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  第7回 ISO9001(その3) -
          「経営者が果たすべき責任とは」


 今日はISO9001規格の第5章に規定されている「経営者の責任」を解説します。社長さんや経営幹部の方々が自分の役割について考えてみたいと思われているなら、よく読んでいただければ嬉しいです。

 経営トップには次の5つのことに対して、自ら関与して実行することが要求されています。

   法令・規制および顧客の要求を満たすことの重要性を組織内に周知する
   「品質方針」を設定する
   「品質目標」が設定されていることを確実にする
   「マネジメントレビュー」を実施する
   人・物・金などの「経営資源」が使用できることを確実にする

 ,遼[瓠Φ制とは、製品・サービスの製造や提供に関係する法令から、業界団体などが定めた規制も該当します。そしてISO9001は、これまでお伝えしてきたように「顧客重視」を志向していますので、顧客の要求を満たすことの大切さを、組織の人々に十分周知しなければなりません。最近は「コンプライアンス経営」や「顧客満足経営」ということを耳にされた方もおられるでしょうが、同様のことをISO9001は既に要求していたわけです。

 △らい療世砲弔い討蓮△海譴ら少し詳しく説明します。


品質方針

 皆さんの会社では今年の方針を掲げていますでしょうか。ISO9001規格では品質方針と言っていますが、今後会社が目指すべき方向や将来の大事な取り組みを明文化した「経営方針」と考えてもらえばいいです。

 ただしその方針には、経営トップの顧客重視や法令順守の姿勢、それに業務管理の方法を継続的に改善してゆくという意思表示が込められていなければなりません。さらに大事なことは、この方針を社員全員に伝達して理解されなければならないことです。方針を大きく目立つように掲示することはもちろんのこと、日頃のミーティングなど社員とのコミュニケーションの場において、いつも会社の方針について触れることが必要です。


品質目標

 これも会社の経営目標と読み替えてもらっていいです。ISO9001での「目標」の定義は先の「方針」とは異なります。目標とは達成水準を明確にしたものです。つまり、「受注件数を何件以上にする」や「品質クレームを何件以下にする」など、一般的に定量的な目標値を掲げることが必要です。

 普通の会社で設定されている目標は、せいぜい売上げや利益など財務的な指標に関するものだけしか見られない場合が多くあります。それは株主への責任や事業成長のために当然必要ですが、ISOでは会社の利益に結びつく非財務的な目標の設定をより重視しています。例えば、顧客の満足度についての目標値、業務の質や効率についての目標値、さらには従業員の能力開発についての目標値などを設定するといいでしょう。しかし、これらは最終的に財務的な企業価値を上げることにつながってくるのです。

 目標は会社の方針と整合性が取りながら、社内のそれぞれの部門で役割を分担して作ることが理想です。願わくは社員の理解を得て、個人の目標まで作れるといいですね。目標値は「頑張ればできそうだが、このままでは届かない」というレベルにします。よって達成のための重点活動も決めなければなりません。図3-1に示したような一覧を作成して、定期的に達成状況を評価してゆくことが会社のマネジメントにとって最も大事なことです。

 目標管理の進んだ会社では、個人の業績や目標達成度を公平・明瞭に評価することによって、個人の賃金やその他の処遇に反映しています。目標管理の制度をうまく運用することによって、社員のやる気を引き出すことができるからです。


 
                      図3-1 品質目標の様式例


マネジメントレビュー

 マネジメントレビューとは、経営トップが一定の期間に会社全体の運営がうまくいっているかどうかを評価して見直すためのもので、経営トップが参加する「経営会議」と思ってもらっていいでしょう。ウチも役員会や経営会議はやっているといわれる会社あるでしょうが、その多くが売上実績などの限られた話題しか取り上げていません。

 ISO9001ではマネジメントレビューにおいて、経営に必要ないろいろな視点からテーマを取り上げることにより、経営改善に結びつけるように要求しています。取り上げるテーマとは次のようなことです。

  ・ 業務監査の結果(ISOでいう監査とは何かは後述
   します)
  ・ 顧客からのクレームや好意的な情報
  ・ それぞれの業務における成果や製品・サービスの
   適合性
  ・ 予防処置と是正処置の状況(ISOいう予防処置・
   是正処置とは何かは後述します)
  ・ 前回までのマネジメントレビューからフォロー必要
   事項
  ・ 業務運営や品質に影響を与えるような内外の変化
  ・ 改善のための提案

 これらのテーマについての話し合いの結果、経営トップは次の点について結論を出さなければなりません。

  ・ 品質方針と品質目標の変更の必要性
  ・ 経営のあり方や業務の手順で改善すべきこと
  ・ 顧客の要求を満たすための製品・サービスの改善点
  ・ 人・もの・金などさらに経営資源が必要かどうか

 そして、マネジメントレビューの結果は議事録として残さなければなりません。この議事録は会社の中で最も重要な記録となることはご想像がつくと思います。またISO9001の認証審査においても、この記録は最も関心をよせられるものの一つとなります。

アイエル経営診断事務所 代表
板 賀 伸 行
経営コンサルタント(中小企業診断士)
ISO/QMS 主任審査員

過去に大手自動車会社において海外各国の自動車開発・生産プロジェクトを担当。その後、コンサルティング会社等を経てアイエル経営診断事務所を設立、中小企業の経営支援を開始。国や地域の中小企業支援センターのアドバイザーも務める。
経営資源の少ない小規模事業者のビジョン実現をサポートできる今の仕事に生き甲斐を感じています!
趣味はアウトドア系なら何でも関心があり、毎年新しいチャレンジ(冒険?)をしています!



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