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円安でも増えない輸出


  超円高の修正によって輸出の採算が改善している自動車メーカー。昨年まで1ドル=80円を割り込む超円高に苦しめられたが、昨年後半からの円安によって収益が改善し、今期は自動車メーカー各社が円安の恩恵を受けて大幅な増益となる見込みだ。しかし、国内生産はいまだに増加に転じる兆しが見えてこない。

2000年以降の月間平均値

  2008年9月のリーマンショック、それに続く円高、東日本大震災、タイ洪水と、自動車産業にとってこの4年は波乱に満ちていた。円高、労働法制、法人税、電気料金、自由貿易協定の締結の遅れ―などを指す、いわゆる「六重苦」。日本の製造業の国際競争力を低下させているとして、日本自動車工業会(自工会)や自動車メーカーのトップが政府に改善を求めてきた。民主党政権下では遅々として改善が進まなかったが、昨年末に第2次安倍晋三政権が誕生してからは、デフレ脱却を目指した金融緩和政策によって、外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが加速。1ドル=100円レベルまで円が安くなり、ようやく輸出産業に追い風が吹き始めた。
  ところが、四輪車の輸出は、この為替環境下にあっても、なお減り続けている。自工会のまとめによると、5月の四輪車輸出台数は前年同月に比べ7.2%減の35万9752台となり10カ月連続で減少した。

2013年5月ブランド別・車種別輸出台数

2013年5月ブランド別・車種別輸出台数

※上表は自工会HPより転載

仕向け地別では中近東向けが増えたのみで、アジア、欧州向けが12カ月連続、北米向けも2カ月ぶりに減少した。
  輸出の減少に伴って、国内生産台数も前年同月比6.2%減の73万2714台と9カ月連続で減少した。トヨタ自動車は微増、マツダや富士重が増加したが、日産自動車は前年同月比30%減、ホンダが同27.9%減と日産・ホンダのマイナスが目立つ。
ホンダは登録車の販売減少により国内販売が同21.5%減と5カ月連続、輸出が同46.2%減と11カ月連続で減少した。日産は軽で売り負け国内販売が前年同月比8.6%減、輸出が同39.9%減だった。ホンダ、日産ともに国内販売、輸出とも1−5月の累計も前年同期を下回っている。

ホンダ国内販売

ホンダ国内販売

ホンダ日本からの輸出

ホンダ日本からの輸出

・上2表ともホンダHPより転載 輸出:自工会報告ベース(CBU)

  国内生産の半分が輸出なだけに、輸出の減少が続くことは、国内生産台数の減少につながり、日本に技術力を維持していくこともままならなくなる。円安によって輸出の持ち直しに期待がかかるものの、数年間続いた超円高で、日産やホンダは生産の海外シフトを加速。いったん、海外生産を決めた車種は、円安だからといって、簡単には国内に戻せない。
  さらに、自動車メーカー各社は海外市場での競争力強化のため、部品の現地調達化を加速してきた。部品メーカーは自動車メーカーの現地化ニーズに対応し、東南アジア、インド、メキシコといった新興地域・国での現地生産化を進めた。工場をつくったからには、現地の生産量を増やす必要があり、部品も円安になったからといって、日本からの供給に切り替えることは難しい。リーマンショック、超円高、東日本大震災を経験したここ数年の間に、日本の自動車メーカー、部品メーカーのグローバル化は一段と進み、日本の自動車産業の構造自体が大きく変わった。
  とはいえ、自動車メーカー、部品メーカーともに、技術開発の中核は日本であるとのスタンスに変わりはない。ホンダは現地向けモデルの開発を欧米、中国、タイなど各地域で行う動きがあるが、基本技術や新技術の開発は日本で行うというスタンスだ。また技術開発力を維持するため、トヨタは年間300万台、日産、ホンダはそれぞれ100万台という台数を国内で作り続けると表明している。一定の生産台数を維持するためには、円安を追い風にしながら、国内市場にもテコ入れすることが必要だ。




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