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   【人を活かす人事・労務】
Vol3
『時間外労働・休日労働と三六協定』
 

 

 

 先の国会で継続審議となっていた、長時間の時間外労働抑制を目的として割増賃金率引き上げを柱とする労働基準法改正案が、秋の臨時国会で修正案が提出され動き出しそうです。自民、公明両党の案は、現行の一律25%の時間外労働の賃金割増率について、月に60時間を超える部分は50%とするとしています。
 こうした中、社員の福祉や健康面さらには作業効率向上によるコスト削減等の必要性から、残業時間の短縮や長時間労働の抑制に積極的に取組んでいる企業が増えてきております。
しかしながら、中小企業では、まだまだ、人材不足、需要の季節的変動や納期の厳守、臨時の受注やクレームへの対 応等々に対処するため、時間外労働や長時間労働を余儀なくされている企業が多いのも現状です。
 因みに、整備業界の残業時間は、平成19年版整備白書によると下図のようになっています。

  

  そこで、労働基準法では時間外労働や休日労働について、どのように規定し、どのような手続きを必要としているのかを確認し、適切に対応し遵守していくことが求められます。

〈時間外労働・休日労働を行う条件〉
1. 使用者が、社員に時間外労働や休日労働をさせる場合には、次の要件を満たしていることが必要です。
 〇囲散定の締結・届出がしてあること
 ∋間外労働・休日労働の義務を定めた就業規則が存在すること
 その就業規則の内容が合理的なものであること

2. 使用者が、法定労働時間を超える時間外労働又は法定休日における休日労働をさせる場合には、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と書面による労使協定を締結し、事前に所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。(労基法36条)
 この協定を、通称「三六協定」と呼んでいます。
 なお、同条の規定は、時間外労働・休日労働を無制限に認める趣旨ではなく、本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきものとしております。

過半数代表者とは
労働基準法施行規則に規定されている労働者の過半数を代表する者は、次のいずれにも該当する者とされています。
]働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと
∀使協定の締結等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であること。
また、使用者は、労働者が過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければなりません。

3. 通常、就業規則には、「会社は、業務の都合によりやむを得ない場合には、労働基準法第36条に基づく協定により法定労働時間を超えまたは法定休日に労働させることがある」と三六協定に基づいて時間外労働をさせることがある旨を記載し、具体的な内容は三六協定において記載するとしている方法が一般的です。
 その内容である時間外労働又は休日労働を必要とする具体的な事由や延長できる時間の限度等については、三六協定の必要的記載事項としておりますので、協定に委ねる形になっております。

4. 時間外労働と休日労働については、割増賃金の支払いが必要です。時間外労働の割増賃金の割増率は2割5分以上、時間外深夜(22時〜5時)労働の割増率5割以上(時間外2割5分+深夜2割5分)、休日労働の割増賃金の割増率は3割5分以上です。
また、三六協定が締結なく時間外労働をさせた場合は、公法上の罰則規定の適用があるのはもちろんのこと、時間外手当の支払い義務があるのは当然のことです。

5. 上記1の要件を満たしていても、社員に時間外労働・休日労働を行えないやむを得ない事由があるときは、その時間外労働・休日労働をさせることが権利濫用となる可能性もありますので注意が必要です。特に、休日労働の場合には、業務上の必要性が要求されます。したがって、実際に時間外労働・休日労働をさせるときは、業務上の必要性や社員の都合を十分考慮したうえで行う必要があります。
 なお、休日労働の場合は、振替休日制度(この他に代休制度)を使えば休日労働になりません。振替休日の場合は、あらかじめ就業規則に「休日を振り替えることがある」旨を定めたうえで、振替日を事前に特定し、遅くとも前日の勤務時間終了までに休日を振り替えることを伝える必要があります。
 振替休日とは、あらかじめ休日と定められた日を通常の労働日とし、その代わりに他の日(労働日)を休日とすることです。この場合でも、休日を振り替える場合には、4週4休が確保されなければなりません。休日を振り替えた結果、その週の労働時間が週法定労働時間を超えた場合には、その超えた時間が時間外労働となり割増賃金を支払うことになります。
 残業時間がどれくらいが適正であるかを判断するのは、予定外の重整備、故障原因の究明が困難な故障、あるいはクレームやリコール対応などで難しいところではありますが、何がしかの基準が必要です。
 そこで、「工賃売上目標に見合う残業時間(「目安残業時間」とします)」を基準としてみたらいかがでしょうか。


必要だからで残業を認めていたら、コスト競争を優位に戦うことはできません。合理的な必要残業時間を決めて、それを守る努力が必要です。そこに生産性向上の歩みがあるのです。


かのう社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 狩野 一雄