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   【人を活かす人事・労務】

Vol.10

『服務規律と懲戒の明文化』
 

 

 
【服務規律と懲戒】
 服務規律は、会社を適正に運営していくために、労働者に守ってもらわなければならない事項を、規則を持って定めたもので、秩序を維持するために必要不可欠なものです。
労働基準法第89条では、就業規則に定める条項については、
始業・就業時間、休憩時間、休日、休暇などの労働時間に関すること
賃金、臨時賃金など報酬に関すること
退職(解雇事由を含む)に関すること
退職手当を定めた場合の適用の範囲、退職手当の決定、計算および支払い方法に関すること
安全および衛生に関すること
災害補償、業務外の傷病扶助に関すること
表彰、制裁に関すること
労働者のすべてに適用される定めに関すること
などとされていて「服務規律」として明文化するようには規定されていませんが、会社に働くすべての労働者に適用されることになる服務規律については、当然のごとく、就業規則に明記しなければならないことになります。
 また、服務規律の規定と制裁規定(懲戒)とは連動しておりますので、服務に関する遵守事項と懲戒に関する規定とは、結びつけて定めることが必要です。

【服務規律と懲戒規定のポイント】
1 服務規律
 服務規律として規定する条項については、「企業秩序順守義務」「職務専念義務」「施設管理義務」の3つの義務を中心に定めるのが一般的です。この3つは、労働者が雇用契約を結んだ時から生じるものとされています。
 服務規律の内容は、法律的に適正で、公序良浴に反せず、社会的に妥当であることが必要です。具体的には、会社企業の特殊性に応じて定められる必要がありますが、上記の3つの義務が服務の中に明記される基本的なものです。

 これらの3つの基本的な義務を含めて、一般的に服務規律として 就業規則に規定される主な事項には次のようなものがあります。
全般的、総括的事項
労務提供義務、会社の諸規則等の遵守、使用者 ・上司の指示命令に
対する服従義務など
労働者の服務に関する事項
職務に対する専念義務、出退勤・遅刻・早退・欠勤等の手続き、
職場規律の維持に関するものなど
企業財産や物品の管理保全に関する事項
会社施設や物品の管理保全、会社物品や施設利用に関するものなど
労働者としての身分・地位に関する事項
業務上の秘密保持義務、競業避止義務、兼業禁止義務、業務に関連して他人より金品贈与等不正行為の禁止など
セクハラに関する事項
個人情報保護法に関する事項
2 懲 戒
労働基準法第89条において、制裁の定めをする場合には「懲戒の種類及び程度に関する事項」は、就業規則に必ず定めておかなければならないとされています。
 懲戒処分は、服務規律違反や使用者の指示・命令に違反した場合などに、使用者が労働者に制裁罰として行われる処分ですが、労働契約法第15条では、「懲戒は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効」と定めています。
(1) 懲戒処分は労働者にとって大きな不利益をもたらすものだけに、懲戒に関する規定を定めるにあたっては、社会一般からみても納得できる合理的な理由が必要ですし、その手続きについても適正さが求められます。多くの判例などから、懲戒処分が有効とされるためには、次のような要件が必要であるとされています。
懲戒の根拠があること
懲戒の事由、種類、程度が就業規則に定められていなければならない。
懲戒事由・懲戒手段が合理的であること
懲戒の対象となる行為、制裁の与え方が常識的、合理的でなければならない。

 
平等取扱いの原則に留意すること
同じ規律に同程度違反した場合に、特別の理由がなく、人によりあるいは社内の地位により処分の重さを変えてはならない。
相当性(比例)の原則に留意すること
軽い非違行為に対しては軽い懲戒処分、重くなるに従って重い懲戒処分となるなど、違反の種類・程度に照らして相当なものでなければならない。
適正手続きの原則に留意すること
処分手続きは、適正かつ公平なものでなければならなく、手続きが就業規則に定められているのにそれに違反した場合はもちろん、特に定めがなくても適正な手続きを経ないでなされた処分は権利の濫用として無効とされることになります。
従って、処分を行うにあたっては、充分な本人への説明や理由の開示、本人に弁明の機会を与え事情を聴取するなど、適正な手続きをもって行わなければならない。
(2) 懲戒の種類
懲戒の種類としては、制裁の程度に応じて、「戒告」、「けん責」、「減給」、「降格」、「出勤停止」、「停職」、「諭旨退職(解雇)」、「懲戒解雇」などが考えられますが、会社の実態に応じて定める必要があります。
(3) 減給制裁の制限
労働基準法第91条において、就業規則に減給の制裁を定める場合には、1回の制裁に対する減給額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、また、総額が一賃金支払い期における賃金総額の10分の1を超えてはならないとの制限を課しております。

 以上が服務規律と懲戒の内容です。これらは、労働者が順守すべきことは当然ですが、使用者も同様に順守することが肝要です。それは、使用者サイドが順守してこそ労働者サイドも順守する姿勢や行動が芽生え、積極的に順守する職場風土が作られるからです。
労務管理の中心をなすのが「服務管理」です。服務管理でやってはならないことは、些細なことや重責にあるものが服務規律違反をした場合に、見て見ぬふりをしたりして違反内容、犯した者などで差をつけることです。その結果は、他の者の労働意欲を削ぐだけではなく、職場風土を間違った形で根付かせてしまいかねません。信賞必罰を徹底することが管理監督者に特に求められます。


かのう社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 狩野 一雄