自動車メーカー各社の2012年3月期決算がまとまった。11年3月の東日本大震災に続いて10月にはタイの大洪水にも見舞われ、7社が減収、5社が最終減益を余儀無くされた。13年3月期は全10社が増収、営業増益を見込むが、経営環境は楽観を許さない情勢だ。
12年3月期のメーカーの業績は、日産自動車、ダイハツ工業、日野自動車を除く7社で売上高が前期を下回った。トヨタ自動車は前期比2.2%減、ホンダは同11.1%減、マツダは同12.6%減となったほか、スズキ、三菱自動車、富士重工業、いすゞ自動車も前期を下回った。
タイの洪水でアユタヤの四輪車工場が水没したホンダや、円高の影響を大きく被ったマツダが2ケタのマイナスとなった。ホンダはそれでも、新興国で好調な二輪車が業績を下支えしたが、マツダは世界生産の8割が国内生産というだけあって円高、特に欧州信用不安によるユーロ安の影響を大きく被っている。
マツダの12年3月期業績は、10社中で唯一、営業、最終損失になり4期連続の最終赤字に。08年9月のリーマンショックから業績回復の軌道に乗りかけた矢先に天災と円高に見舞われ、日本メーカーにとって11年度はまさに災難の年だった。
12年3月期が天災という特殊要因のあった年だけに、13年3月期は全社が増収予想を出している。北米市場の回復や、中国や東南アジアといった新興国市場の成長に伴い販売台数が増えると予想しているためだ。台数増の効果により、営業利益も全社が増益(マツダは黒字転換)を予想している。
トヨタ、日産、ホンダの大手3社の売り上げ予想は、トヨタが前期比18.4%増の22兆円、日産とホンダが10兆3千億円で、それぞれ前期比28.2%増、168%増を予想している。営業利益はトヨタが1兆円、日産が7000億円、ホンダが6200億円を見込んでいる。営業利益率は日産が6.8%、ホンダが6.0%、トヨタが4.5%と、日産の事業効率の良さが目立つ。日産は台数増に伴い、アライアンスを組むルノーとの部品共用化の効果が現れてくると見られる。
順調に回復するように見える各社の今期業績だが、経営環境は依然として厳しいままだ。為替相場は1ドル=80円をはさんで膠着状態が続いており、ユーロに対しても再び円高が進行している。欧米、韓国メーカーとのコスト競争で日本からの輸出は不利な状況にあることは変わりない。採算を改善するには、為替変動に左右されないよう、生産や調達の現地化を加速する必要がある。
日本車は各地域で欧米メーカーや韓国メーカーとの激しい競争にさらされている。一時国有化から息を吹き返したゼネラルモーターズ(GM)は、中国や北中南米で販売が好調。フォルクスワーゲン(VW)は高度に部品を共通化するモジュール設計の強みを生かし、競争力を一段と高めていくと見られる。現代自動車は欧州人を起用したデザイン力で、日本車が不得意な欧州でも成功している。
リーマンショック前、国内メーカーは円安で大きな利益を得てきた一方で、設計の合理化や部品共通化といった地道な努力を後回しにしてきた面がある。今になってトヨタがモジュール設計への取り組み強化を打ち出しているが、成果が現れると予想されるのは14〜15年頃のモデルチェンジが予想される次期「プリウス」からだ。日本メーカーの中では勢いのある日産も、VWやGMの伸びに比べると決して優位にあるわけではない。ましてホンダは「アコード」「シビック」「フィット」に続くグローバルカーを生み出せていない状況だ。
日本メーカー各社が新興国での増産投資を加速する13〜14年以降は、日本メーカーの今後を占う意味でも注目される。まずは、昨年欧米、韓国メーカーに奪われた市場シェアを、今年どれだけ取り戻せるか―。日本車の今の競争力を見極める試金石になる。 |