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  人を育てる・生かすシリーズ:新規&中途採用と育成

Vol-3.「人材」と「人財」
◆教育も大事だが素材はもっと大事
さて、第3回目の「人を活かす・育てる」では新卒採用から内定者フォローのプロセスにおいて感じたことを書き連ねてみます。

第1回目のこのコラムで、ある自動車販売会社の社長のコメントで、「人は皆同じ能力を持っているから、要は採用してからの教育こそ大事なんだ・・・・・」というくだりを紹介しました。これは裏返すとデキの悪いのは「教育」のせいだ、だから教育担当者であるアンタが悪いという「風が吹けば桶やがなんとか」も真っ青な推論の飛躍をしていただいてしまうようなものですから、コンサルタントとしてはここが踏ん張りどころです。

「いや社長、やはり人は単なる材料ではなく会社の財産です。「人材」から「人財」になるには時間がかかります。そして、やっぱり「ダイヤの原石」を探さないと駄目です。」と説得する羽目に陥るのです。

かくして採用に経営資源を注ぎ、どんどん若いエネルギーを会社に注入していくことになるのですが、私がお手伝いしている会社は、過去にそれほど新卒を採用しておらず、中途採用でやり繰りしていたところがあり、かつ規模も中小企業の域を出ません。

従って、人を一から育てるためのインフラがまったく整っておらず、当然のように古い価値観と新しい価値観のぶつかり合いが生まれます。これがいわゆる企業の中の雑然とした風土を生み出す原因にもなってしまうのです。


◆時代の変遷とマネジメントスタイル
企業におけるマネジメントスタイルの変遷から見ていくとわかりやすいと思いますので、ちょっとご紹介します。全部で4つの区分におおまかに分類できるのですが、

@ まず初期のマネジメントスタイルといえば、これは日本の高度成長期時代からオイルショックを経て「プラザ合意」が生まれた1985年くらいまでの時代といえましょうか?手本とする目標があって、それに追いつけ追い越せで一丸となって突き進んできた時代です。まあ主な目標はアメリカでしょうね。政治、経済のお手本がアメリカにあり、ビジネススタイルから成功への足がかりなどいろんな意味でモノまね日本の象徴のような時代でした。ですから強いリーダーシップの元で、明確な目標を持ち、皆それを信じて疑わない全体主義的なマネジメントと言えます。

A 80年代も後半になって、いつの間にか株価がどんどん上昇し、あれよあれよと言う間に日本はアメリカを追い越して世界一の経済大国になってしまいました。時はバブル真っ盛りで、新しいビジネスに手を出して成功する=儲けることが当たり前の時代に入り、みんな目標を見失いつつありました。その見失った目標の本質が見抜けないままバブルが崩壊し、日本経済は奈落の底へ。ようやく今年ぐらいから不良債権の処理の目鼻が立ち、銀行の業績が上向いてきたなどと言われていますので、まさに暗黒の15年を迎えるわけです。マネジメントスタイルとしてはバブル中も後も目標は不明瞭で、何を信じて良いかまったくわからない五里霧中の時代でした。

B 90年代の半ばからようやくバブルの亡霊から脱却すべく、企業のリストラクチャリング(再編成)が活発になる時代に入ります。やることはバルブのツケを払うこと。ただそのためだけにひたすら負の遺産の償却(清算)にまい進した時代。ある意味やることは明白なのですが、かなりの痛みを伴うため、なかなか経営決断できません。ここでマネジメント能力の差が生まれました。典型的な事例が日産自動車。すでにカリスマ経営者に名を連ねているカルロス・ゴーン氏が行ったマネジメントは、当時の日本人経営陣にはとうていできなかったでしょう。同業界であえて社名は伏せますが、過去の遺産にしがみつき根本から変革の大英断を下せなかった会社は、リコール問題でゆれに揺れ、いまだに水面下に沈没したままです。まさに変革の時代に突入した時の舵取りの難しさ、つまり経営者の能力差といったところでしょうか。

C さて、新しい世紀を迎える前後、ITバブルなる時代がやってきます。新しい発想で起業する若者が増え、また会社の経営やマネジメントも代替わりを迎えて強力なリーダーシップと個の自己実現が混在してそれぞれに目標をもった行動が求められています。全体主義にもならず、かといって、てんでんバラバラな状態でもなく、企業の中のそれぞれの組織体が自主的にマネジメントしていける、そういった能力が求められています。「プロジェクトX」が人気なのもそういった時代背景でしょうか?ホリエモンに象徴されるような新時代の到来といったところでしょうね。ソニーのトップが海外から招聘されたり、ファーストリティング(ユニクロ)の社長に創業者が復帰するなど、トップ、経営陣の舵取りも一段と難しい時代になってきています。


◆採用基準と働く現場のギャップが不満を生む
さて、このCの時代にいる現在の採用の現場はと言いますと、学生の意識も当然それに影響されています。企業が求める人材は「自動巻き時計タイプ」で人からねじを巻かれなくても(人から命令や指示をされなくても)自分で動き続ける人財といったところなんですが、そんなことは面接ではちっともわかりません。

そしてあたりまえですが、学生の皆さんも面接マニュアルや講習を受けたりして、面接慣れしちゃってるもんですから、まあ優等生的な発言がたくさん出てくるわけです。
おまけに採用する側の企業が採りたい学生の基準に「自分で動ける自動巻き」を求めた結果、会社で自己実現できるといった価値観が妙にゆがめられて、「自分という個を尊重して何でもしてくれる自由な雰囲気を持った会社」という大きな誤解を抱き、そのまま会社に入ってくることになるわけです。

最近、入社して1年くらいたち、ある程度仕事のイロハも理解できるようになってきた新人が会社に対し、もっとやりたい仕事をやらせて欲しい。こんなはずじゃなかった。やりがいが持てない。などと言ってくるそうです。

まず自分のやるべき業務が全うできているか、またその業務の中で発見される新たな改革や提案などがどれほど出てくるかなどを新人に期待していると肩透かしにあって、「もう辞めたい」とか「先輩にいじめられて職場に馴染めない」とか問題をすり替えてしまう。採用の時に「堂々と自分の意見が言える前向きな人材」なんていうのを基準に採用したものですから、そういうのに限ってフォロー面談の時に不平不満を一気に吐き出して経営者をおろおろさせることになります。

前回お話した私のお手伝いしている企業でも、同様なことが起こりまして、鳴り物入りで入社した39名の新人が1ヶ月の教育の後、現場に配属になった瞬間に、今までのお客様待遇から一兵卒に格下げになり、例の問題が噴出したわけです。当然のごとく毎月のフォロー研修は修羅場と化し、上司の悪口やら先輩への不満やらがまあ出るわ出るわ。そりゃ会社にも問題がないわけではないが、そんな新人にとってバラ色の会社なぞあるはずもなく、平たく言えば「組織の目標」と「個人の目標」とが一致していないということになるんでしょうが、どうも話を聞いているとそんなに高尚な話でもないようで、これは最初からボタンを掛け違えたかな?と・・・・・・・。

結局39名の新人が配属後2ヶ月で2名が退社し、5名が人事異動を余技なくされ、うち1人は将来人事の有望株として管理部に配属した有名国立大出身の女の子も「辞めたい」と言い出す始末で、急遽接客の受付嬢に配置転換をいたしました。まさに人材を人財にすることの難しさを痛感した次第です。

今、来春卒業予定の内定者を42名抱えておりますが、さて、どうしたものかと無い知恵を絞りつつ内定者フォローに頭を痛めている今日この頃です。ということで次回は教育の話題に入っていきたいと思います。


清水 薫(ビードライブ株式会社 代表)