトラック/バン」の供給を始めたほか、来年には「ミラ イース」の供給も始まると見られている。代わりにダイハツもトヨタからハイブリッド車の供給を受ける見通しだ。
 円高による輸出競争力の低下、欧州経済不安による世界景気の失速懸念で、メーカーは足元の国内事業でいかに利益を上げていくかを考えていかねばならない。メーカーどうしがOEMを相互に行えば、開発コストを節約しながら国内生産も一定の台数を維持できる。一方、OEMを多用しすぎるとメーカーが意欲的な新商品を出す機会が減り、市場の活力を減退させる懸念もある。OEMの増加は次世代商品を投入するまでのつなぎであると期待したい。




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