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   【人を活かす人事・労務】

Vol.11

『賃金支払いのルール』
 

 

 

【賃金の考え方と支払いの原則】
 働く人達にとって、賃金は、生活を支え成り立たせる唯一の資金となるものです。日本国憲法は「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」(第27条第2項)としており、労働基準法第11条で「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他の名称にかかわらず、労働の「対償」として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定めています。
 また、同法第24条では、賃金の支払方法を規定しているなど、賃金は、最も重要な労働条件として労基法やその他の法律で様々なルールが規定されております。そこで、今回は、賃金の基本的性格と支払いルールや平均賃金などについて紹介します。
 賃金とは何でしょうか?賃金は一般的に次の通り3つの性格を有しています。第1は、企業活動の費用(=コスト)としての性格です。第2は、社員の生活費(=生活の糧)としての性格です。第3は、労働の価格(=労働の価値)としての性格です。この3つの性格を抜きには賃金を語ることはできません。
つまり、第1については「生産性」と連動しますし、第2は労働意欲、第3は労働者の能力と関係して賃金が決定されなければなりません。
 こうした考え方の下、賃金の決定要素が「年功型賃金(勤続年数や年齢が上がるにつれて賃金が上がる)」から「職能型賃金(有している能力に対して賃金が支払われる)」と変化を遂げ、最近は「職務型賃金(担当している職務の価値に対して賃金が支払われる)」に移行してきています。賃金とは、コストと生活の糧と労働能力の3つのバランスを保つことが大事であるということです。

【賃金支払いのポイント】

1 賃金とされるもの
   労働の対象として使用者から支払われた給与、諸手当、賞与や労基法第26条の休
業手当などが賃金となります。一方、住宅の貸与、出張旅費、制服等や客から直接受けるチップなどのほか、就業規則等で支給条件が明確なもの以外の恩恵的な結婚祝金、見舞金等は賃金とはいえません。
また、退職金制度は任意の制度ですので、退職金を必ず支払わなければならないものではありませんが、就業規則や退職金規程などで支給条件が明らかな退職金は賃金に含まれます。
なお、賃金債権も、行使せずに放置したままにしていると時効により消滅します。賃金・給与の場合は2年間、退職金の場合が5年間です。

2 賃金の支払い5原則
  通貨払い
     賃金は、通貨で支払わなければなりません。小切手での支払いは許されません。ただし、労働者の同意(書面)があれば、銀行や郵便局の本人名義の口座への振り込みの方法によって支払うことができます。また、現物支給についても労働協約を締結してれば、賃金の一部を現物で支給することは可能です。例えば、通勤定期を定期券で支給するなどがそれに当たります。
 なお、所得税法で、使用者は、通貨払いか振込みかにかかわらず、その賃金の支払明細書(基本給、手当その他賃金の種類ごとの金額、源泉徴収額、社会保険料等)を労働者に交付しなければならいと定めています。
  直接払い
     賃金は、直接労働者に支払わなければなりません。代理人や未成年者の親権者・後見人に支払うことは、直接払いの原則に触れることになります。ただし、本人がケガなどで受け取れない場合、妻などの使者に支払うことは可能です。
  全額払い
     労働した対価分の全額を支払わなければなりません。ただし、賃金から税金等の法令で定められているもの以外を控除する場合には、労働者代表との書面による協定が必要です。
  毎月1回以上払い
     賃金のうち、退職金や賞与のように、臨時あるいは特定の時期に支払われることになっているものを除いては、毎月1回以上支払わなければなりません。年俸制であっても、毎月1回以上払いの原則が適用されます。
  一定期日払い
    賃金は、25日払い・月末払いのように、一定の期日を定めて、その日に支払わなければなりません。

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 口座振込みの要件
   最近では、小規模の会社、工場においても口座振込みが一般的になってきております。賃金・給与を金融機関等の口座振込み扱いとする場合は、次のような要件を満たす必要があります。
労働者が指定する本人名義の預貯金等口座に振込むこと
賃金は、直接労働者に支払わなければなりません。代理人や未成年者の親権者・後見人に支払うことは、直接払いの原則に触れることになります。ただし、本人がケガなどで受け取れない場合、妻などの使者に支払うことは可能です。
振込まれた賃金の全額が所定の賃金支払日に引き出しできること



4 休業手当
   会社側の都合(使用者の責に帰すべき事由)により労働者を休業させた場合、休業させた所定労働日について、労働基準法では、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならないと定めています。(法第26条)
「使用者の責に帰すべき事由」とは、経営者として不可抗力を主張し得ないすべての場合を含むものとされています。

5 出来高払制の保障給
   出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、労働者の責に基づかない事由によって実質賃金が低下することを防ぐため、労働基準法では、使用者は労働時間に応じ一定額の賃金を保障しなければならないと定めています。(法第27条)
いくらの額を保障するかは、はっきりと決まっておりませんが、大体平均賃金の60%程度が目安とされています。

6 平均賃金
   労働基準法において、休業手当、年次有給休暇の賃金、解雇予告手当、労災保険の休業補償などを算定するときに平均賃金が用いられています。
この平均賃金は、これらの給付が行われる時点からさかのぼって過去3か月間労働者に支払われた賃金総額のうち、特別に支払われたものを除いた額をその期間の総日数で割った1日当たりの額をいいます。
計算式は次のようになります。
  平均賃金 = 3か月間に支払われた賃金総額 ÷ 3か月間の総日数(カレンダーの総日数)
例えば、3月31日に休業補償を支給する場合では、
・前3月=12月21日〜1月20日(1月分)            31日  300,000円
・前2月=1月21日〜2月20日(2月分)   31日  300,000円
・前1月=2月21日〜3月20日(3月分)   28日  300,000円
                            合 計       90日  900,000円

 賃金総額 900,000円÷90日=10,000円 ですから平均賃金は10,000円00銭(銭未満を切捨て)となります。
 なお、日給制、時給制、請負制の場合には、上記の式で計算した平均賃金が次の式で計算した額を下回る場合には、この額が平均賃金となります。

平均賃金 = 算定期間中の賃金総額 ÷ 算定期間中に労働した日数 × 60/100
です。


かのう社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 狩野 一雄