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  第5回 ISO9001(その1) -
         「プロは仕事のプロセスを知っている」

 いよいよ今回からは、ISO9001について約10回のシリーズで、大事な点をひとつずつ紹介いていきます。すべてを読み終わったころには、皆さんの会社組織のマネジメントにどんなことが必要なのか、きっと明確になります。
 ISO9000sとは細かくは、ISO9000、9001、9004で構成されているファミリー規格なのです。しかし今回の対象は、第三者認証にも用いられてファミリーの代名詞となっているISO9001であり、これは組織が「どんなことをしなければいけないか」を定めている規格です。しかし、それを「どのようにして実現するか」までは定めていませんので、それぞれの組織の事業目的に沿って考えなければなりません。言い換えると、自分たちのレベルや業務に見合ったやり方をすればいいので、やるべきことでも自由度があると言えますね。

 ISO9001の目次を開くと、次のような8つの章で構成されています。
    1.適用範囲
    2.引用規格
    3.定義
    4.品質マネジメントシステム
    5.経営者の責任
    6.資源の運用管理
    7.製品実現
    8.測定、分析及び改善

 このうち「組織は〜をすること」という要求事項が記されているのは4章から8章までです。これからの解説は、各パートの中でも特に重要なことを取り上げます。また、規格の原文そのものは法律文のように解釈が難しいので、そのままは使用せずになるべく平易な言葉に置き換えて解説をします。

 4章からの解説に入る前に、1章ではISO9001をどんな考えをもった組織が取り入れるべきかを冒頭で述べていますので、まずこれを見てみましょう。それは、

    仝楜劼陵弋瓩鯔たした製品・サービスを、いつでも提供できる能力をもつことを実証したい場合
   ◆〃弍弔篁纏の仕組みを継続的に改善して、顧客満足の向上を目指したい場合
 少しでもISOに興味をもっている皆さんの会社にとっては、このどちらか、または両方が当てはまっているでしょうね。これはISO9001にチャレンジする大切な目的なのです。

第4章「品質マネジメントシステム」

 第2章と第3章の解説は省略しますので、第4章からスタートです。
この章では、5章以降に出てくる要求事項を総括した形で述べていますので、やや抽象的で解釈が一番難しい部分かもしれません。まず、皆さんの組織にある「プロセス」を明確にするように要求しています。

 図1を見てください。これはある自動車修理工場に必要な業務とその流れを表したものです。この枠のひとつひとつの業務がこの会社にある「プロセス」です。例えば、「営業業務」という大きなプロセスの中には、「見積」というプロセスが含まれています。「見積」というプロセスをさらに細かくすると、この図では表していませんが故障診断、作業時間予測、見積書作成などの小さなプロセスが含まれているはずです。

 つまり、組織の中に存在する必要な業務活動とそれぞれの関連性を、この様な図によって明らかにしようということです。その目的は、それぞれのプロセス(業務活動)を円滑に行い、かつ期待した成果を出すために、どんな管理が必要かを決めるためです。






 では、ISO9001で要求しているプロセスの管理とはどんなことか、分かりやすい例で示しましょう。
図2を見てください。ある社員さんの担当している仕事が「パンをトーストする」プロセスだと仮定してください。まず、このプロセスに「入ってくるもの」があります。物ではスライスされたパン、情報ではパンを焼く数の指示などでしょう。そしてトーストするプロセスが働くためには「資源」が必要です。
 
それは、焼き方を会得している人はもちろんのこと、整備されたトースター装置、それに電力などです。さらに、このプロセスが正しく働くためには、「管理すべきポイント」があります。トーストの温度や時間などですね。この管理ができていないとパンの焼き上がりがバラバラになってしまいます。

 そして、このプロセスからの「出ていくもの」はトーストされたパンです。情報としては作業実績報告などです。出ていくものに対しては、できばえが良いかを焼け具合を目で見て確認し、抜き取りで食べてみて歯ざわりを「評価」します。そして、OKの場合は、バターを塗ると言う次のプロセスに引き渡します。しかし、もしここで問題を発見した場合は、対策を考えて「改善処置」を施します。例えば、トーストの時間や温度を変えてみる、あるいは前のプロセスまでフィードバックして、スライスするパンの厚さをかえるなどの処置が考えられるでしょう。





 この様に、皆さんの会社でも大事な業務においては、このようなプロセスの管理を当てはめるべきでしょう。さあ、次の質問に答えてみてください。できれば、それぞれのプロセスを担当する人とぜひ一緒に考えてみるといいでしょう。

    ‖膸なプロセスにどんなものがありますか?
    △修離廛蹈札垢貌ってくる物や情報は何ですが?
    プロセスが働くために必要な資源は何ですか?
    ぅ廛蹈札垢隆浜すべきポイントは何ですか?
    ゥ廛蹈札垢ら出てゆく物や情報は何ですか?
    Δ修僚个胴圓ものに、どんな確認や評価をしていますか?
    Г修離廛蹈札垢波生しうる問題はどんなことですか?
    問題が発生したときに考えられる改善処置はどんなことがありますか?

 これを各人が一枚の紙にまとめるだけで、仕事に対する目的意識がはっきりして、仕事の成果がグッと上がるかもしれませんよ。それは、実践した会社だけが、わかることなのです。

 次回は、会社で使っている文書類の管理方法についてお話します。
アイエル経営診断事務所 代表
板 賀 伸 行
経営コンサルタント(中小企業診断士)
ISO/QMS 主任審査員

過去に大手自動車会社において海外各国の自動車開発・生産プロジェクトを担当。その後、コンサルティング会社等を経てアイエル経営診断事務所を設立、中小企業の経営支援を開始。国や地域の中小企業支援センターのアドバイザーも務める。
経営資源の少ない小規模事業者のビジョン実現をサポートできる今の仕事に生き甲斐を感じています!
趣味はアウトドア系なら何でも関心があり、毎年新しいチャレンジ(冒険?)をしています!



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