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   【人を活かす人事・労務】

Vol.6

『変形労働時間制の活用』
 

 

 

【変形労働時間制とは】
 厚生労働省が2月3日に発表した2008年の毎月勤労統計調査(速報)によると、残業などを含めた1人あたりの年間総実労働時間数は1792時間で、1990年に現行の調査対象となって以来の最短記録となり、初めて1800時間を割り込みました。
 1か月平均の労働時間は149.3時間(前年比0.9%減)となり2年連続の減少です。このうち残業などの所定外労働時間の月平均が2.7%減の10.7時間と大幅に減少したことが総労働時間の押し下げ要因となったとしています。
 労働時間とは、労働者が会社に拘束されている時間のから、休憩時間を除いた仕事を行っている時間(使用者の指揮命令下にある時間)を言います。この労働時間は労働基準法において次のように定義されています。
 原則として「法定労働時間は休憩時間を除き1週40時間、1日8時間」と定めています。特例措置対象事業場(商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業のうち10人未満の事業)では、1週44時間、1日8時間とされています。
 しかし、原則通りの労働時間では、企業によっては合理的ではなく、これになじまない業種や業務も数多くあります。そこで、労働基準法では一定の条件を定めたうえで、原則労働時間とは別に、4つの変形労働時間制を認めています。
 変形労働時間制は、労働時間を弾力化して、週休2日制の普及、年間休日日数の増加や業務の繁閑に応じて労働時間の効率的な配分等を行うことにより、労働時間の短縮を容易にする制度として導入されたものです。所定労働時間を、業務が忙しいときは長く、比較的業務量が少ないときは短く配分し、変形期間を平均して法定労働時間内に納める方法です。
 今日では、原則労働時間になじまない業種や事業において、相当数普及してきており、自動車販売・整備業においても、変形労働時間制を活用し、経営の効率化に役立てると良いでしょう。
 なお、法定労働時間を超えて労働した場合は、その時間に対して「割増賃金(割増率25%、深夜割増率50%(割増率25%+深夜割増率25%))」を支給しなければなりません。
 例えば、始業9時、終業17時、休憩1時間の所定労働時間の会社で、17時以降19時までの2時間所定時間外労働を行った場合の割増賃金の対象時間は下図のとおり「1時間」となります。

労働時間に対する割増賃金の対象例(就業規則で始業9時、終業17時の場合)

 第170回国会で「労働基準法の一部を改正する法律」成立し、平成20年12月12日に公布された(平成20年法律第89号)改正労働基準法は、残業時間ごとに3段階で割増率を設定しています。月45時間までは25%以上(従来通り)、月45時間超-60時間までは25%より引き上げるよう労使で協議する、月60時間超は50%以上となりました。
 月60時間超50%以上の割増率は、経営体力を考慮して中小企業には当分適用せず、施行から3年後に適用を検討するとしています。

【変形労働時間制導入のポイント】
1.1か月単位の変形労働時間制=毎月末などが忙しい場合など
 

 労使協定または就業規則(常時10人未満の労働者を雇用していて就業規則を作成していない場合には、就業規則に準じたもので良いですが労働者に周知を要します。)に、1か月以内の一定の期間を平均して、1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、各日及び各週の所定労働時間を具体的に特定した場合には、特定の週に1週40時間(特例対象事業場は44時間)を超えて、または特定の日に8時間を超えて働かせることができる労働時間制です。
 たとえば、月末が忙しい場合、月初めは休日を多くとり所定労働時間を短くする代わりに、第4週目を比較的長い労働時間を組み休日を少なくするなどして、平均して1週40時間を超えていなければ、時間外労働とはなりません。
 なお、この制度を新しく採用したり変更したりする場合は、就業規則変更の手続き(労働者代表の意見聴取、労基署長への届出)が必要です。
 変形期間を通した所定労働時間の上限(法定労働時間の総枠)の計算式は次のとおり。
  40時間×変形期間の暦日数÷7     (例)40×31÷7=177.1時間


2.フレックスタイム制=研究開発や専門職、育児や介護を要する人がいる場合など
   1日の所定労働時間の長さを固定的に決めずに、1か月以内の一定期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、その範囲内で、各労働者が各自の始業・終業の時刻、各労働日ごとの労働時間を自主的に決めて働くことができる制度です。
 この制度を採用する場合は、就業規則その他これに準ずるものに、「始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねること、労使協定に対象労働者の範囲、清算期間(1か月以内)、総労働時間(法定労働時間内)、標準となる1日の労働時間、コアタイム並びにフレキシブルタイムを設ける場合にはその開始及び終了の時刻」を定める必要があります。
 清算期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間(法定労働時間)を超えなければ、ある特定の日や週に法定労働時間を超えても時間外労働とはなりません。総労働時間を超えて労働した場合には、その超えた時間は時間外労働となり割増賃金の支払対象となります。

3.1年単位の変形労働時間制=年末や年度末など1年のうち一定の季節が忙しい場合など
   一定の季節が忙しいというような会社において、繁忙期は労働時間を長く、閑散期は短くして、1年間の労働時間を効率的に使用できるという制度です。1ヶ月を超えた一定期間(3か月、6か月、1年など)を単位とする1年単位の労働時間制が、変形労働時間制の中で、一番よく活用されております。
 1年以内の一定の期間を平均して、1週間当りの労働時間が40時間以下の範囲内であれば、特定の週に40時間を超え、または、特定の日に1日8時間を超えて労働させることができます。
 この制度を採用する場合には、労使協定を締結し労働基準監督署長に届け出ることが必要です。また、10人以上の労働者を雇用している会社では、就業規則に1年単位の変形労働時間制を定め、労働基準監督署長に届け出なければなりません。

4.1週間単位の非定型的変形労働時間制=急に忙しくなるなど日ごとの業務が著しく繁閑の差が
ある場合など

   常時使用する労働者30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店に限定されますが、1週間の労働時間が40時間の範囲内であれば、1日10時間まで労働させることができる制度です。これは、日ごとの繁閑の差が大きい小規模のこれら事業場について、柔軟な労働時間制をとるようにしたもので、労使協定を結び、1週間の各日の労働時間を原則として前週末までに書面で労働者に通知しなければなりません。なお、この労使協定は、労働基準監督署長に届け出ることが必要です。

■変形労働時間制を採用する場合の注意事項
年少者
18歳未満の年少者については、原則として変形労働時間制が適用されないだけでなく、フレックスタイム制、三六協定による時間外・休日労働の適用及び労働時間・休憩の特例から除外されています。
妊産婦
変形労働時間制を採用する事業場において、妊娠中または産1年未満の女性から請求があれば、法定労働時間(1日8時間、週40時間)の範囲を超えて労働させることはできません。



特別の配慮を必要とする者
育児を行う者、高齢者等の介護を行う者、職業訓練または教育を受ける者及びその他の配慮を必要とする者については、その必要な時間を確保できるよう配慮義務が定められております。


かのう社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 狩野 一雄