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           なぜ”環境ISO”だったのか
 日本の整備サービス工場8万8千工場の中でおそらく最初に「環境ISO」を取得したのは整備専業工場の「プリベント大沼」だと思う。そのプリベント大沼は、今年で創業35年を迎え郡山市に工場を構える老舗の整備工場である。

 常に時代を先取りすることでも有名な同社は、環境ISOを5年前に取得したのだが、その経緯は、瓢箪から駒的なことで、ある時、商工会主催の「ISO関係」の研修会があり、参加人数が少ないので人数合わせのために何とか出席をして欲しいと、頼まれて仕方なくセミナーに参加したことがきっかけとなり、取得の道を歩むことになった。

 それまでは、「ISO」のことは名前こそ聞いたことがあるものの、その内容や取得の方法などの知識はゼロに近いほどであった。ましてや自分が取得をするなどとは夢にも見たことが無いほど縁遠い存在であった。

 それが、セミナーに参加し、講師のレクチャーを聞いているうちに、これからは、今以上に品質が重視され、その品質も「手前味噌」で、自社で何ぼ内の技術は最高ですよ、地域一番ですよと言ってもお客様は信用してくれない。信用してもらうには、第三者による評価を貰うことが大事であると「ピント」来て、セミナー終了後に講師に取得の相談をしたのがきっかけであった。『今から思うとセミナーに誘ってくれた方に「感謝」をしなければならない』と大沼社長は、目を細めて笑う。あの時、いやいやでもセミナーに参加して本当に良かったとも云う。

 タイミングを同じくして、リフトの更新の計画が持ち上がり、スライド式の大量生産型のリフトから、もっと小回りが利く応用の広い2柱リフトに入れかえる必要があり、業者の方とあれやこれやと設計図を前に検討に入った。が、話がだんだん大きく広がり、1基が2基になり結果的に5基になって、そこまでやるのであれば、いっそのこと工場レイアウトを一から見直して、「もっと効率的に作業が出来る」ことをコンセプトに、全面改築をする方向に進んでいった。

 ところが、工場が建っている地域は「第2種住専地区」で、工場は「倉庫」としてしか認められないと云うことになり、計画が頓挫しかけたときに、捨てる神あれば拾う神ありで、地域住民の満場一致の賛同と、市の基準を満たせば工場としての建築許可が出ると云うことになった。

 住民の賛同を得るには「品質」の前に「環境」を優先する必要がある。臭いや騒音、排水、車の停め方などについて住民が一番気にするところで、それについて、住民が安心して暮らせる「住環境」を整えることが必要であった。

 であれば、ISOも「品質」ではなく「環境」で取得し、環境対策が一時しのぎでないことを示し、住民の方々に安心して暮らせしていただける環境を提供しようとなり、講師にお願いをして本格的に「環境ISO」の取得に乗り出した。


           苦労の連続だった“環境ISO”の取得
 「環境ISO」を取得すると決めたものの、どうしたら取得することができるか、その方法や手順は手探りの状態で、『日本で最初と言うことは自分が手本になること』であり、他をまねることが出来ないことを意味する。

 まず、本を買い漁ることから始めたが、買ってきた本を読んでも書いてある「言葉」の意味が理解できず、その都度教えてもらう繰り返しでノイローゼ気味になったと振り返る。取得をするのに社長自らが何もかも手を出していたのでは後々社員が苦労すると考え、取得の中心を社員にすることにした。

 部長の相田栄子を責任者に任命し、他の社員にも役割を与え全社員で取得する体制をとった。『部長が一番苦労したと思うよ』と社長は云う。部長に対する社員のサポートのこともあるが、部長の粘りと行動力が無ければ取得ができなかったと、話す。

 工場の改築も同時に進めるために、設備資金も必要になり、金策にも苦労したとのこと。今まで社員の車を停めていた場所を工場の拡張に使うために、新に駐車場を確保しなければならず、隣の土地を借用する交渉をしだしたところ、「買ってくれ」と云う話になり、さらに追加の資金が必要になって、また難問が増えた感じだった。一難去ってまた一難。泣き面に蜂の状態で、何度も取得は諦めかけたが、部長をはじめ社員の前向きな姿勢と、周囲の方々のご協力やご支援のお陰で、一つずつ解決が出来た取得に至った。今もその気持ちに変わりは無いが、改めて関係者に感謝したいと語る。

 平成11年6月に取得のためのスタートを切り、1年後の12年の6月に予備検査を迎えた。この時に、実に36箇所の改善を勧告され、愕然としたものの、その改善を目標にして取り組みに拍車をかけた。同年8月に本検査を受けるために東京に出向き、応援してくれた方々と昼食をとったが、『さすがの俺も食事がのどを通らず、その場では足が震えた、こんな経験は初めで最後でなかろうか』と、大沼社長は苦笑いする。その努力の結果、同年10月に晴れて取得ができた。

 こうして取得した「環境ISO」であったが、大沼社長は、苦労したほうが良かったとも云う。それは、簡単に取れてしまったのでは、「ISO」の有難みも分からないし、取得後に大事にしていこうとする気持ちも持てない。つまり、その場限りの「ISO」になってしまい、地域住民に誓った約束を守ることが果たせなかったのではと思うからだ。


         
     
  JQA-EM0962   QS Accreditation  
 
 
環 境 方 針
     基本理念
     株式会社プリベント大沼は経営理念として掲げている「創造」の精神にのっとり
     「自動車整備業の立場からの環境保全及び改善」に社員全員で取り組みます。
     環境マネージメントシステムの導入にあたっては、常に事業活動と環境とのかか
     わりあいを認識し、システムの継続的改善と汚染の予防に努めます。
 
     方  針
     1.環境に関する法規制、条例、協定及びその他の要求事項を厳守します。
     2.事業活動において、クリーン整備を積極的に展開し、大気汚染の削減に        
       努めます。
     3.事業活動における省資源および省エネルギーに取り組みます。      
     4.事業活動における廃棄物の削減とリサイクルに取り組みます。      
     5.この方針は、全従業員が認識し、実行します。      
     6.この環境方針は、一般の方々が入手できるよう、公開します。      
 
 
                                2002年 2月 1日
株式会社プリベント大沼   
代表取締役社長
 



           環境整備が生産性を上げる
 同社の工場はとにかく「きれい」である。洋服を着て寝転んでも汚れが付くようなことが無いぐらいに「きれい」である。同時に、モノが実によく整理整頓されているのにびっくりする。

 最近でこそ、「汚い」「暗い」「臭い」の3K工場は減ったものの、ここまできれいに、しかも整理整頓されている工場は、めったにお目にかかれるものではない。
 この状態を保てるのも「環境ISO」を取得したお陰と大沼社長は云う。

 「環境ISO」の効果は、数ある中で一番に挙げたのが「生産性向上」だと云う。聞くまでも無いが、きれい=効率的であることが一目瞭然だ。環境を整備すれば、どの工場でも効率的な工場になるかと云うと、そう単純にはいかないのが実際である。

 ではナゼなのか?それは、きれいにすることが「目的」ではなく、効率的に作業が出来る環境を作ることを目的にしているからだ。つまり、「きれい」は結果として得られるいわば「副産物」のようなものなのだ。
 例えば、左の写真をご覧いただきたい。これは、よく見かけるオイルドレーナーに「エレメントレンチ」や「メガネレンチ」あるいは「ハンディーネームリーダー」を一枚のパネルにレイアウトしてネジで止めたものである。これだけで、モノの整理が出来るし、このオイルドレーナーと新油のエンジンオイル、新品エレメントを部品庫ら出庫して一緒に持っていけば、それぞれの工具を取り出す(又は取りに行く)手間や時間が節約される。つまり、効率化が実現で、モノが整理でき結果として「きれい」が得られたのである。まさに効率と環境整備の一挙両得のアイデアである。この工場のすごいところは、こうしたツールを工夫するだけではなく、それらを格納する場所を「作業性(工程を少なくする)」から判断し決め、そこに格納するようにルール付け(躾)されているところである。これも、「環境ISO」の功労ではなかろうか。

 こうした事例は、他にも見られ右の写真もその一つで、ワッシャーやボルト・ネジをパネルに収納箱を取り付け、その収納箱を色分けして識別しやすいようにしたり、このボードの上にもう一枚パネルを設け「サイズ表」を作り、だれでもが間違いなく必要な部品を取り出せるようになっている。

 この工場見たさに多くの見学者が、振興会から、任意団体から派遣されてお見えになるそうだが、整備工場の「環境ISO」の取得はいまだ全国で8工場に過ぎない。


           技術こそ整備サービス業の砦だ
 『俺が経営をしている間は車両販売をしない』と云いきる大沼社長だが、それは、整備業は「技術」が売り物で、その技術があるからこそ、お客様から存在価値を認めてもらうことができるという、信念を持っているからこそ云える言葉だ。

 それを裏付けるように、同社では積極的に省力機器やテスターを導入し、技術に磨きをかけている。いち早く「4ガステスター」の導入したことや、県内初の「ホイールアライメントテスター」などもその現われだ。

 こうした技術は持っているだけでは価値は半減する。商品化してこそ本当の技術になり、お客様から選ばれるメニューを提供することが出来るというものだ。

 だから車検メニューにしてもスピードや安さを前面に出した商品は置いていない。同社の車検は、技術に裏打ちされた「環境車検」で訴求しているのが特徴である。エンジン冷却系を清掃し、冷却性能をアップさせ、廃棄処分されてしまう冷却液を、ろ過を通し再生・再利用する「クリーングレイ」や、「エンジンフラッシング機」などを組み合わせてメニューを作り提供している。

 こうしたメニューをホームページでも紹介し、集客に効果を挙げて  いる。これも、ホームページを作って、サイトにアップすればワーッとお客様が見に来るかと言えばそんなことは無く、ホームページを立ち上げて暫くは、ページビュー(ページを見た回数)もあまり無かったとのこと。それが、最近では、ページビューが挙がってきているという。その要因は、「ホームページ」に料金表を分かりやすく掲載してからだという。分かりやすくとは、単に金額を表にしたことではなく、その料金で何を行うのか、部品代がどこまで入っているのか、保障はどこまでなのかなど、お客様が一番知りたい情報を提供した結果だと分析している。

 今後、同社では9月のグランドオープンに向けて「ボッシュ・カーサービス(BCS)」工場への脱皮を図ると云う。整商連が進めるサービスデーター提供サービスである「FINS」に期待しつつも、より密度の濃い技術情報や技術習得のための研修を受けるには、技術開発にしのぎを削り、最先端の技術情報であり、ノウハウを持った企業と手を組むことで、地域一番店としての「技術整備工場」の看板に磨きを描け、勝ち抜け組みに残るための選択肢だった。

 半歩先を進むことが大事とも云う。こうした、常にリスクを考え、そのリスクを少しでも減らす手立てを早いうちに構築する。その結果として「差別化」が図られ、お客様から選ばれる工場になる。これが同社の強みではないだろうか。




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