環境方針
経営トップの責務として、明文化した環境方針を定めなければなりません。 環境方針にはいくつかの条件がありますが、特に大切なのは、環境マネジメントの仕組みや成果に対して継続的に改善することの確固たる意思表示がされていることです。 そして環境方針は、組織で働くすべての人たちに周知されていなければなりません。 さらに外部の一般の人々も、環境方針を知ることができる状態にしておく必要があります。
環境方針も会社の経営方針の一部ですから、掲示するとはもちろんのこと、社員や関連会社とのコミュニケーションの場において、日頃からその内容に触れて意識づけをするようにしましょう。 また皆さんの組織に関心を寄せている取引先や地域住民の方々に環境方針を公開するために、会社案内やホームページに掲載するとよいでしょう。 環境方針は公開が原則ですから、同業者や身近の事業者に環境マネジメントを行っている組織があるなら、その組織の環境方針を参考に調べてみると、興味がもてると思います。
環境目標と実施計画
前回のパートでは、環境影響を評価する方法と、環境側面(環境影響を及ぼしている活動・製品・サービス)を特定する方法を説明しました。 これを行うことで、いくつかの環境側面が洗い出されますが、その中でも特に影響の著しいものを取り上げて、環境目標を設定することになります。 また環境目標は前述の環境方針と整合していなければなりませんので、環境方針を作成する段階でもその著しいものを考慮しておくといいでしょう。
もちろん、すべての環境側面に対して、削減や改善のため管理を施すことは現実的ではありませんので、以下の様な点も考慮して、環境目標として取り上げるべきテーマを選択するといいでしょう。
・ 削減や改善が技術的に比較的容易にできそうなもの
・ 削減や改善に大きなコストが発生しないもの
・ 運用が比較的容易である、または事業上有益となるもの
・ 顧客や利害関係者が関心を寄せているもの
環境目標は可能な場合は、定量的に定める必要があります。 例えば、有害な影響を及ぼすものであれば、「○○○を前年比30%削減する」といった具合です。 地球温暖化の原因となるCO2の発生を抑制するため、電力や化石燃料などのエネルギー使用量については、多くの組織で削減の目標値を掲げています。
環境目標を達成するためには実施計画が必要となります。 実施計画は次の事項を含めて作成することが求められています。
・ 関連する部門や階層における担当責任
・ 目標を達成するための手段と日程
図3-1に簡単な環境目標と実施計画の様式例を示しますので、まずはどのようなものかイメージとしてつかんでください。 環境目標と実施計画は、皆さんの組織が行う環境マネジネントの内容と達成水準を示したものですから、最も重要な文書といっていいでしょう。
環境目標に取り上げるテーマを決めるために、環境影響の評価と環境側面を特定することは先ほど述べたとおりですが、ここで注意しておきたい重要なことがあります。 それは、組織の本業(主となる事業活動)が環境に及ぼす影響を考慮することです。
単に事業所の環境影響だけをとらえると、施設で使う「紙、ゴミ、電気」の削減といったような、とても狭い範囲の活動になってしまいます。 もしも製品を開発している会社であれば、製品そのものが製造から使用段階を経て廃棄されるまでの環境影響を改善する方がはるかに有益です。 この場合は、省エネ型の新製品を開発したり、解体・リサイクルしやすい構造に設計変更すること、さらにはそのような改良された製品の販売数や普及割合を増やすことなどが、環境目標と実施計画に反映されてくるべきでしょう。
サービス業の場合も同様に、顧客に提供するサービスをどのように見直せば環境に有益になるかを考えてみましょう。 ある金融機関の例ですが、融資先が環境マネジメントを実施している場合、貸し出し金利を優遇するという環境対応型の金融商品を設定しており、これが注目を浴びて好評のようです。
いかがでしょうか。 この様に本業と直結する環境マネジメントは、決して周囲から要求されるから仕方なくするものではなく、組織が発展し成長するための事業戦略そのものと思われたのではないでしょうか。 |