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第3回 力強い走りと低燃費を両立したホンダ新開発エンジン
ホンダが新開発した「1.8ℓ i―VTEC」エンジンは、発進加速時に2.0ℓエンジンに匹敵するパワーと、クルーズ時は1.5ℓクラスの低燃費を実現しています。パワーと低燃費の両立を解決したそのメカニズムは、バルブタイミングを走行状況に応じて吸気バルブを調整するところにあります。


 ●力強い走りと低燃費を両立したホンダ1.8ℓi-VTECエンジン

ホンダは,今秋フルモデルチェンジされる予定の「シビック」に搭載する1.8ℓi-VTECエンジンを開発しました。これは発進加速時には2.0ℓエンジンに匹敵する走りを、またクルージング時には1.5ℓエンジンなみの低燃費を実現したものです。ホンダでは、今後もホンダらしさの原点でも、特に走る楽しみ、自由に移動する喜びの原動力であるエンジン、トランスミッション、モーターなどのパワートレインの革新に取り組んでいくとしています。パワートレインは、またエミッションやCO²など地球環境への負荷を低減する基盤技術でもあります。


 ●新エンジンの構造的特徴と性能


 新開発された1.8ℓエンジンは、軽量・コンパクトで静粛性に優れ、低公害・低燃費性能を充実したほか低速トルクを重視した使いやすいエンジンとなっています。そのエンジンカットモデルを図1、2に示し、図3に現行1.7ℓエンジンとの性能曲線比較図を示します。

 軽量化のために樹脂ヘッドカバーを始め、13%の軽量化を可能にした高強度熱鍛クラッキングコンロッド(図4)、アルミロッカーアーム(図5)を採用しています。また、コンパクト化のために2.0ℓエンジン用に比べ1.7㎜幅を細くし、チェーン全体で40.8gも軽量化した細幅カムチェーン(図6)、オイルポンプ内蔵チェーンケース、遠心鍛造スリーブなどを採用しています。

 静粛性を向上させるためには、高剛性のオールアルミシリンダブロックおよび高剛性&高バランス率クランクシャフトを採用してエンジン骨格重量の増加を最小限に抑え、大幅にエンジン放射音を低減させています。そのほかインテークマニホールドの管長をロングポートとショートポートに切り換えて低中速域のトルクと高速域の出力を両立させた可変管長樹脂インテークマニホールド(図7)を採用しています。

【図1】新型シビックに搭載予定の1.8ℓエンジンのカットモデル。直下2ベッド触媒やバルブ機構が見える


【図2】こちら側には樹脂製可変管長インテークマニホールドとDBW用スロットルポジションセンサーが見える


【図3】1.8ℓエンジンと現行1.7ℓエンジンとの性能曲線図比較




【図5】アルミ製ロッカーアーム。可変吸気量制御の立役者。


 ● 最大の特徴は新開発のバルブ開閉タイミング制御による低エミッションと低燃費


 この新エンジンの最大の特徴は、知能化した新VTCE機構によるバルブ開閉タイミングコントロール機構です。通常、エンジンの低負荷時は、スロットルバルブを閉じ気味にして混合気の吸入量を制御します。
しかし、このときに吸気に伴う損失(ポンピングロス)が発生してエンジンの効率を低下させる要因のひとつとなっています。
 このエンジンでは、吸入バルブの閉じタイミングを遅らせることによって混合気の吸入量をコントロールして、低負荷時でもスロットルバルブを大きく開くことができるようになり、ポンピングロスを最大16%低減しています(図8)。

 前述の可変吸気量制御、ピストンスカート部の二硫化モリブデンショット、イオンプレーティング処理オイルリング(図9)、シリンダ内壁プラトーホーニング、省燃費オイルなどの採用による徹底的なフリクションロス低減策と合わせて低燃費化に貢献しています。因みに、現行のシビック1.7ℓエンジンと較べて約6%の低燃費化(エンジン単体)を実現しています。

 なお,高出力が必要な加速時には、出力カムに切り換えることで走りと燃費を両立しています(図10)。また、バルブタイミング切換え時は、DBW(ドライブバイワイヤ)でスロットルバルブを高精度に制御するので、トルク変化を感じさせないスムーズな走りを実現しています。図11は、バルブ機構の拡大図です。
 なお、低エミッションについては、直下2ベッド触媒(リニア空燃比センサ+O²センサ付き)や高精度の空燃比制御などによって、平成17年排出ガス基準75%低減レベルを達成しています。





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