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 第16回 ISO9001(その12)「“カイゼン”は日本の文化!」

 

 今回はISO9001の最後のパートになりますが、ISOマネジネントの基本原則である改善活動についてです。改善は、ISO9001(品質)のみならずISO14001(環境)をはじめ、すべてのISOマネジメントの共通概念になります。対応するISO9001規格は、「第8章:測定、分析及び改善」のなかにある「8.4データの分析」および「8.5改善」です。

 「カイゼン」いう言葉はもはや産業界においては世界共通語となっています。これは日本の製造業が海外進出して生産する際に、現地会社の人たちに日本式のマネジネントを教えたことがきっかけです。外国の人たちは新しい文化として受け入れ、それが定着して広まったためです。

 しかし、日本の会社であっても、改善活動が行われて効果を上げている組織はどれほどありますでしょうか? みなさんの会社でも再認識をしてみましょう。


データの分析

 ISO9001では、組織の中のいろいろな業務プロセスから、データを収集して分析することを要求しています。そこから、改善のきっかけとなる有効な情報を得るようにするためです。

 例えば、顧客アンケートを分析することによって、顧客の満足している点・不満足な点、ニーズや期待することを明確にすることができます。また、工場であれば不良率を細かく分析することで、製品・サービスの種類毎の品質レベル、さらに作業工程・作業者別の能力レベルを把握することができたりします。データとその分析結果は、可能であれば表やグラフに表して分かりやすくして掲示するなど、みんなで情報を共有できるようにしましょう。

 こうして得られた情報をもとに、以下に示すような是正処置や予防処置などの改善へとつなげてゆきます。日常業務において、十分なデータを収集・分析していると、思わぬ変化に気づいて重大な不具合や事故を未然に防ぐことにも役立ちます。


是正処置と予防処置

  ISO9001で規定している改善には「是正処置」と「予防処置」2つの種類があり、それぞれに対して“文書化された手順”を確立することが要求されています。

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是正処置とは、問題(不適合)が発生した場合に、再発防止を目的として、その根本原因を除去するための処置です。例えば皆さんの会社で、顧客苦情を受けた、重大な製品不具合が発生した場合などに適用しなければなりません。規格で要求されている是正処置の流れは次の様になります。
 a)不適合(顧客苦情を含む)の内容確認
 b)不適合の原因の特定
 c)不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価
 d)必要な処置の決定と実施
 e)とった処理の結果の記録
f)是正処置において実施した活動のレビュー
もちろん一番肝心なのは、d)における処置がその問題の再発防止になっているかどうかです。しかしマネジメントの観点からは、e)にあるように処置の「記録」を残すことや、f)にあるように振り返って再発がないかを後で確認して効果まで判断することが必要です。

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  予防処置とは、起こり得る問題(不適合)が発生することを防止するために、その原因を除去するための処置です。是正処置は問題が起こった後のものですが、予防処置は問題を未然に防ぐ活動のため、その意義はさらに高いといえます。規格で要求されている予防処置のステップは次の様になります。
 a)起こり得る不適合とその原因の特定
 b)不適合の発生を確実にするための処置の必要性の評価
 c)必要な処置の決定と実施
 d)とった処理の結果の記録
 e)予防処置において実施した活動のレビュー
 是正処置のステップと比べるとa)の出発点が異なりますが、あとの流れはほぼ同じです。予防処置を行うためには、このa)の段階で起こり得る不適合を特定する必要がありますが、これは多くの場合、先に述べた「データの分析」を十分することで発見することができます。

 是正と予防のどちらにも大事なことは、根本原因を見つけて手をうつということです。例えば、ある作業ミスが発生したときに、原因を単に“注意を怠った”とするのではなく、注意を怠る状況を生じた原因までさかのぼって対処する、または注意を怠っても問題が発生しない対策をするなどの処置までが必要です。
 「なぜなぜを5回繰り返す」という言葉がありますが、問題の真因をつきとめるためにそこまで掘り下げた考え方をしないと、有効な対策にはならないということです。


継続的改善

 会社の経営が続く限り、改善は永遠のテーマです。これまでISO9001の規格の解説をしてきたなかでも取り上げましたが、特に次ぎの様な活動が組織のマネジメントのあり方を改善する機会になります。
・品質方針、品質目標 (その3参照)
・内部監査 (その11参照)
・データの分析  (本パート参照)
・是正処置、予防処置 (本パート参照)
・マネジメントレビュー (その3参照)

  また継続的改善を性質の違いで分けると、図に示すような「日常のたゆまぬ改善(問題解決型)」と「現状を打破する改善(目標志向型)」があります。前者は特に今回の「是正処置」、「予防処置」を通して、また後者は特に「品質方針」、「品質目標」に反映させて取り組みをしましょう。


アイエル経営診断事務所 代表
板 賀 伸 行
経営コンサルタント(中小企業診断士)
ISO/QMS 主任審査員

過去に大手自動車会社において海外各国の自動車開発・生産プロジェクトを担当。その後、コンサルティング会社等を経てアイエル経営診断事務所を設立、中小企業の経営支援を開始。国や地域の中小企業支援センターのアドバイザーも務める。
経営資源の少ない小規模事業者のビジョン実現をサポートできる今の仕事に生き甲斐を感じています!
趣味はアウトドア系なら何でも関心があり、毎年新しいチャレンジ(冒険?)をしています!



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